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異世界ネコ歩き  作者: 吉田エン
シーズン2
20/24

第十回 長靴をはいたネコ(後編)

 とりあえずプスさんがご主人から長靴をもらわなければ話が進みません。それって何とかなりそうですかね……プスさん、ご主人はあなたが話せるって知ってるんですか?


「いやぁ、普通ネコは話せねぇからな……おいらもあいつの前で喋ったことはねぇが……」


「とりえあえずやってみるしかないじゃん?」


 うう、フレイア様は相変わらず行動あるのみだなぁ。お、あちらの小汚い……失礼、薄汚れた青年がプスさんのご主人ですね。木の切り株に座り込んで、これからどうしたもんかと頭を悩ませている様子です。そこにプスさん、とことこと近づいていくと、青年は顔を上げて話しかけました。


「なぁプス、これからどうしたもんかなぁ。もうおまえを食って皮で靴でも作るくらいしか方法はないんだが」


 げっ、なかなか怖いことをさらっと言います。怯えたプスさんは身を引きつつ、応じました。


「な、なぁご主人、色々大変だと思うが、ここはいっちょ、おいらに任せてみねぇか?」


「任せるって、何を?」


 ……あれ、全然驚かない! その様子にプスさんも、おずおずと尋ねます。


「い、いや、ご主人、おいらが喋っても驚かねぇのかい?」


「おまえは賢いネコだと思っていたからね。話すくらいするだろうと思っていた」


「いやいやいやないでしょそれ!」


 いやいやペルーさんは黙っててください!



◇ ◇ ◇



 何とか計画通り、ご主人から長靴と袋をもらうことには成功しました。プスさん、相当苦労しながら靴に足を突っ込もうとしています。ん? ペルーさん、また何か?


「いやいやおかしいじゃんそれ。どうしてネコが履けるような靴を持ってんの? どんな靴だよそれ」


「餓鬼ん頃の靴だっつってたぜ? まぁ何でもいいじゃねぇか、とりあえず履いたが、これからどーすんだ? おいら狩りなんかしたことねぇんだが」


 えっとね、その袋に何か餌を入れて、それを抱えて死んだふりをするんです。すると鳥や獣が近づいてきて、袋の中の餌を食べようとします。そこでプスさん、ガバッと袋を閉じて絞め殺すのです!


「いやいやそんなの上手く行くはずがないじゃない!」


 そうですよねペルーさん……私もそう思います……


「まぁいいさ、とりあえずいっちょやってみるか」


 うう、すいませんプスさん。とりあえず森の中のその辺に寝っ転がって死んだふりを……お、意外と小鳥とか近づいてくるぞ? これはもしかしたら上手く行くのでは?


「やーっ!」


 あぁ、勢いよく袋を閉じましたが逃げられてしまいました。今度こそ!


「うりゃーっ!」


 むぅ、駄目です。


「とりゃーっ!」


 ひょっとして叫ぶから駄目なのでは?


「……!」


 関係ないか……


「あー、畜生頭にきた! こんなの上手く行くはずねぇじゃねーか! もういい、これでも食らいやがれ! ネコビーム!!」


 ぎゃー! プスさんの目から、強烈な光線がほとばしりました! 木々をなぎ倒し、枝を焼き切り、大小様々な鳥や獣を次々と仕留めていきます! ちょっとプスさん、落ち着いて!


「……はぁはぁ、もうこんくらい捕れば十分だろ」


 なんてことでしょう。私たちのいる一角が、まるで戦争でもあったかのような有様です。てか何なんですかネコビームって……


「ネコなら誰だってビームくらい出すだろ」


「出さねーよ!」


 ペルーさんが容赦ないツッコミをしていますが、プスさんとフレイア様は喜々として獲物を集めています。鳥に鹿に猪と、大猟ですね。


 さて、獲物を抱えたプスさん、近くにある王様のお城に向かいます。しかしそんなに簡単に謁見できるもんなんでしょうか。少し心配していましたが、王様と言ってもそれほど凄い方じゃないみたいですね。地方領主といった感じらしく、小ぶりなお城は百人もいれば包囲できてしまいそうです。実際周囲には市場が出来ていて、あまり兵隊さんらしき人も見かけられません。


