装備強化と野原桜の過去
固有技能の設定を考えるのが難しすぎるぞ!もっと文章を書く能力が欲しいよ
久しぶりにベッドでよく寝たのでここ最近溜まりがちだった疲れが一気に取れた気がした。起き上がろうとすると俺の腕の中で桜が寝ていた。何だかすごくいい香りで柔らかくてマシュマロのような感触が伝わってくる。これってまさかな? いや、まっさか~ははは、あまり思い出さないようにして桜を起こそうと思ったけど気持ちよさそうに寝ていたので起こさないように慎重に抜け出すと洗濯しておいた服を着て後回しにしていた工房の確認を始めた。
主に工房はマギウスクリスタルのある作成部屋、プライベートルーム、保管室、貯蔵室で構成されていた。だけど保管室と貯蔵室は言うほど広くはなかった。拡張しようとしたけど何か別の要因があってこれ以上広くできないようだ。ちなみに今のステータスはこんな感じだ。
西城 蓮 年齢:17歳 性別:男
Lv.上限突破
職業:契約者
種族:人間
称号:召喚者、精霊の寵愛、妖精の寵愛、妖精マイスター
加護:魂の盟約、真理の探究者、生還の祈り、婚約
固有技能:<共感><共鳴><空間><聖域><再生><魔法><研究><工房><真理の瞳><継承><完全突破>
技能:契約、隷属術、全属性耐性、全属性適正、精霊魔法、顕現、高速演算、広範囲索敵、隠密、料理、栽培、裁縫、調合、書記、復元、細工、大工、設計、鑑定、鍛冶、錬成、錬金、付与、我流格闘術、言語理解
『追加された技能』
精密魔力操作、金剛力、召喚、威圧、衝撃、不屈、俊歩、身体強化、風爪、纏風、疾風、天駆、俊歩、金剛脚、知覚、嗅覚、反応、自然治癒、精密魔力感知、毒耐性、自動地図表記、自動地形表記、自動方角表記
[契約]大妖精フィーリア+全属大妖精『封印状態』
体力:5012
筋力:5134
魔力:7096
敏捷:5370
防御:5004
魔防:6080
<共鳴>
自分と同じ波長や性格、思考といった共通する部分がある場合両者の力を増幅することができる。1人よりも2人ならどんなことだって乗り越えていける!
<空間>
新たに空間を作成する技能だが、もともとある空間を広げるため空間がない場所には作成することはできない。
<聖域>
自分や許可した者以外が侵入することができなくなる領域を発生させる。この領域では回復魔法の効果が倍増する。何人たりとも私の領域に踏み入ることを拒む。
<再生>
欠損も再生する最上級の回復法。さらに傷つく前よりも強化された状態で再生される。ただし、痛みなどは無効化されない。
<魔法>
全ての魔法を使いこなすことができる。しかも作成することもできるようになる。ただし、魔法を全て理解していなければこの技能は使うことができない。努力をせずに得る力に強力な物はない。
<研究>
指定したものを解析することができる。道具だった場合、さらなる強化方法なども時間は掛かるが解析することができる。解析にかかる時間は使用者の演算能力に依存する。
<工房>
<空間><聖域><魔法>の3つを使い作成された固有技能。空間で場所を確保し、聖域で認めた者以外が入ることを許さない。そして魔法によりあらゆる事象を起こすことができる。何より異世界から持ち込まれた数々の知識に技術が集まった英知の集大成。
正直に言おう。覚醒した契約者の力やべえ! 特に固有技能がかなり増えていて強力な物ばかりだ。というか誰だよこんな固有技能を持ってるやつ! 確か世界を越えないと固有技能は発現しなかったはずだ。俺と契約状態にあるかもしれない人たちの中に<共鳴><空間><聖域><再生><魔法><研究>を持っている人がいるってことだよな? まあ、契約状態の人を表記してくれないから今何人と契約しているのかさえ分からないしまあいいか。
工房は作成された固有技能。つまり<空間><聖域><魔法>の3つを使って作成したみたいだ。正直に言うとこの固有技能がかなり強力だ。理由としては俺達の世界の兵器や技術が大量にあるからだ。検索しているとどうやらロマン武器まであるみたいだ。つうか普通に考えたら作れない兵器まであった。完成はしていないみたいだけど。ん? 一つだけメッセージが付いてるな。
