9 空想にふける母ちゃん
ある日、ふと母ちゃんは思った。もし、大金持ちと結婚していたらどんな暮らしをしていただろうかと。……そして、空想してみた。
「家政婦さん、晩めしはカルボオナラとミニストローね」
「はい、かしこまりました。カルボナーラとミネストローネでございますね?」
「そう、それそれ。それと、めしのあとはピースタチをカッサラッタね」
「はい、かしこまりました。ピスタチオのカッサータでございますね」
「そう、それそれ。その前に、バブル電車、じゃないバブルバスでひと泡吹かせながら泡踊りしてくるわ」
「かしこまりました。ごゆっくりダンシングタイムを満喫してくださいませ。ダンシングの間にお食事の用意をいたします。では、失礼します」
「よろしくざます。泡だけにあわただしくあわてちゃった。なんちゃって。プルタブ、じゃないバスタブに入る前に10カラットのダイヤの指輪を外さないと。排水口に落っことしたら大変」
泡風呂に浸かってる母ちゃん。
「あ~、いい気持ち。ローズの香りが恋する乙女チックにしてくれるわ。ウッフン」
「奥様、お食事が出来上がりました」
「は~い」
ピンクのシルクドレスでテーブルに着く母ちゃん。
「まぁ~、おいしそう」
「旦那様がニューヨークにお出かけになって寂しゅうございますね」
「そうなの。だから、私もニュウヨーク(入浴)。なーんちゃって。わぁ~、じゃがいもがホクホク。う~ん、おいしい……」
ミネストローネを食べてる空想をしている母ちゃん。
「母ちゃん、母ちゃん。なんで、よだれたらしながらニヤニヤしてんの?」
「あ、びっくらこいた。おかえり」
「ただいま。おやつは?」
「冷凍庫にピースタチをカッサラッタがあるでしょ? あっ、……あるのは空想の中か」