失踪
文章に違和感が感じないように気が付いた部分に修正を入れました。新たに17部に書き忘れていた「靴に付与した天駆」という文章を追加しました。他にも少しだけ文字を追加しています。
あれから3日が経つがいまだに蓮達が帰ってこないそれどころかバルバさんも帰ってくる様子がない。明らかに非常事態になっているため調査隊を派遣していた。そしてちょうど今日が帰還日になっていたため俺はソワソワしながら待機室で待っていた。
「宗司さん、心配なのはわかりますが少しは落ち着いてください。大丈夫ですよ先輩たちなら無事に帰ってきますよ」
アトリアにそう言われて深呼吸をして多少は落ち着こうとするが、それでもやはり落ち着かなかった。だけどよく観察するとアトリアも落ち着きがない様子だった。後はメルという人も同じように待機室で待っていた。
「メルちゃんも少し落ち着いたら? 実は寝てないでしょ?」
「そうだけどでも、居ても立っても居られなくて」
「とりあえず、これでも食べなさい。そのままだと本当に倒れるわよ。倒れた姿を桜に見せるつもり?」
そう言われて納得したのだろう。申し訳なさそうにしながらもパンを齧りはじめた。
「…ごめんなさい。ありがとう」
「お互い様よ」
しばらくすると団長が待機室に入ってきた。だが、その顔からはいい知らせが聞けそうにないほどに暗かった。
「…今、調査隊が戻ってきた。それでこれが記録してきた現場の記録水晶だ」
記録水晶とはその場の風景を残せるという。いわゆるビデオカメラみたいなものだ。いや、それよりもなんで記録水晶なんだよ。待ってくれ、もしかしてそういうことなのか?
「水晶を起動しますね」
そう言ってメルさんが水晶を起動するとそこに映し出されたのは"周りにバルバさんの装備が散らばっていて足を岩につぶされた原形をとどめていない無残な死体"と"床に壊れた魔方陣が書かれた部屋に血だまりがあってその周りに蓮と野原さんの装備が散らばっていて食い荒らされた死体が2つある"場所が記録されていた。
「う…そ…だろ?」
「嘘じゃないんだ。実際これが回収された装備だ。どれも損傷が激しくてかなりの激戦を繰り広げたんだろうと予想できる。一応、迷宮の隅々まで確認したがどこにも生存を確認できるものはなかった…これから司祭たちのもとに報告に行ってくる」
団長は憂鬱なオーラを出しながら部屋を出ていった。残された三人は何も言わずにたたずんでいた。その沈黙をかき消すように俺はしゃべりだした。
「俺は認めない。あいつがこんな簡単に死ぬわけがない」
「でも、実際記録も…」
「ごめんアトリアさん、しばらく一人にさせてくれないかな」
そう言って俺は部屋を出ていった。
残されたあたしは何も言わずに佇んでいた。だけどメルちゃんだけは何回も何回も水晶の記録を食い入るように見ていた。その様子が気になって問いかけるとまだ確信はしていないけどと念を押して憶測をしゃべってくれた。
「さっきからずっと見ていたんだけどこの映像変なの」
「どういうこと?」
「さっきガイアさんが持ってきた装備は激しい戦闘をしているのが一目でわかるじゃない。でも、この映像には肝心なものが一つも映ってないの」
「何が?」
少しだけ間をおいてメルちゃんはそう思った理由を教えてくれた。
「薬莢が1つも落ちてないの。もしも、本当に全力の戦闘をしたなら銃を必ず使うはず、それも薬莢回収をする余裕なんてないはずだから床に散らばっていないとおかしいの」
そう言われて見直すと確かに先輩が持っていた武器の弾薬というものを使った後に出る筒が1つも落ちていなかった。これってもしかして。
「もしかしたら、もしかしたらだけど桜も蓮さんも生きている可能性が高いよ」
それを聞いてあたしは宗司さんのもとに走り出そうとドアに近づいてところで待ってと声をかけられた。
「できることなら沖田さんだけにしておいて。生きている可能性を知ったら協会の人達が何をするかわからないから」
「わかった」
頷いてあたしは宗司さんのもとに急いで向かった。
ガイア団長は今現在司祭のもとに報告に来ていた。内容はさっき宗司たちに言ったのと同じだ。
「そうですか。とても惜しい人を亡くしました。ですが彼らの魂は神に導かれ安息を得るでしょう」
ふざけるな。そんなこと少しも思ってもいないくせに。
「それではこれで失礼します」
「ええ、ご苦労でした」
ガイアが出ていった後、司祭ジュレスは笑い出した。
「フハハハ、上手くいったようですねぇ。さて、これで計画に移れますね。それでは洗脳魔法の準備をしましょうか。アハハハハ」
洗脳魔法自体は実は最初からかけていたがあの西城蓮という男が変に感がよかったため本格的にかけるのはずっと先送りにしていた。洗脳魔法は便利そうに見えるが掛けている最中に指摘されて意識すると簡単に解除されてしまう。だからジュレスとしてはあの男をさっさと始末したかった。それになぜか全体のかかりが甘かったがいなくなってからは順調にかかり始めた。やはりあの男のせいだったのだろう。あいつの能力に関しては気になる点はあったが、これですべてうまくいくと思うと些細なことなどもうどうでもよかった。
「まずは祖国に招待して実験に付き合っていただきましょうか。さあ、これで獣人や魔族どもを支配する算段が立った。これからが楽しみですねぇ。すべては我が神のために」
しばらくの間、教会では愉快そうな笑い声が響いていた。