 その市の真ん中に人だかりが出来ていますが、あれが王様でしょうか。簡素な冠を被った初老の方で、傍らの果物を食べながら、臣民の陳情を直接聞いているようです。


「これなら直接、謁見出来るが……あれ、王様って言えるのかな……せいぜい部族長くらいだと思うけど……」


 いやいやペルーさん、ここはこういう時代なので……っていうか、ペルーさんはどうやってここに来られたんですか?


「物語のネタ集めのために旅をしているんだが、すっかり道に迷ってしまってな。ここは何処なんだ? ドイツか? それともポーランド? 農民どもの言葉もなまりが酷くて、良く聞き取れんのだが。きみはイワノヴァといったか? とするとここはルーシか?」


 あぁ、なるほど。良くわかっていないみたいだし、ここはそのままにしておきましょう……さてそうこうしているうちに、プスさんは陳情の列に並びます。さすがに大きな鹿を積んだ荷車を引いているので、皆さんの注目を浴びていますね。


「いやだってネコが二本足で立って荷車引いてるんだよ? 普通注目を浴びるでしょ」


「国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しゅう」


 おっとプスさんの番です。やはりネコが膝を折って頭を垂れているのは異常なのでしょうか。衛兵さんも王様も目を丸くしています。


「なんと大きな鹿であることよ。一体何処で捕った」


「王様、突っ込むのはそこじゃないでしょ……」


 ペルーさん、もうそこは諦めましょう。私も諦めました。



◇ ◇ ◇



 さて、プスさんは沢山の獲物を小分けにして王様に献上し、随分覚えも良くなったようです。当然その際には「カラバ侯爵からの贈り物です」と言い添えるのを忘れません。


「いや普通、聞いたこともない侯爵から贈り物が届けられたら、血縁関係とか尋ねるでしょ普通」


 ペルーさん、きっとここはそこまで血縁支配が及んでいない地域なんですよ……


 そしてようやく、王様が地方巡幸する日となりました。プスさん、ここからが勝負です。なんとかして王様とご主人を出会わせなくては。


「んで、どうすんだい? 侯爵ったってあいつ、ぼろきれみたいな服しか持ってねぇぜ?」


 そこはね、こうするんです。ご主人を馬車の進路上にある川で水浴びさせてください。そして王様が通りかかったら叫ぶのです。『カラバ侯爵が盗賊に襲われ、川に落とされた!』すると王様が助けてくれて、立派な服も貰えるはずです!


「まぁそれは順当っちゃ順当な手かな」


 でしょうペルーさん。ここにはツッコミどころはありません!


 さてご主人を川に連れてきたプスさん、事情を説明して水浴びさせようとしていますが……うーん? 何か上手く行っていないようです。どうしたんでしょう。え? ご主人は泳げないからと拒否しているようです。確かに溺れているのを偽装しなければなりません、そこそこ流れが速くて深そうな川ですが……うわ、王様の馬車が近づいてきました! さっさと川に入れないと!


「なによ面倒な男ねぇ。プスちゃん、蹴り落としちゃえ!」


 いやいやフレイア様、さすがにそれは……ってうわぁ! まるで聞こえていたかのようにプスさん、ご主人の服を引っぺがして川に蹴り落としてしまいました! どうやらご主人が泳げないのは本当のようです、あっぷあっぷと完全に溺れています!


「大変だー! カラバ侯爵が盗賊に襲われて、川に落とされたー!」


 明らかにプスさんが盗賊ですが、それは由としましょう。すぐに気づいた王様、手下を差し向けてご主人を救出します。そして衣装係に命じると、立派な服を分け与えてくれました。川に入ったおかげで汚れも取れて、随分男ぶりも上がったようです。身支度整えてから王様に誘われ馬車に同乗すると、そこには見栄え麗しい王女様がいました。


「おう、あの王女とご主人をくっつけりゃいいんだな? んで、こっからどうすりゃいいんで?」


 えっとね、プスさんは馬車の進路に先回りして、農民さんを脅すのです。『王様が来たら、ここはカラバ侯爵の領地ですと言え』ってね。それを繰り返していくと、王様は『カラバ侯爵は随分広い領地を持っているのだな』と感心してくれます。ん? ペルーさんまた何か?