『ずっと君のことを待ってる』
そのメッセージを見て頭をかきながら紐づけられた設計図を見ると笑ってしまった。脱出したら会いに行ってあげないといけないな。紐づけられていた設計図はホールケーキの作り方だった。代用できる材料も全部研究済みってことはかなり本気だな。たくさん作ってあげないとな。
さてと本命の武器づくりにかかるか。先にスナイパーライフルを作成するために設計図を呼び出した。この中からBレットというふざけた名前の銃を作ることにした。これは似たような名前の銃を元に改造されていたのでこれを選ぶことにした。てかこれ絶対バレットのことだろ。弾薬も研究済みじゃねえか。さっそく設計図から作成をしようとしたが一気に本体を組まずにパーツごとに作成してから付与をかけることにした。バレルには定番の加速、ストックは衝撃吸収その他は硬度上昇と付与をしていった。そして付与パターンも記録してすぐに量産できるようにしておく。
へえー、付与効率を上げる方法も記載されてるな。これもついでに参考にさせてもらって強化しておくか。そして次に弾薬に取り掛かると設計図を見て絶句した。火薬の材料が火属性の魔石だったからだ。よく読み進めていくと意外な方法で火薬を再現していたそれは魔石そのものに付与を施すというものだ。付与をする魔法の属性に合った魔石じゃないと上手くいかないみたいだけど。あ、専用の道具がないとできないのか。いや、これなら練習さえすればできそうだ。ちなみに2つ以上付与すると魔石が砕け散るようだ。
量産を考えて道具のほうも作成要求を出しておく。さらに弾薬も自動で作れるように自動錬成機と付与機も要求しておく。弾薬は俺の考えた刻印魔法も取り入れてさらに威力が増加したが、ここで一つ問題が浮上してきた。薬莢と銃本体の強度が足りなくなってしまった。完全なフルパワーだと壊れるため仕方なく威力は多少下げることになってしまったけどオリハルコンなら耐えてくれそうなので一応、設計図を登録しておく。
これで真っ赤なスナイパーライフルが完成した。ついでにリボルバーもサブマシンガンも改造しておいた。サブマシンガンはマガジンの装弾数を100発から300発に向上させて魔力を流すと風爪を発動できるようにした。名前はそうだなバーストにしようかな。スナイパーライフルは装弾数30発に抑えてさくせいしてある。理由としては連続で撃つと反動で壊れるからだ。これでも最大威力じゃないんだけどさ。フルパワーになったら一体どうなるのか楽しみだ。名前はどうしようかな…マテリアルでいいかな。これからはそう呼ぼう。ついでにカリバーのほうはマグナム弾に変えてある。弾薬の薬莢も完全にアダマンタイトに変えてしまって作成コストがかなり高くなってしまった。仕方ないので薬莢は余程のことがない限りは回収して再利用することにした。
それに伴ってリロードの方法も変えることにした。今まではスピードローラーを使っていたがこれを廃止して工房からの取り寄せ方式に変更する。具体的には撃ちきったら銃を捨てて工房に回収する。そして工房にある予備の銃を手元に取り寄せるという方法にした。回収された銃は工房で装填しなおすということだ。もう工房だけでいいんじゃないかな。
つまり、銃をバッと左右に放り投げてホルスターから新しい銃を取り出すというロマンあふれるやり方に変わった。けどぶっちゃけるとただ手を放すだけでいいから本気の戦闘の時はホルスターからじゃなくて直接手元に呼び寄せる予定だ。
武器の強化はここまでにして次は服に取り掛かる。いくつか服の素材になりそうなものがあったからこれを使って作らせてもらうことにした。着替えがなかったしな。いや、正確にはあることにはあるんだけどロックという魔法が掛かっていて収納から呼び出せないようにされているせいで使えないんだ。
さてとまず先に着替えから作ろうか自分のサイズを入力して長袖シャツとズボンを作成する。あ、桜の分も作らないと………よく考えたらサイズを知らないといけないよな。それに下着類も必要だろうし。かと言って勝手にサイズを見るのは悪いなぁ。そうだ今着ている服をコピーしてサイズを調べたら手っ取り早いじゃないか!
