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異世界の契約者  作者: 木剣
第一章 異世界へ
17/35

薄汚れた少女。迫る闇

今日の訓練が終わったので水浴びをして着替えてから城下町へと繰り出す。最近は町の人には結構お世話になっているので声をかけられることが多くなっていた。

「レンちゃん!この前はありがとうね。また、困ったら助っ人頼むよ。これはサービスね」

「おばちゃんありがとう。困ったら助けるのは当たり前だよ。またいつでも頼ってな」


「やっぱりいい男だねぇ。おばちゃんがもうちょっと若ければアタックしたのにねぇ」

「あはは、気持ちだけ受け取っておくよ。うん、うまい!」

串焼きをほおばりながら世間話をする。


「あたりまえさね!そうそうレンちゃん、最近人攫いが多いから気を付けてね。確か、いかつい髭の三人衆らしいさね」

「あいよーありがとう。ごちそうさま。また来るよ」

「はいよ。気を付けてね。宣伝よろしくね!」

さすがおばちゃんちゃっかりとしてるな。お世話になっているし、宣伝もついでにするか。


実はここのお店で欠員が出たときに手伝いに入ったことがあるのだ。それ以降もちょくちょく手伝いに来ることが多くなったのでその時に仲良くなった。実は料理技能も手に入れてます。

話をした後は食べ歩きをしながら町をぶらぶらしていた。そして歓楽街近くに来てしまった。ここには娼婦館や奴隷館といった夜のお楽しみが集まっている。俺は使ったことはないけど奴隷館には固有技能の効果を確認するために一度来たことがある。結果はまあ、効果はあったけど提案されたのがいわゆる捨て駒戦法だったので拒否した。命を何だと思ってんだ。他のクラスメイト達は結構な頻度で利用しているみたいだけど。その裏通り近くでなにやら騒ぎが起こっていた。


「離してよ!この変態!」

「いいじゃねえかよ。お兄さんたちと気持ちいいことをしようぜ?お金もやるよ」

三人の髭男に絡まれている少女がいた。遠目に見ていると通行人は目線をそらして歩いているな。まあ、屈強な男の三人だからな。干渉しないのが一番だろ。


少女は大体10歳くらいでボロボロの布きれを着ているが髪はかなり綺麗な金髪だ。瞳は青色でぱっちりとしている。体についている汚れがなければ確実に美少女になるな。可愛い。ロリコンじゃないけどさ

そう思いながら近づいていると男三人のグループが前から近づいてきた。

「お?あれは勇者のチームじゃないか。あいつらが解決してくれるか」


解決されそうだから俺は見守っているか。それにしてもこの肉うめーな。もぐもぐ。

「あ、勇者様!助けてください!」

有名だからみんな知ってるんだろう。少女が助けを求めた。もぐもぐ。


「なんだこの小汚い女?近寄んなよ」

「汚いなぁこっちにこないでくれる?」

「おい、優斗、鈴木、流石にそれは」

「まさかロ」

「ちげえよ!」

「な、なんで?困っている人を助けてくれるんじゃないの?」

「は?可愛くていい体をしている女の子限定に決まってるだろ?お前みたいな汚い女を誰が助けるかよ」


「そんな…嘘」

「おら、さっさと来いよ!」

「いや!いやあああ、お願いします!優斗様、助けてください!」

「うるせえよ。はやくいけ!」


イケメン勇者が…確か天野だったかな?が少女に蹴りを入れた。うわひでえ…てか、あいつ確か姫様に求婚して一応、承諾されてたよな。本性はあんなやつだったのか。早めに知れてよかったわ。まあ、子供が不相応な力を手に入れて気が大きくなってるんだろうな。絶対どこかで痛い目に合うだろ。

「っとやべえ、さっきの3バカは人攫いだろうから早めに対処しないとまずいな。もぐもぐ」

俺は気配を消しながら急いで路地裏に入っていった。



「いや! はなして! このっ!」

「いでえ! 何すんだこのガキ」

「きゃっ」

私は手を掴んでいる男に噛み付いたがそのまま殴られて地面に叩きつけられた。


「あっ、あなたたちなんか勇者様か兵士に捕まればいいんだわ!」

「残念だったな。嬢ちゃん、愛しの勇者様は助けてくれなかったし、兵士はこの場所までは来ねえよ」

「まあ、そういうことだ。諦めな。おい、さっさとあれをつけろ」

「おうよ。これで大丈夫だな」

男たちは手慣れた様子で私の足に黒色の枷を嵌めてきた。なにこれ?隷属の首輪でも魔力放出防止首輪でもない。


「くっくっく、それが何か知らねえようだから教えてやるよ。それは封印枷って言ってな。新しくできた魔道具だ。つけられたら最後、魔法も技能も使えなくなる優れものだ」

そう言われすぐに魔法を行使するが発動しない。技能も試すが同じく発動しなかったどっちも封じるなんてこれじゃあ逃げられない。ほ、本当にまずい!