「いやだって相手はネコだよ? 脅されたって別に怖くもなんとも……」


「馬鹿野郎、おいらが凄んだら結構おっかねぇんだぜ?」


 早速プスさん、そこらで芝刈りをしている農民さんに近づいていきます。


「おう、そこの農民ども! そろそろ王様が来るから、そしたら『ここはカラバ侯爵の領地です』とお答えするんだぞ! わかったか!」


「……ギャー! ネコが喋った!!」


 何かむっちゃ怯えてますね。


「何それ」


 私もよくわかりません。



◇ ◇ ◇



 さぁ計画もクライマックス、なんとこのカラバ侯爵領だと偽った一帯は全て、人食い鬼の領地だったのです!


「人食い鬼って言われてもね……さっきも言ったけど、なんでそんな危ないのが隣の領地にいて、王様気づかなかったの?」


 いやそれねペルーさん、私も不思議だったんですけど、この世界……じゃない、この付近は相当統治能力が低い感じですよ。なにせ王様が直接陳情を聞いてるくらいですから。


「確かにねぇ。検地も出来てないみたいだし、隣村の事も良くわかってなかったのかな……でも人食い鬼って、そんなのいるはずが……」


 た、確かに……そこのオチはどうやって付けたものか……あ、すいませんそこの農民さん、実際の所、ここってどなたの領地なのですか?


「どなたって、人食い鬼だよ……元々ここを治めていた男爵が食われちまって、これから毎月一人ずつ、旨そうなヤツを献上しろと……それでもう何人も食われちまってるんで……」


 えーっ。ほんとに?


 住民さんのお話からすると、人食い鬼がいるのは確かなようです。おや、あちらに随分豪奢なお城が見えますね。あれが鬼が住むお城でしょうか。とにかく向かってみることにしましょう。


「けどさ、人食いってことは、ネコは食われないのよね?」


 あっ! フレイア様鋭い! そうかそれで杜撰な作戦でも成功したのか。


「杜撰って、どういうことなんだ?」


 えっとねプスさん、あのお城で鬼にあったら、こう言うのです。


『あなたほどの者は、よほど恐ろしい物に変身できるんでしょうね』


 すると鬼は当然だと言い、ライオンに化けて脅してきます。そこでプスさんは、続けてこう言います。


『しかし大きくはなれても、小さなネズミなどには変身出来ないんでしょうね』


 そんなことはないとネズミに変身して見せた鬼! それをプスさんは素早く捕まえ、食べてしまうのです!


 ……ん? どうしたんですか皆さん黙り込んで。


「駄目に決まってんだろ、そんなの」


 そんな一斉に言わなくても!


 おっとそうこうしている間に、ご主人を乗せた王様の馬車が近づいてきます! 早急に何とかしなければ、王様もろともご主人も鬼に食われてしまいます!


「ったく、しゃぁねぇな。とりあえずお嬢ちゃんの作戦通り、やってみっか」


 さすがプスさん、なかなか男気溢れる方ですね!


 さて問題のお城は大きな堀があって、城門に向かって跳ね橋がかかっています。すっかり綺麗に整えられていて、こんなとこにほんとに人食いが住んでいるんですかね? なんかあちこちにドクロが転がって、カラスが鳴いているようなお城を想像していたんですが。


