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やり直し令嬢の生き残り計画  作者: 紫月 由良
破滅回避編

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17-2. 冬期休暇 ~フェム神聖国旅行~

 結局、色々見て回ったけれど、星光石の良いものは見つからなかった。


「明日は違う神殿に行きましょう」


 そう言って諦めて宿に戻ったら、既にエストレとアーレイ先生は戻っていた。粘っても良いものはでてこないもの、こういうのは駆け引きが重要よ。と蠱惑的な笑顔で教えてくれた。


「戦利品は?」


 気になって尋ねてみれば、恭しい手つきで箱を差し出された。開けてみれば、まずまずの大きさと品質の石があったけれど、最高級には及ばない。


「うーん、もっと良い石があると思うのに……」


「そういうものは一見の客には出さないものよ」


 にっこりと笑って返すアーレイ先生。


「明日、適当な店に一度行って何も買わずに帰ってくるわ。明後日には最高級品を扱っている店から連絡が来るでしょうね」


 凄く頼もしい言葉だ。


 強いのは剣だけでなく、交渉事もだとは。こんな側近が居たら、私はもっと楽で安全に暮らせるのかも。そう思ってしまう。


 美人で強くて頭も良い。おまけにスタイルも良いだなんて、龍神様はなんて不公平なんだろう。


 朝、私達はまた別れて行動する。今日は街の反対にある神殿だ。


 昨日のように門前で花を買ってお参りした後に、土産物屋を見て回る。陽光石や月光石が多いけれど、星光石もちらほらある。あまり収穫は多くなかったけれど、星光石の少し大きめのものを二つ、サザレを掌サイズの小袋に一つ買って終わった。


 宿に戻れば、アーレイ先生が収穫が無かったわとにこやかに笑っていた。私の方もあまり収穫が無かったと報告した後、皆で一緒に夕食を食べた。普段は一人だけだけど、こうやって旅先では皆一緒なのでご飯が美味しい。


 三日目、私たちはまた違う神殿に出かけるけれど、アーレイ先生はお留守番だった。


 神殿に着くと門前で花を買ってお参りをするのは一緒で、その後土産物屋を見て回る。今日は星光石が多いなと思いながら見ていると、護衛の人たちが星光石の取り扱いが多い神殿を探してくれたみたいだった。大き目の石も小さな石も良いものが多くて、満足する量を手に入れた。これで自分の買い物は終わりだ。


 でも皆の事前調査のお陰でまだ昼を過ぎたばかりだった。


「あのね、屋台で何か買って食べたい」


「お行儀が悪うございます」


 一刀両断だった。


 旅先だし、知ってる人は誰もいないのに……。


「まあまあ乳母殿、たまのことなのだからお嬢様に庶民の味を楽しんでいただいても問題ありませんよ」


 そういってムーラからフォローが入った。


「お嬢、何か食べたいものは?」


「えっとね……あれ!」


 肉を串に刺したものを指さすと三本買って、一人ずつ食べてみた。ちょっと塩味だけの素朴な味だけど柔らかくて美味しい。


 その後も幾つか食べたいものを買って貰って色々食べた。でも夕飯が食べられなくなると困るからと、適当なところで引き揚げた。


 庶民の食べ物は初めてだったけど、美味しくて満足だった。


 宿に戻ると、アーレイ先生が今迄にないような満面の笑みで出迎えてくれた。


「とっても上手く行ったわ。成功よ」


 そう言って見せてくれたのは、最高級品の陽光石、月光石、星光石だった。


「先生は交渉上手ですな」


 エストレが大絶賛だった。


 押して駄目なら引くのよ、と片目をつぶって言う先生は妖艶だ。ちょっとドキドキしてしまう。


「ラングーラン辺境伯の名前を出したから、国境を越えたら手紙を出すわね」


 四、五日の滞在予定の心算だったけれど、買い物が順調に終わったので、三日で聖都を後にすることにした。食事が美味しいので残念だけれど、長逗留をすると学校に間に合わないから仕方ない。


 フェム神聖国最後の夜を楽しんだ後、私たちは翌朝早くに宿を発ったのだった。


 往路と同じ順調な旅を続け、国境を越えたところで先生が手紙を出した。私たちが王都に戻るころには返信が学校に届いているかもしれないと言っていた。


 領地までエストレを届けた後は、ガルリオ領の土龍の祠に立ち寄る。


 神殿でお祈りしたのと同様にお祈りを捧げた後、祠の近くの地面を見回すと、キラリとした光があちこちから見つかる。手に取ってみたら光石だった。小さいながら品質は悪くない。もう少しよく探せば、龍石という魔石も見つかる。土龍の龍石は薄茶色なので探すのがちょっと難しい。夜だったら絶対に見つけられない自信がある。


 私は拾った石をそっとハンカチに包んでポケットに仕舞う。


 光石の元は信仰だと言われるのは、もう数年先のことだ。魔獣の体内の魔力が結晶化して魔石になるのと同様、人々の祈りや心が光石の元だと言われる。


 どの国よりも信仰の厚いフェム神聖国で多くの光石が見つかるのだけれど、人は愚かだから、光石の効果が判り、フェムでのみ産出されている現状に、すぐさま侵略して国を滅ぼしてしまった。


 国が滅んだ後に、人の祈りが石を作るのだと判ったときには、もう手遅れだった。周辺の国々では、さほど信心深い者が多くなく、フェム神聖国の民の殆どが国に殉じてしまった。信仰の厚い民は少なくなりすぎ、光石が新たに産出することはなくなってしまった。


 龍を祀る神殿はどの国にもある。ルスゥールにもそれなりに多くの神殿はあるが、利権や龍魔法の独占に勤しむばかりで、信仰は置いてけぼりだった。人々の祈りを結晶化した石が取れる状態ではなかったのだ。


 光石の効果はもうすぐ明らかになる。そのときに石がどのように作られているのかを同時に明らかにしなければいけない。でなければ国が失われ、各国の均衡が壊れ戦争が起こる。


 前世ではそれが原因で、フェム神聖国は蹂躙され、あっという間に滅亡したのだから。

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