「誰か! 誰か! 助けて!」


「うるせえ!」

「ぐうっ…」

顔を思いっきり殴られる。さらについでと言わんばかりにお腹にも蹴りを入れてくる。

「バカ!売り物に傷をつけんじゃねえ。それくらいにしとけ!」

「チッ、しょうがねえな。命拾いしたなガキ」

「え…どういうこと?」

「あ? 知らねえのか? 俺たちは人攫いだ。 嬢ちゃんを奴隷にして売るんだよ。顔は結構いいからいい値がつきそうだな」

奴隷として売られてしまったら終わりだ。どうにかして切り抜けないと。

「ど、奴隷? じょ、冗談じゃないわ! い、今ならまだ罪は軽いわよ!」


「嬢ちゃん、捕まらなければ罪はばれないし、裁かれないんだよ? 諦めるんだね」

希望がないと分かると私は悟ってしまった。ああもう、私は助からないんだと、助けが来る様子もないから誰も助けを呼んでいないだろう。こんなことになるなら言うことを聞けばよかったと…今更後悔してしまった。

「暴れると困るから眠っていてね」

そのまま何かを嗅がされそうになる。でも諦めきれず泣きながらつぶやいてしまった。


「だ…れか…たす…け…てよ…ぐすっ、ううっ」

あの時みたいに私を助けてよ…

「ハハハ、だれも来ねえよ」

「そうだなー来ねえよー。もぐもぐ」

「「「……は?」」」

朦朧とする意識の中、見上げるとそこには知らない男の人がなにかを食べながら立っていました。

なんだろうこの人? 何だかすごく安心する声…


「んだ! てめえ! いつの間に後ろにいやがった! ってかもぐもぐするんじゃねえ!」

「失礼な! これうまいんだぞ! 肉肉ちゃんのオススメメニュー好評発売中! もぐもぐ」

「うわ、きたねえ! こっちに飛ばすんじゃねえ! しゃべるか食うかどっちかにしろ! てか宣伝するんじゃねえ!」


「もぐもぐもぐもぐ」

「しゃべるほうを捨てるんじゃねえよ!!!!」

なにこの人?騎士団の人かな。いえ、こんな人はいなかったはず…ここからだと顔がよく見えない…っていうか助けに来たのか。宣伝しに来たのかどっち!?


「ごくん。さてと、女の子に乱暴するなんて駄目駄目よー」

「んだとこの野郎! 女は男の道具だろ! どうしようと自由だろうが!」

「痛い目にあいたくなければさっさと消えな! くそガキ!」

「うぜえ。つうか子供に暴力を振るうんじゃねえよ」

「んだと!」

「はぁ…黙れよガキども。力の差もわからねえのか。あ"? とりあえず、人攫いの犯人として突き出してやるよ」

「うるせえ! 死ねぇ!」

「ばれたからには生かして帰せねえな」

バカが剣を抜いて切りかかった。


「だめ! お兄さん逃げて!」

体格差があり、相手は3人もいる。それにお兄さんは武器を持っていない。私は3人に殺されると思い逃げてと叫んだ。でもお兄さんは逃げずにこっちを見つめて笑顔でこう言った。

「大丈夫だよ。ちょっと待っててね。『具現化』"籠手こて"」

「え……?」

お兄さんの顔を見た瞬間、私は胸がいっぱいになって惚けてしまった。信じられない…こんな絵本のようなことが起こるものなんだ……お兄さんの手に籠手が現れてからは一方的な展開になった。



さて、意識を戦闘に切り替える。俺が来るまでに暴行を加えていたんだ多少は痛い目にあって後悔して貰わないとな。

『そうだよね~女の子のお腹に蹴りを入れるなんて最低だよこの人たち』

フィーリアがかなりご立腹のご様子ですね。うん、俺も許せないしね。念入りに痛めつけるか。

相手の攻撃を余裕をもって回避する。相手は片手剣だが、場所が狭いうえに三人いるので満足に使えていないみたいだ。間合いに気を付けていれば当たることはない。具現化で籠手を選択したのはそれが理由だ。