さっそく桜が寝ているベッドの近くに置いてある服を取ると広げてサイズのデータを研究した。後は下着だけってところでパンツを手に取ると思わず端と端をもって上に掲げるように開いた。これが女性の下着だけど再現するための素材ってあるのか? いったん代用できる素材も研究したほうがいいかもな。えーと、検索してっと。
そうして俺はパンツを握りしめたまま研究されていないか検索していると桜が起きてきた。
「おはよぉ~蓮君」
「おはよう桜」
目をこすりながらまだ眠そうな声を出して俺に近づいて来ようとするがここでよく考えてほしい。今俺の手には下着と服がある。替えの服はない。そして寝る前はタオルを体に巻いていたけどほどけている可能性が高い。ということは~?
「ななな、なんで蓮君が私の下着を持ってるの!?」
「あ、いやこれはサイズが知りたくてさ。起こすのも悪いかと思ってぇ!?」
俺の視線に首をかしげて下を見ると顔を真っ赤にして急いで手で隠した。
「わわわ、私よく思い出したらあああ、あんな大胆すぎることを!?」
あー、どうやら獣化の真の能力を解放したことで色々と引っ張られてるみたいだな。それにマルコという存在が何かしているかもしれないし、そういえば伝えてなかったな。
「あのさ桜ちょっと冷静になって聞いてもらっていいかな?」
「う、うん。その前に…あの」
「どうしたの?」
「服を返してほしいです」
俺は全力で土下座しつつ服を返して着替え終わるまでどう説明するかを悩んでいた。
「もういいよ。って土下座しなくもいいのに」
「そういうわけには…オホン、さっそく本題に入るんだけど桜はマルコっていう存在と契約した覚えはない? 眠る前に桜の体を使って接触してきたんだ」
「契約した覚えはないんだけど。あっ、でも何か声が聞こえてきたことはあるよ」
「…そっか、なら呼び出すことってできる?」
「やってみるね」
そう言って目を閉じると突然体から力が抜けしまっているようで倒れそうなところを受け止めた。
「桜?」
呼びかけてみるが反応が全くない。もしかしたら何か別の場所に精神だけ呼び出されたみたいだ。
「入れ替わっていないみたいだしこのまま待ってみるか」
俺は桜の顔を見つめながら意識が戻るまで抱きしめることにした。
◇
「ここはあの時の空間?」
『やあやあ、いらっしゃい桜ちゃん。お茶でもどう?』
「あなたは」
そこには私と同じ白狼の姿をした。とても美しい女性の人がいた。凛々しいという表現が正しいくらいに整った顔にスタイルは無駄な脂肪がほとんどないスレンダーなモデル体型で身長は私と同じくらいだった。
『あたしがマルコだよ。もう酷いな~契約した覚えはないってさ。ちゃんとあたしたちは契約を結んだよ?』
記憶を振り返っていくがやはり契約した覚えがない。そもそもこんな美人な人を見たら忘れないと思う。
『あはは、そんなに眉間にしわを寄せて考え込まなくても大丈夫だよ。思い出せないのは当たり前なんだからさ。だって記憶を消したんだからね』
「えっ、でも私ここに来てからそんな召喚とかした覚えは」
『違う違う、この世界で契約してないよ。あたしたちが契約したのは地球。科学が進んだあの世界だよ』
「どういうっ…あっ」
思い出そうとすると急に頭に激痛が走る。わ、私はあの日確か、ああああ!!! 私が蓮君を殺!! 罪悪感が襲い掛かってくると突然、私は頭を撫でられながら抱きしめられた。
『大丈夫、無理に思い出さないほうがいいよ。それにあれは子供にはどうしようもない出来事だったんだから。桜ちゃんは悪くない。悪いのはあの日あの場所に現れたあたしなんだから』
しばらく撫でられていると落ち着いてきたので用意してもらったソファーに2人で腰かけた。
『ふっふっふー、この撫で方は白狼にとってとても気持ちいいから蓮君にしてもらうといいよ』
