恋する白狼
メルは蓮が出て行ったのを確認してからベッドに向かって声をかけた。
「桜…いつまで寝たふりをしてるんですか?」
そういった後ベッドがモソモソと動き出した。
「…ばれてたの?」
「当り前よ。いろんな人を診察してきたんですからそれくらいわかります」
「あはは、ごめんなさい」
まあ、寝たふりをするのもわからなくもないです。女の子としてはかなり恥ずかしいことばかり起きてますから。それよりも…
「ううん、こっちこそごめんなさい桜。私がしっかりとしていればこんなことにならなかったのに。それに聞いてたんでしょ?元に戻れないってことも」
「うん」
「やっぱりね。元に戻る方法は必ず見つけるからそれまでは辛いかもしれないけど」
桜は途中で私の言葉を遮るようにして話し始めた。
「そんなことないよ! 私がちゃんと制御できて入ればこんなことにはならなかった。全部私のせいだよ」
「いえ! 私が止められなかったのが悪いのよ!」
「いや私が!」
と何回も続きそうだったけど途中で二人とも吹き出してしまった。
「「プッ…アハハ!」」
「ありがとう。じゃあ、どっちも悪いってことでいいかな?」
「それでいいよ」
お互い笑い疲れたあたりで別の話題になった。
「ところで蓮さんに告白しないんですか?」
「ふぇっ!?」
「そんなに驚かなくても…好きなんでしょ?」
「ななななんでわかったの!?」
「傍から見ていればわかるわよ」
桜はベッドのシーツに顔をうずめて恥ずかしそうにしている。顔も赤く染まっているのがよくわかるわね。あ、耳と尻尾も左右に振られてわかりやすいくらいに反応してる。なにこの子すごく可愛い。
「そ、その…うん、蓮君ってすごく優しいしかっこいいし…ふぎゃっ!?」
そーっと近づいて、フリフリと揺れている尻尾をつかんでみた。
「お~すごいモフモフでいい感触~ずっと触っていたい」
「ちょっ、ちょっと! 尻尾触らないで! 尻尾は好きな人にしか触らせないんだから!」
「ちょっとまって今なんて言った?」
「尻尾は好きな人にしか触らせないだけど」
「あの桜、推測だけどたぶん価値観まで白狼の基準になっているわ」
「そ、そうなの?」
「うん、たぶんそう…もしも体に違和感があったらすぐに私のところに来てね。何が起こっているかわからないから。私のほうで白狼の習性を調べておくから何かわかったら教えるね」
「ありがとうメルちゃん」
「ううん、こちらこそありがとう。さて、洗いざらい色々としゃべってもらいましょうか」
「メルちゃん目が怖いよ…」
「さあ、すべてしゃべっちゃいなさい!」
「わーーー!」
「どうもこんにちわ~先輩います~?」
この声はアトリアですね。
「勝手に入って~」
「くっ、くすぐったいよ~」
すぐにアトリアは私の部屋に入ってきて首をかしげながら近づいてきた。
「ありゃ、何してるんですかメルちゃん。って白狼? 珍しいな~」
そのままアトリアも尻尾をいじり始めた。
「やめてってば! あんまり触られると体が変になるぅ…」
「おおう、ごめんなさい。確か白狼は発情期が大変ですもんね」
「何か知ってるのアトリア?」
「知ってますよ~結構珍しい種族ですね。えーと、確か好きになった人だけを愛して愛が叶わなければ一生独身でいるくらい一途な種族ですね。身体能力も好きな人が関わると劇的に上がったはずです。銀狼も同じですが決定的に違うのは満月の夜じゃないと妊娠しないところですかね~」
「すごい種族ね」
「そ、そうなの?」
「そうですよ~特に身体能力は結構有名です。愛した男のために一万の軍隊を壊滅にまで追い込んだ話もありますからね。確か『狩人と白狼』って本にもなってます。おお~、いいおっぱいですね。ムニムニ」
「も、揉まないで~ひゃあっ!」
「おかしくない? さっき蓮さんにステータスを見てもらったけどそんなことができそうな数値じゃなかったわよ」
「ん~素直になってないからじゃない? その白狼は好き好き大好き愛してるって押せ押せだったらしいですし」
「素直…まだ私には無理かな」
「おやおや~? これは恋の予感~あたしもまぜろ~!」
「「わあああ!」」
ちょっとした女子会はそのまま盛り上がっていった。