「ぐうう」

「なんでこんなガキに…」

「ぜんぜんあたらねぇ」

「剣筋が遅すぎだ。これなら団長のほうがまだいい勝負ができるわ。とりあえず、起きたら檻の中と思えゴミども」

そう言いつつボコスカ殴って相手にダメージを与えていく。


「くっそ! いてえなこの野郎! なめてんじゃねーぞ!」

タイミングを合わせて剣を受け止め、そのまま引っ張って相手の体勢を崩してから腹に蹴りを入れる。失敗したな膝当てやグリーブも具現化しておけば今ので大ダメージ入れることができたのに…次からは殴り合いの時にはグリーブも具現化しようか。胸当てもいるかな?考えておこう。それにしても安い挑発に乗ってくるとは思わなかったな。

「ぐふっ…」


あれ?そんなに威力はないはずなのに相手はそのまま動かなくなった。

「ハリー!よくもやったなこの野郎!」

激昂して勢いよく剣を振りかぶってくるが大振りすぎて剣筋が予測しやすい。俺は剣の側面を叩いて右に受け流す。そして左足を踏み込んで体重をのせて右ストレートを相手の顔面に叩き込んだ。


「おごぉおおっ!?」

相手の骨が砕ける感触が伝わってくる。殴られた男は顔が陥没して歯も何本か抜けていた。あ、やりすぎた。死んでないよね? まあいいか、後で回復魔法をかけておけば大丈夫だろ。


「な、なんだよお前!なんで兄貴たちがこうも簡単に倒されるんだ!」

「ん~、一応勇者ですから」

「……嘘だろ?」

「嘘じゃねえよ。さて、歯ぁ食いしばれ」

最後の1人はアッパーを受けて宙を舞った。さてと気絶させてサンドイッチにして縛っておくか。

「大丈夫かい?怪我は…してるな。もうちょっとこいつらの顔を小さくするか」

まだ殴り足りないので追加で殴ろうとしたらを女の子に慌てて止められた。


「だ、大丈夫です!もう平気ですから!だからもうやめてあげて!」

よく見ると顔がお見せすることができない状態になってる。やべえ、やりすぎた。とりあえず、優しい子にはご褒美をあげるか。その前に怪我の治療が先だな。

「わかった。これくらいにしておくよ。怪我したところはどこ?治療するよ」

「あ、自分で治…いえ、お願いします。こことここです。」

「ん……"ヒール"そして"リフレッシュ"」

ヒールが回復でリフレッシュが状態異常の回復だ。治療が終わったら俺はハンカチを取り出してから水魔法で濡らして軽く拭いてあげた。

「あ、ありがとうございます。あの今のって無詠唱ですか?」

「ん? そうだよ。初級魔法だけなら無詠唱がなぜかできるんだ。っと他に痛いところはないかな?」

「大丈夫です。でも、これは」


女の子視線をたどると黒い枷があった。これはなんだ?

「これがあると魔法と技能が使えなくて…」

「分かった。さっさと外すね」

そういうと俺は枷に手を置いた。

「え?あの男達から鍵を」

「鍵穴がないんだ…多分永久に嵌めておくタイプだろうね。はい、外れた」

「はやっ!?」

そんなに驚かなくても。ただ、無理矢理色んな付与をして封印の付与の効果を壊しただけだよ。後は錬成で切れ目を入れただけだし、普通じゃないかな?


