宗司とアトリア
次の更新は11月12日です。もうちょっと細かくしたかったのですが後日談を作るということで勘弁してください。どんな甘い話を書いてやろうかな。あ、他のヒロイン達の話も書かなきゃ…
「で、おまけさん何があったんですか?」
あれからアトリアさんに連れられて人通りの少ないところに来ていた。アトリアさんは途中で買っていた串焼き肉を食べながら聞いてきた。
「そのおまけさんっていうのやめてくれない?」
「嫌でしたらさっさと話す!うじうじしてるのは嫌いなんです。次は"ウジムシ"って呼びます」
「へいへい」
俺はさっき起きたことを話しているとアトリアさんの顔が少しずつ般若になっていくような感じがしていた。今食べている串焼き肉を食べ終えると呆れたように言ってきた。
「なるほどなるほど、つい自分の不安を相方にぶつけてしまっていたたまれなくなって逃げてきたと?」
「あ、いやまあ、そうです」
「要するに自分の判断で死なせてしまうのが怖いし、自分は何もできないのが悔しいですか」
俺は無言のまま次の言葉を待った。
「バカですか?」
返ってきた言葉は意外だった。無視されるかひたすらに罵倒されるのかと思ったが。
「あのですねおまけさん。おまけさんは指揮官でしょ?戦えるわけがないでしょうが。自惚れるのも大概にしてください」
「それもそうだが」
俺の言葉を遮ってアトリアさんは続ける。
「だったらおまけさんのできることは作戦を立てることだけでしょう。それに騎士を死なせてしまったのが俺のせいですって?大馬鹿ですね。騎士は"民を守るのが信念"です。仕事とも言いますけど…オホン、民を守るために命なんて惜しくないという覚悟をもって戦いに挑んでいます。その覚悟を踏みにじる気ですか?どうしても嫌だというなら考えればいいでしょう。その足りてないであろう頭を使って誰一人として死なせないための作戦を!あなたも"覚悟"をもって命令するべきです。もし、死なせてしまったとしても死んでしまった人の信念をあなたが背負っていけばその騎士は死んだことになりません。あなたの心に生きているんです。だから今は悩むよりもすることがあるでしょう?」
初めてだった女の子にここまでボロクソに言われるのは…まるで頭を鈍器で殴られたような衝撃だった。アトリアさんはベンチを立つと少し前に歩きつつ続けた。
「でも、悩んでいるおまけさんはあたしは好きですよ。そうやって悩めるってことは騎士たちのことを…私達のことを大切に想っていてくれているってことですから」
そう言って振り向いて俺に微笑んでくる。その瞬間、鼓動が高まるのを感じた。
「ん~?もしかしてあたしに惚れちゃいました?」
「え、いや」
急に核心を突かれてどもってしまった。
「照れちゃって可愛いですね~このこの~」
「指でつつくな!」
「どうやら元気が出たみたいですね。じゃあ、この後は何をすべきかわかりますよね?おまけさん♪」
「まあな…ありがとうアトリアさん」
「なら急ぐ!ほれほれ急いだ急いだ。あ、そうだこのお礼はまたいつかしてくださいね」
「お、おうよ」
俺は走って目的の人物がいるであろう場所に向かった。
「いい顔になったじゃないですか"友人さん"」
アトリアは密かに宗司の評価を上げながら帰路についた。
「…もしも自分でも気づいていない気持ちに気づけたのなら"親友さん"に格上げですね」
俺は走りながら初めての気持ちを整理していた。なんでこんなにドキドキするのか、なぜ蓮にきつく当たってしまったのか…そうか、そうだったのか
「俺は蓮に嫉妬していたのか」
いや、正確に言えば羨ましかったのかもしれないな。俺は戦うことができない職業だが無視できないほどに便利な固有技能を持っている。だから差別もされずに優遇されている。
でも、蓮は努力しなければ何もできない。クラスで一番苦労しているといっても過言じゃないくらいだ。さらに差別までされている。それでもめげずに頑張り続けたおかげでとうとう銃まで作り出した。おまけに技能まで大量に取得している…戦闘系じゃないけど。そんなあいつが羨ましかった。努力で…自分の力で道を切り開いていけるのが。
そんなあいつに対して俺はどうだ?誰かに頼らなければ身を守ることさえできない。誰かがいなければ何もできない。そんな無意味な俺が嫌だったのかもしれないな。なんだ、わかってしまえば簡単じゃないか。
「そっかそっか!俺って大馬鹿だな」
走りながら大声で笑う。道行く人になんだこいつという目で見られるが気にしない。
「そういや、アトリアさんのお礼はどうしようか…こういう時こそ蓮に相談するか!」
妙にすっきりした気分で蓮がいるであろう寮に全力で走る。胸の奥にともった初めて感じる熱さを感じながら。