↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やり直し令嬢の生き残り計画  作者: 紫月 由良
破滅回避編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/44

16. 視察

 屋敷に到着した翌日から、早速領地を回る。エメは疲労が溜まっているので屋敷で留守番だ。見送る姿はしょんぼりして見えるけれど、馬に乗っての駆け足での視察は大変だから、ゆっくりと休んで欲しい。


 はしたないとエメに渋面で言われたけど、視察中はズボン姿だ。ドレスで横乗りなんて、道がどうなっているのか判らないのに危険すぎる。アーレイ先生も同じような恰好だけど、学園で見かけるのとそう変わらない。他に護衛が五人ほど付いて七人での移動だ。


 大嵐が来てから一月半も経過しているから、倒木は全て撤去されていて、決壊や氾濫が無かった地域は、普段と何も変わらない。でも決壊したところは村の殆どの畑が水没して作物が全滅したり、牧場の牛や豚が死んだり大変そうだった。それなのに視察に行けば、皆が歓迎してくれて涙が出てくる。


「お嬢様のお陰で、疫病が流行する前に食い止められました」


 村長がそう言って頭を下げる。次期領主とはいえ八歳の子供に。


 そういえば、お父さまが一度として領地に足を向けないと家令や総代官が苦々しく思っているようだったけど、前世の私も同じだった。お母さまが亡くなってから、自分のことばかりで領地のことも領民のこともどうでも良いかのように放置していた。そんな私だったから、お父さまが私を排除しようとしたときに、オベールが止めなかったのかもしれない。


「平和な領地ね」


 アーレイ先生の言葉は重みがある。魔獣の多い土地で育って、弱い魔獣なら、普通の女の子でも駆除できるような場所だ。それに辺境は野盗も多い。


「そうですね、魔獣の心配が殆どない分、安全で平和です。王都に近いから作物も売り易いし、野盗も少ない。

 だからそれなりに豊かなんです。税を多くしなくてもやっていけます。恵まれた領地ですね」


 領地が辺境だと、作物の輸送に費用がかかるから、それだけの価値があるものでないと高くて売れない。そうやって考えると、王都に近いというだけで恵まれている。商人の行き来が多いから、通行税だって沢山入る。勿論、街道の整備や警備に力を入れなくてはいけないけれど。商人が増えれば増える程、通行税を下げても儲けが多くなるから、通行税は近隣の領地でも一番低い。


 領地経営が容易だから、私みたいに経験の少ない小娘でも、上手く領主っぽいことができているのかもしれない。そうやって考えるととても恵まれていてありがたい。




 一月近くかけて領地を一周して屋敷に帰還したら、エメが涙目で迎えてくれた。


「嵐の後は疫病も流行りますのに、何かあったらと思うと……」


 そう言って言葉を詰まらせる。


「疫病は流行っていなかったわ。前にポーションを送ったのが良かったみたい。それとね、私が行く前に医術師が回ってくれたから、病人はいなかったわ」


 病人どころか、長年の腰痛が治ったなんて老人が大勢いて、嵐以前よりも元気な人が多かった。医術師を確保するのが大変だけど、嵐の後に領地を回ってもらうのは効果があるかもしれない。費用が嵩むと言っても、屋敷で夜会を開くのよりはずっと安いのだ。


「アングラート領は安全で、野盗が殆どいないから移動が楽ですね」


 アーレイ先生と同郷の人たちが笑いながら出迎えてくれた。私達より一刻ほど早く、屋敷に戻ってきたらしい。

何処まで野盗狩りに行ったのか聞いたら、ラングーラン領の手前まで行って戻ってきたと言っていた。


「一月せずに? 街道を外れることも多いですよね?」


「馬車じゃないしなあ。行軍に比べれば、全然大したことないさ」


「まあ、女性騎士でもその程度は普通ですね」


 凄いと言って驚く私に、アーレイ先生まで大したことがないと返してくる。騎士の体力凄い。先生方が今から鍛えれば、全員が魔法騎士にだってなれるよっておっしゃっていたけれど、なれる気が全くしない。




 夜は使用人も含めてパーティを開いた。状況が状況だから、豪華な料理は全然無かったけど、嵐の酷さの割に被害が少なかったことと、復興を祝ったものだ。人手が足りなかったので、男性使用人が被災地に応援に行ったり、女性使用人が炊き出しを手伝ったり、領主館もそれなりに忙しかったのだ。各地の代官屋敷も、ポーションを追加で出したり、通行できない道を整地したりと大忙しだった。


 ひと段落したので、お疲れ様会みたいなものだ。


「このままお嬢様が当主になられたら、アングラート家も安泰ですね」


「アングラート領に生まれて良かったです」


 そんな言葉があちこちから聞こえてきて面映ゆい。


「慕われている領主様なのね」


 アーレイ先生までそんなことを言ってくるから、もう部屋に帰って寝てしまおうかと思ってしまった。


「皆の顔を見て、ユエィン。綺麗な目をしているし、心から楽しんでいるでしょう? 幸せな証拠よ。領主にとって何よりもかけがえのない宝物。大切にしてね」


 確かにみんな楽しそうにパーティを楽しんでいる。愁いのある顔をしている人は誰もいない。


 そうか、これが宝というものなのね。


 今日までずっと、自分が生き残ることしか考えていなかった。領主である私が道を外せば、私だけでなく領民が苦しむのね。


 翌日、早くに領主館を発つ。私は早々に部屋に引き上げたけど、みんな遅くまで起きてたらしい。それなのに朝早くから皆元気だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。