「王宮の人なら誰でもできるだろうからそんなに驚かなくても」

「そうですねー」

「はは、っと頑張ったご褒美にこれをあげるよ」

俺は料理技能で作った飴玉をあげた。技能は全然関係ないけど。


「あ、ありがとう」

包み紙から取り出して口の中に放り込んだ瞬間、いい笑顔になってくれた。うん、子供はやっぱり幸せそうに笑っているのが一番だな。

「フィーリア。ロープを頼めるか?」

『はーい、トゲトゲの奴にしますね』

「だからやめてあげてよ!それ以上は死んじゃうってば!」

「ん?妖精が見えるんだ?」


女の子はしまったという顔をして目線をそらした。

「大丈夫、誰にも言わないから。『具現化』"ロープ"」

サンドイッチみたいに縛っておこう……ついでに嫌がらせしとくか。抱き合う形でグルグル~っとな♪

「…ひどいことしますね」

「まあね。さて起きた時が楽しみだ」


この後起こる惨状を思って祈っておく。ゴーメン。

「えっと、君の名前は?」

「私はエリスって言います」

「エリスちゃんだね。よろしく」

どこかで聞いた覚えがある名前だな。まあいいか。

「は、はい」

「早速だけどこの後どうするんだい?親御さんが近くにいるなら送っていくよ」


「迷子じゃないので大丈夫です。その…できれば遊びに行きたいです」

「…っはは。いいね素直な子は好きだよ。そうだね遊びに行こうか」

「ありがとうございます!」

「では、お姫様参りましょうか」

「あ…」

小さなその手を取って歩き出す。さてとどこにいこうかな。



兵士に人攫いの場所を伝えてから俺は服屋にやってきた。いくら何でも服装がボロボロのままじゃ楽しくないだろう。それにせっかくの美人さんが台無しだ。

「おばちゃんいるか~?」

「あらレンちゃん、いらっしゃい。今日はどうしたの?」

「この子の服を買いたいんだけどまだ在庫ある?」

「あらあら可愛らしい子ね。前に作ったやつね?あるわよ。持ってくるわね~」

「あ、ごめんおばちゃん。ちょっとお風呂場借りてもいいかな?」

「いいわよ~」


「ありがとう」

エリスは戸惑っているが俺は手を引いて店の奥に入っていった。

「あ、あのなんでお風呂に来たんですか?というか入ってもいいんですか?」

「大丈夫だよ。ここには何回もお手伝いに来たことがあるからね」

「…本当に勇者様ですか?」

「あ~うん、一応ね。後でステータスカードを見せてあげるよ。笑わないでね?」

「はい」


ちょっと笑っているけど…やっぱり笑顔が可愛いな。

「じゃあ、体を洗うから服を脱いで。確か試作品の石鹸がまだ残ってるはずだから使っちゃうか」

「え!?は、裸になるんですか!」

「ん?あ~ごめん恥ずかしかったか」

女の子はおませさんって聞くけど本当なんだな。こんなことならおばちゃんに頼んだほうがよかったかな。

「だ、大丈夫ですから…そ、そのよろしくお願いします」


「お、おう」

エリスはボロボロの服を脱いで一糸まとわない全裸になった。俺は袖をまくってアイテムバックから石鹸とタオルを出した。ちなみに石鹸は俺が作ったみたものだ。花の香りを付けてあるからかなりいい匂いがする。お世話になってる研究所の人に配ったらかなり喜ばれた。

「いい香りです…フロランの花ですか?」

「お?正解だよ。一発で当てたのはエリスが初めてだね」

「えへへ、あの花の香りは好きなので」

泡を立てながら桶に水魔法で水を入れる。さらに温度を調整してお湯にしておく。水だと冷たいからな。地味に調整するのが大変なんだよなこれ。


「あの花の香りは優しいから俺も好きだよ。よかったらこれをあげようか?いくらでも作れるからね」

「本当ですか!ぜひお願いします!」

「わかったよ。体を洗うね」

「う…は、はい」

体を背中から洗っていく。腕に足と洗いながらふと首にかけてるネックレスがちょっと気になった。指輪がついていたけどあまり詮索しないほうがいいか……真理の瞳で鑑定できないなんて初めてだな。まだまだ修行が足りないのかな。


「ほいっと…前は」

「自分で洗いますから大丈夫です!」

「お、おう」

すごい剣幕だったな。いや、デリカシーがなさすぎだったな。子供でも女の子だからな。さてと頭も洗ってあげないとな。長い髪を優しく洗っていく。にしてもすごい泡だな。この泡の量だけどうしようもなかったから仕方ないか。


「ふぅ……」

……子供だよな?妙に色っぽいんだけど。てか最近の子供って発育がいいんだな。

「ちょっと目を閉じてね~流すよ」

「はい」

お湯をかけて泡を流していく。うん、やっぱり奇麗だな。浄化魔法である程度奇麗にできるけどやっぱり洗ったほうがいいな。金髪に艶がでていい匂いがする。触り心地もサラサラしていて気持ちいい。ずっと触っていたいくらいだ。