「あ、ありがとうございます」
『落ち着いたならいいよ。さて、あたしからあの日の真実を語ろうかな。今、少しだけ思い出したみたいだけどどうする? 知りたい?』
「お願いします」
『分かったよ~。そうあの日桜ちゃんは"蓮君を殺した"んだよ』
そう言われて私は息を吞む。嘘だといいたいけど嘘なんかじゃない。あの日、私は神社で消えかかっていたマルコさんと契約して暴走してしまった。そしてその時近くにいた蓮君に襲い掛かって殺してしまった。
『だけどあの時の力の暴走はあたしのせいだから気にすることじゃないよ。ま、気にしていなかったらあんなに引っ込み思案になってないよね。でも、三つ編みも可愛かったよ~』
「私が知りたいのはそういうことじゃ!」
『そんなに焦らないの。焦る理由はわかるけどね。なんで"蓮君が生きている"のかでしょ? そんなのは簡単だよ。あの時点で西城蓮という人間はもう人間じゃなかった。ただそれだけだよ。それにあの暴走を止めて封印を掛けたのは蓮君だよ』
「じゃあ、蓮君は一体」
『直接過去のことを聞いてみたら? 封印された後のことはあたしも知らないしね~』
「…そうしてみます」
『ところで何しに来たの? 男の喜ばせ方ならあたしは結構知ってるよ~』
「あ、そうだった。呼び出せないかって聞かれたんでした。その件はじっくりと教えてください!」
『じゃあ、じっくりと講義しないとね。蓮君には桜ちゃんを乗っ取るつもりはないよって伝えてくれるといいかな。知りたいのはそういうことだろうし』
「まさか私がは、裸で抱き着いていたのって」
『せいか~い、あたしが誘惑してたんだ~。桜ちゃんの体に興味津々だったよ。その時に乗っ取られたんじゃって心配してるんだと思うよ』
「蓮君…」
『フフ、恋する乙女の表情だね。そうそうここで戦い方も教えてあげるよ。あたしの記憶で学習してもいいけどそれだといざっていうときに動けなくなっちゃうからさ。オーバーと戦った時に動けなくなったのもあたしとのつながりを強制的に断たれたのが原因だしね。桜ちゃんはどうする?』
「私も蓮君に守られるだけじゃなくて守りたいです。だからよろしくお願いします!」
『わかった。眠っているときにこっちに来てくれるといいよ。今日は先に蓮君に説明して安心させておいで』
そういうと体が引き戻される感覚が私を襲うと現実に戻ってきていた。目を開けて周りを見渡そうとすると抱きしめられていることに気づいた。
「おかえり桜」
「蓮君…ただいま」
ずっと私が戻るまでこうして手をつないでいてくれてたんだ。ありがとう蓮君、大好きだよ。
「どうだった?」
「色々とお話をしてきたよ。それで蓮君には聞いてほしいことがあるんだ」
そして私は恐る恐る精神世界であったことを語りだした。
「…そっかそういうことがあったのか。結論を言うと覚えていないんだ。そのころの記憶が曖昧でさ。でも固有技能に再生と魔法があるから致命傷でも生きていて封印できたのも一応、説明がつくね。ということは俺も地球で契約していたってことになるけど。一度、聞いてみないとわからないな」
「誰と契約しているのかわかるの?」
「分からないけどフィーリアがこの工房の鍵を持ってたってことは工房の作成には関わっていたはずなんだ。だからフィーリアが目覚めたら俺の過去についても聞いてみよう。それまではこの件は保留だね」
「わかった。ありがとう蓮君。それとごめんね」
「桜は悪くないから気にしないこと。さてと朝ごはんにしようか調味料も作っておいたからちょっとだけこだわれるよ」
「あ、私も手伝うよ」
「二人一緒に作ろうか」
「はーい」
そうして二人仲良く朝食を作ったのだった。その様子はまるで新婚の夫婦のようだったことを桜は密かに思っていた。