クイーンスパイダー
投稿が遅れてすみません。仕事が忙しすぎて執筆する時間がなかなか取れませんでした。まだしばらくは忙しい時期ですので投稿が不定期になると思います。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。
「いぃぃやあああぁぁぁ、こっちこないでえええ!!」
さっきから桜がバーストを連射しまくってるけどスパイダーの糸で防御されて全然数が減っていない。あの糸はかなりの衝撃吸収能力があるようで採取できればいい服の素材になりそうだ。というか桜さんや落ち着きなさいな。弾は無料じゃないんだよ。それ作ってるんだからね。
もう軽く4桁を超える数を撃ちまくってるな。ってこら流石にやりすぎだおい!
「桜! ちょっとは落ち着け!」
落ち着かせようとするがそれをさせてくれるほど相手はバカじゃないみたいだ。この隙ををついて糸を吐いて攻撃をしてくる。それを見て俺は回避するが桜はパニックになっていたせいで避けきれず足に直撃していた。
「ひゃあ!? と、取れない!」
糸はかなり粘着性があるみたいで命中した部分が床とくっついて動きを封じていた。これを好機とみて蜘蛛たちは桜に飛びかかっていた。それを見た桜は顔を真っ青にして気絶していた。
「って桜!?」
「まったくしょうがないわねぇ」
雰囲気が急に変わると足が固定されているのを感じさせないような動作で的確に風爪で蜘蛛たちを切り裂いていく。攻撃が届かない相手にはバーストで撃ち落としていた。なんて洗練された動きなんだ。ってまさか。
「マルコか?」
「桜ちゃんが気絶しちゃったので出てきました~虫嫌いも直しておかないといけないね。流石に戦ってる最中に気絶しちゃうのはちょっとね」
「…しばらく桜のことはよろしくお願いします」
「んふふ~任されました」
俺は一撃の威力が高いマテリアルを構えて天駆で空中を飛び回りながら中くらいの大きさの蜘蛛を狙撃する。先に一番小さい奴をまとめ上げているのを倒したほうがいいと判断したからだ。そして俺の思惑通り相手の統率に乱れが生じ始めていた。マルコは流石というかなんというか自分に着いた糸を切断した後は命中する糸を本当のギリギリで避けながらこっちに向かってくる蜘蛛たちを風爪で切り裂いていた。
「おっと危ない危ない」
直撃する糸を吐かれると当たる部分に天駆を発動させて受け止めるとそのまま足場を蹴って距離を取り、空中でターンをしてまた天駆を発動させて移動してから体勢を整えるとバーストで反撃していた。俺から見ると【>】の立体機動を高速でしていた。すっげぇ…天駆って上だけじゃなくて横の移動や防御に使う方法もあるのか俺も参考にさせてもらおう。そうしてマルコが敵を翻弄しているところに俺は的確に相手の頭脳を撃ち抜いていく。とうとう統率しているであろう蜘蛛を全部撃ち落とすとクイーンスパイダーは何か焦ったように足をバタバタさせると糸を無差別に吐き出し始めた。
「自棄になったか? いや、すごく細い糸をどさくさ紛れて放ってるな」
「およ? よく気づいたね。その糸は触れると切り裂かれるから注意してね」
「だろうと思ったよ。んじゃあ、こっちも切り札の一つを使いますか」
俺はマテリアルに赤いラベルを巻いた銃弾を一発だけ装填すると魔力を込めてトリガーを引くのと同時にあのキーワードを唱える。
「復元」
音速を超えた弾丸はクイーンスパイダー達が張った糸のシールドに突き刺さると途中で止まってしまった。だが、まだそれで終わりなんかじゃない。次の瞬間、かなりの轟音を立てて爆発した。俺が放ったのは榴弾タイプの銃弾だ。炸裂方式は近接信管じゃなくて復元にしてあるため止められても問題はない。肝心のクイーンスパイダーは爆発に巻き込まれて瀕死の状態になっていた。そこにマルコが追い打ちをかけた。
「これで終わりだね」
いつの間にかクイーンスパイダーに接近しており気づいたときにはもう切り裂いていた。
「鮮やか…」
「これくらいならすぐにできるようになるよ」
「そう言われてもさ」
「大丈夫大丈夫、コツは教えてあげるから2人とも天駆の使い方に無駄が多すぎるんだよ」
「お願いします。師匠」
「師匠っていい響きだね! 任せなさい!」
そう言って胸を叩くと豊満な胸がプルンと震えた。その様子をマルコは死んだ魚のような目で見つめていた。
「世の中って不公平だよね」
俺はマルコの真の姿を見たわけじゃないけど色々と察してしまった。
「ま、まあ、人の魅力は胸だけじゃないから」
「…ありがとう。そんなこと言われるとおばさん惚れちゃいそうだよ」
地雷を踏みそうだからこれ以上は何も言うまい。
「よく考えたら殺しちゃったら継承は使えないんじゃ?」
「あ」
その後はマルコ師匠がひたすら謝ってきたが殺ってしまったものは仕方ないので許すことにした。忘れてた俺も悪いからな。
「さて、そろそろ工房に戻りますか。桜も起きてきそうですか?」
「うん、もうすぐ起きそうだよ。あたしはそろそろ引っ込むけど特訓がしたいなら桜ちゃんに言ってくれたら出てくるよ」
「わかりました」
「それとこのまま攻略していけば次に厄介なボスは50階層で現れるはずだよ。一通り対策を立てて挑まないと確実に負けるよ」
そんなことあるんだろうか? 今の装備でも結構過剰な火力になっているのだ。この火力で倒せない敵なんているか? そんな俺の思考を表情から読み取ったのか。さらにアドバイスは続いた。
「慢心というのは戦闘においては最大の敵だよ。もっと気を引き締めないと殺されるのは蓮君だよ」
…確かにそうだ。これは兄貴にも耳にたこができるくらいに言われていたことだ。最近は武器が充実していたからどこかに慢心があったのかもしれない。ここは素直に忠告を受け入れよう。
「ご忠告ありがとうございます」
「うんうん、目つきが変わったね。理解してくれたようで何よりだよ。ほとんどの人は意味が分からないという顔をして自滅しちゃうからね。じゃ、頑張ってね」
そして桜と入れ替わると速攻で謝ってきた。
「ごめんなさい蓮君!」
「いいよ。虫嫌いは女の子だったら当然というかまあ、普通のことだしね」
「でも、戦闘中に気絶しちゃうのは流石に…」
「それはなぁ…ま、おいおい慣れていけばいいよ」
「私頑張るよ!」
えいえいおー! と右手を高く掲げて気合を入れていた。可愛いなぁ…でも、足元のクモの死骸を踏んでヒッとなっていたけど。
そして俺たちは50階層に到達するまでの間も鍛錬を続けながら攻略を開始するのだった。