「うん、奇麗になった」

髪を風魔法で乾かしながらタオルで拭いていく。魔法って本当に便利だな~……悲しくなってきたぞ。

「レンちゃんこれ頼まれていた服よ」

「お、ありがとうございます」

「着替えは任せて~もっと可愛くしちゃうから楽しみにしてて」

「ありがとうございます」

「お金は気にしなくていいので可愛くしちゃってください」

俺は邪魔にならないように店内に戻った。



しばらくするとおばちゃんが店内に戻ってきた。

「おまたせ!可愛くしてきたわよ~」

「ありがとうございます。ってあれ?エリスは?」

「あらあら、そんなところに隠れていないでレンちゃんに見せてあげなさいな」

「うう…」

しぶしぶという感じにおばちゃんの後ろから出てきた。

「おお、可愛くなったじゃないか」

髪は艶がある奇麗な金髪で服はフリルが付いた水色ワンピースだ。胸元には青色のリボンをつけてあってクール系みたいな雰囲気になっている。


「うん、可愛くなってるじゃないか。よく似合っているよ」

「あ、ありがとうございます」

顔を真っ赤っかにしてお礼を言ってくれた。やっぱりこういうのは恥ずかしいのかな?

「あのお金…」

「お金は気にしなくていいよ。こう見えてお兄さんはお金持ちだからね」

「あらあらレンちゃんは太っ腹ね~でも、お代はいらないよ」


「え?でも」

「いいからいいから!私達はレンちゃんにたくさんお手伝いしてもらったからね。これくらいはさせておくれよ」

あまり厚意をお断りするのも悪いからここは甘えさせてもらうか。

「「ありがとうございます!」」

「うんうん、また来ておくれよ」

「はい!」

俺達は店を出て大通りを歩いていた。途中で約束したステータスカードの内容を見せてあげると妙な顔をして「本当に勇者様?」って聞かれた。そんなこんなで俺達は屋台の食べ歩きをしていた。ただ行く先々で俺のことを知っていてかなりサービスされた。そんなに役に立つことをした覚えがないんだけどな。一通り回ったところでエリスちゃんが話しかけてきた。一応、ステータスはこうなってます


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西城 蓮  年齢:17歳 性別:男

Lv.10

職業:契約者

種族:人間

称号:召喚者、精霊の寵愛、妖精の寵愛、妖精マイマスター

加護:魂の盟約、火大精霊の加護、真理の探究者

固有技能:<共感>、<具現化>、<真理の瞳>

技能:契約、隷属術、全属性耐性(微)、全属性適正(微)、無属性適正、火属性耐性、精霊魔法、顕現、演算、索敵、隠密、料理、栽培、裁縫、調合、書記、復元、細工、大工、設計、鑑定、鍛冶、錬成、錬金、付与、我流格闘術、言語理解


[契約]大妖精フィーリア+全属大妖精


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「それにしてもお兄さんは皆さんに信頼されてますね。なかなかできることじゃないですよ」