「だって鬼から奪って、自分の居城ですって嘘吐くんだろ? そんなら綺麗な城じゃないと駄目じゃん。だから穴だらけのお話だって言ってんの!」


 確かにペルーさんの言うとおりです。こんな所に鬼が住んでいるというのも解せないですが、一体どんな輩なのでしょう。


「たのもーっ!」


 プスさんが城門前で何度か叫ぶと、現れたのは……おお、鬼っぽい! 全身が骨張り、肌が灰色で牙を生やした獣人のようなお方です。


「はいはい、何でしょう。すいませんね、随分広いもんだから出てくるのに時間がかかって」


 鬼にしては、随分腰の低いお方ですね……プスさんにニコニコペコペコと頭を下げます。一方のプスさんは混乱した様子で、じっと鬼を見上げました。


「えっと、あんたが人食い鬼?」


「えぇえぇ、左様に呼ばれております。それでどういったご用件で?」


「い、いやぁ、何てことはねぇ、ちょっとこの辺のお偉い方に、ご挨拶でもと思ってな」


「左様でございますか。それはご丁寧に痛み入ります。どうぞ中に」


 うーん、どうも様子がおかしいですね。プスさんも頭の中にハテナマークが浮かびまくっている様子ですが、とりあえず促されるまま中に入ります。我々は小型ドローンを放って追跡しましょう。


 通されたのは大宴会場、もう二十人くらい座れるんじゃないかという長大なテーブルの上には、大変豪勢な食事が並んでいます。


「いやいや、これから友だちが遊びに来る予定でしてね、ごちそうを用意していたのです。せっかくですから貴方もどうぞ、先に始めましょう」


「そ、そりゃあありがてぇが。そういやあんた、なんで人食い鬼だなんて呼ばれてるんだ? やっぱ人を食うのか」


 プスさんの疑問に、鬼は大きく肩を落としました。


「えぇ、残念ながら我々の種族は人間を食べなければ生きていけないのです。しかし我々は、無闇矢鱈に人を食うことはいたしません。病や怪我で手の施しようのない方のみ、同意戴いた上で全身麻酔を施し、苦痛のない方法で処置させて戴いております。代わりに我々は高度な灌漑技術と生産性の高い農作物の種などを提供しており、いわば人間とは持ちつ持たれつという関係でして。現に我々がここを統治しはじめてからというものの、人口は既に二倍に増えております」


「ほんとか? なんか外の連中が言ってたことと、全然違うけどよ」


「それは彼らも、進んで鬼に身内を差し出しているとは言えないでしょう。だから我々も話を合わせているのです。我々が悪者になることでこの地方が平和に発展できるのならば、致し方のない事だと考えております。あぁ、くれぐれもご安心を。我々、ネコは食べられませんので」


 うっ、なにか面倒な話になってきました。


「こういう主義のある悪役って、一番扱いが面倒よね……」


 ペルーさんも、そう思いますか。


「ふん、こういう胡散臭いのは、さっさと始末しちゃうのが面倒ないのよ。プスちゃん、やっちゃえやっちゃえ!」


 あぁ、それはいかにもフレイア様らしいご意見ですが……さてプスさんの判断は如何に。何とかこの城を乗っ取らなければ、ご主人は詐欺師として牢屋送りになってしまうのは確実です。


 プスさんも悩んでいるようですが、結局元の作戦を実行することにしたようです。鬼に一歩近づくと、その全身をしげしげと眺めます。


「そういや外の連中に聞いたんだけどよ、あんた凄ぇ変身出来るんだってな。何か大きな物に姿を変えられんのか?」


「あぁ、我々の数少ない特技の一つでございます。ほら、この通り」


 おお、ドロンと煙に包まれたかと思うと、そこには巨大なライオンが! 吠えられたプスさんはびっくり仰天、家具の上に飛び上がりましたが、長靴をはいているものだから危なく転げ落ちそうになりました。


「な、なるほど、なかなか凄ぇ変身だな」


 ゴクリと唾を飲みつつ言うプスさん。さぁ、ここで勝負のネタです!


「けど大きくはなれても、きっと小さくはなれねぇんだろな。例えばネズミとかにはよ」


 ……! どうでしょう上手く乗ってくれるのでしょうか!? ライオンになっている鬼さんは僅かに俯くと、低く笑い始めましたが……さぁ、どう出てくる?


