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14. 領主の仕事

 お父さまには、卒業式の翌日に、私が当主になったことを手紙で連絡した。一応、別宅の存在は知らないことになっているので、王宮の職場宛だ。


 王立学園卒業は伏せて、国王の承認に関する書類の登録番号を知らせる形にしておいた。


 あれから半年、お父さまからは何の連絡も無い。今年の晩夏に嵐がきたらどうする心算なのか、当主になった連絡のついでに書いておいたのだけど。領民が飢えた分は援助する準備はしているけど、減収の補填は一切する気が無い。無策のツケは自分で取るべきだと思っているからだ。


「久しぶりね! 今回は休暇を領地で過ごそうと思うの」


 出迎えてくれた家令に挨拶をした。


 相変わらず荷物はとても少ない。基本的に移動中の荷物とお土産くらいしか持ってないからだ。着替えはお母さまやお祖父さまの子供の頃の服で十分だ。各地方を治めてくれている代官達のところにも訪問するから、ある程度きちんとした服装は必要だけれど、お母さまのドレスを着て行けば「懐かしい」と喜んでいるので、その言葉に甘えさせてもらっている。


「ええとね、今回は領地の視察もあるのだけど、ポーションを作って配ろうと思うの。昨年、とても効果があったし、今年は医術師を確保できなかったから」


 二級、一級のポーションは三級ポーションと違って、煮出したものを調合したり、水出ししたものを加えたりと手間がかかる。だから魔道具で一括作成はできないけれど、素材の薬草自体は普通に野山に生えている。


 王都だと買うことが多いけれど、領地なら取り放題だ。午前中に散歩がてら薬草採取をして、昼過ぎから作成に入る予定にしていた。


 翌日からポーションを配りつつ、各地の代官屋敷に顔を出す。勿論、全ての村ではないものの、進路沿いの村を覗くのも忘れない。


 今のところ作物の生育は順調そうだった。嵐で駄目にならなければ、まずまず豊作かもということだった。水利権の揉め事もなく、疫病も無く、それなりに良い状態を保てているらしい。


 なんか領主っぽい仕事をした実感が湧いてくる。


 子供らしい伸び伸びとした過ごした日は無かったけれど充実した日を過ごして、休暇の終わりと同時に王都に戻った。




「今年は何を作るの?」


「今年は勉強の一年にしようと思ってるの。足りない知識もあるし、治癒術や薬草学もまだまだ技量が足りないし」


 二年連続で制作しているので、今年も何か作るのだろうと同級生が聞いてくる。

でも何かする予定はなくて、自分の知識を深める方に注力しようと考えている。


「そういえば王宮図書館にも入室を許されたんでしょう?」


「ええそうよ、一応伯爵家以上の当主は図書室に入る権利があるらしいの」


 肯定すれば羨ましがられた。でも学園の図書室もそれなりの冊数と質なのだけど。五日に一日くらいの割合で王宮に通う間に、司書ともすっかり顔見知りだ。尤も公爵家の当主というよりは、当主である親の許可を得て通う娘だと思われているけれど。


 学園には卒業前より更に通う日数が減ったとはいえ、まだ登校している。本当は治癒術と魔法薬関係の授業だけで良いのに、何故か戦闘魔法中級クラスに顔を出している。嫌だって言ったのに、ルー・アーフェンとネール・アーフェンの狼コンビに唆されたというか、無理やり連れ込まれた感じだ。他の先生も同調して、時間はあるのだし、身体を動かすのは良いことだぞって言われて、気付けば何故か人形に向かって火球をぶっ放していた。最近は剣も扱える。淑女にあるまじき筋骨隆々な腕になったらどうしてくれるのよ。


 一人だけ身体がムキムキになったら嫌だったので、「一人は嫌っ!」と言って、取り敢えず同級生全員参加を誘ってみた。そのせいか今年の戦闘魔法中級も同級生全員で授業を受けることになった。教科担任がとても嬉しそうだった。しかも狼コンビは「良くやった」と先生から特別評価を貰っていた。もしかして評価のために私を利用したのか!


 そんなこんなでワイワイと楽しくやりながら、気付けば晩夏になり、また嵐の季節だ。今年は大嵐は来なかったけど、小さめの嵐が多かった。昨年、決壊したところは補修が終わっていたので、豪雨災害は起きなかったけど、長雨が続いた所為で、収穫量は少なそうだと報告があった。収穫期になって蓋を開けてみれば、そこまで酷い不作でもなく、普通の税収があったけれど。


 でもガルリオ領は何か所も川が氾濫して、少なくない農地が水に浸かった。税収は今年も少なく、平年の二割止まりだった。領民は食料が足りなくなった分の補填を受けているので、決して裕福とはいえないけれど飢えることだけは無い。薬もあるから、特に死者が増えたりもしてない。


 とはいえ少しずつ領主への不満は高まっていることだろう。頭が痛い。

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