「そんなことないよ。皆も僕と同じくらい信頼されてるさ」

「勇者としては信頼されているでしょうけど他の人は人として信頼はされていないんですよ。もっと誇ってもいいと思うな」

そういって笑顔で見上げてきた。その表情を見ているとなんだか気恥ずかしくなって思わず顔をそらしてしまった。

「フフッ」

「…ありがとう」


「ガロ谷で子供達を助けたっていうお話をいつか聞かせてくださいね」

「よく知ってるね」

「歩いていると聞こえてきましたから」

「それもそうか……そろそろ時間も遅くなってきたな。最後に俺のお気に入りの場所に行ってもいいかな?」

「いいですよ。時間がもったいないですから早くいきましょう!」

「お、おう」

そういって目的に早歩きで向かった。



目的地に到着するとエリスが聞いてきた。

「ここって城壁ですよね?どうするんですか?」

「そうだよ。ちょっと待ってね。おーい、おっちゃーん!」

「おうよー!また来たのか?」

すると兵士の人が出てきた。


「いつもの場所に行きたいんですけど1人追加でも大丈夫ですか?」

「ん?そっちの嬢ちゃんか?って!あっああ別に大丈夫だ。ほら上に上がっていいぞ」

急に驚いたけどなんか納得したらしく上に上がるのを許可してくれた。

「ああ、いつも言ってるけど落ちんなよ?特に子供を連れてるんだ絶対に怪我とかさせんなよ?」

すごい念入りに言ってくるけどまあ、当然かな。子供は危ないだろうしな。


「わかってますよ。ではお邪魔します」

「お邪魔します」

2人で城壁の中にある階段を昇っていく。

「ねえお兄さん。この上に何があるの?」

「見ればわかるよ。この時間だとちょうどのはずだから。」

そういってると屋上に着いた。すると

「わああぁぁ~~~、すごくきれい!」


そうちょうど夕焼け時刻で太陽が沈んでいく光景がここからだとよく見えるのだ。

「だろ?ここがお気に入りなんだ。俺の世界でも同じ光景が見れるんだ。朝日が奇麗な場所もあるんだよ」

「そうなんですか!どこで見れますか?」

「あ~ごめんね。お城からなんだ」

「そうなんですか。仕方ないですね」


そのまましばらく眺めていると元の世界ことを思い出してしまった。兄貴や姉ちゃんは元気かな…

「元の世界のことを考えているんですか?」

「…そうだよ。家には兄貴と姉ちゃん、後はペットのシロがいるんだ」

「やっぱり帰りたいですよね」

「ううん、今はそんなことないよ。そりゃあ最初は帰りたいと思ってたけど無理なものは仕方ないからさ。それにここに来たおかげで気づけたこともあるからさ」

「でも」

「エリスが気にすることじゃないよ。町の人と仲良くなれたし、こうやってエリスとも会えたんだ。こんな素敵な出会いをくれた神様には感謝しているよ。そんな悲しい顔より笑ってくれると嬉しいな」


そういうと最高の笑顔で微笑んでくれた。うん、やっぱり笑顔が素敵だ。

「ありがとうございます。私の勇者様! 約束してください。戦いに行っても無事に帰ってきてまた私と遊んでください」

「こんな俺でよければ喜んで」

夕陽を背景に小指同士を絡めて約束の指切りをする。

『---を達成』


「さて、そろそろ帰りましょう。お父さん達も心配しているでしょうから」

「そうだね。どこまで送ればいいかな?」

「お城の大通りまでで大丈夫です」

「了解、じゃあ失礼して」

「わわっ」

エリスをお姫様抱っこして俺は城壁から空に向かって飛び出した。靴に付与した『天駆』を使って足場を作りさらに高くジャンプする。天駆はどんな高さでも無傷で着地できるし、足場にするとジャンプ力がかなり上がる便利な技能だ。ちなみに全力で踏み込んでも地面には衝撃が一切伝わらないから屋根の上でも遠慮なく使える。


「わああ! 風がすごく気持ちいい! 空を飛んでる!」

首に手を回してしっかりと捕まりながら楽しそうに周りを見渡している。初めてだと皆反応は同じだな。しばらくすると目的のお城が見えてきた。ここらへんだな。

「降りるからしゃべらないでね。舌噛むよ」

「はーい」

一応、人目が少ない場所を選んでゆっくりと下に降りていった。


「よっと、ここからなら大丈夫かな?」

「はい、大丈夫ですよ。送って頂きありがとうございます」

「これさっき言ってた石鹸だよ。このポーチもあげるよ」

「これってアイテムバックですか?」

「うん、俺が作った小さめの奴だけどね」

「ありがとうございます。あのちょっとここ見てもらってもいいですか」

「ん? なにか変なところあった?」

俺がポーチを確認するために屈みこんだところを狙ったんだろう。頬にキスをされた。

「フフッ、これは今日のお礼です。それではまた遊んでください! バイバーイ!」


いきなりの不意打ちに俺は頬を抑えていた。

「まったく…ま、でも悪くないな。こちらこそありがとう」

もう見えなくなった小さな背中にお礼を言って俺も帰路についた。



一方そのころ王都から離れた砦では兵士たちが大騒ぎをしていた。

「おいっ! 一刻も早くこのことを王都へ知らせろ! ここにいる戦力では足止めしかできんぞ!」

「はっ! 伝令を回せ!」

「くそっ、なんでオーガどもが進行してきているのだ」

そこにはオーガ、オーク、ゴブリンが隊列を組んで進行してきているのが見えていた。進行してきた先には他の砦があったはずだ。なのになぜ知らせがなかった?

「なにかの陰謀が動いているそんな気がするな」

俺達を飲み込む闇はもうすぐそこまで迫ってきていた。

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