「くっくっく、どうしてネズミなどにならなければいけないのです。そんな事をしたら、貴方に食べられてしまうかもしれないじゃないですか。ひょっとして貴方、我々を潰しに来たのですか? であれば容赦しません」


 当然! 少しでも脳みそのある相手ならば、乗ってくるはずがありません! 残念!


 しかしなんて杜撰な計画でしょう。追い詰められたプスさんは、ぎりりと歯噛みしてライオンを睨み付けます。


「くっ、くそっ、こうなったらもう、あの手しかねぇ! 先手必勝、食らえネコビーム!!」


 で、出ました! 再びの必殺ネコビームです! そうです最初からネコビームで攻撃していれば良かったのです! 熱線をまともに受け、ライオンは大爆発! これは無事で済むはずが……むむっ! なんと爆発の煙が薄れていくと、そこには何のダメージも受けていないライオンが! 必殺ネコビームすら通じないとは、何という相手でしょう!


「くっくっく、こちらが何も考えずライオンになったとでも思っているんですか。ライオンはネコ科の動物。ネコビームが通じないのは常識です。そして同じネコ科になってしまえば、ネコを食べられるのもまた常識」


「そ、そんな常識、知るかー!」


 うわぁ、ペルーさん、落ち着いて!


 しかしプスさん、本当の絶体絶命です! このままでは本当にライオンに食べられてしまいます! どうしよう!


「もう、残る手はアレしかねぇ……逃げる!」


 はい、もう逃げるしかありません! 長靴を脱ぎ捨て、長い廊下をダッシュするプスさん! それを咆吼を上げながら追うライオン! しかしこれではストロークに差がありすぎで、あっという間に追いつかれてしまいます!


「あんま他の異世界には干渉するなってセバスチャンに言われてるけど、プスちゃんを助けるためなら仕方ないでしょ」


 フレイア様がすっくと立ち上がると……おお、右手のブレスレットが瞬く間に輪刀に変形しました! これは心強い! プスさん、なんとか門の所までたどり着いてください!


 さぁ、見る間に差が詰まってくるプスさんとライオン! そこはプスさん、巧みに角を曲がってライオンの速度を弱めます! そして見えてきました城門、プスさんが転がるように出てきたのに続いて、ライオンが来ます! さぁフレイア様、攻撃を……って、ちょっと待ってください?


 そうです忘れていました! 王様です! 丁度プスさんとライオンが飛び出してきた正面に、王様の馬車が停まっています! 泡を食った護衛の兵長、すぐに部下に命じます!


「ラ、ライオンだー! 総員矢をつがえ! 放てー!」


 降り注ぐ無数の矢! 猛ダッシュしていたライオンは、逃れることも出来ません! 哀れ全身に矢を浴び、砂埃を上げながら転がり……あぁ、遂に大きく鳴き声を上げ、倒れてしまいました。


「や、やべぇ、さすがに今回は死んだかと思った……」呟くプスさん。そしてはたと、混乱した風な王様が見下ろしているのに気がつきました。「あ、王様! すいませんお騒がせして。実は王様に珍しいライオンをご覧に入れようとしていたんですが、檻から逃げられちまいまして」


「なんと、するとこの城はカラバ侯爵の居城か!」


「は、はい、左様にございます」


 な、なにか良くわかりませんが、色々と上手くいったようです。上手く行きました……よね?



◇ ◇ ◇



 ここからはお話通り、カラバ侯爵は鬼の城を接収し、そしらぬ顔で王女様と結婚。プスさんもまた貴族に取り立てられました。


「しかし、めでたしめでたしとはいかねぇぜ」と、プスさんは渋い顔で。「こう言っちゃなんだが、鬼のヤツはわりと善政をしいていた。ご主人も上手いことやらないと、あっという間に一揆を起こされて首をくくられちまう」


 しかしフレイア様は楽しげに応じます。


「相変わらず頭が堅いのねぇプスちゃんは。いざとなったらお城の財宝集めて、夜逃げしちゃえばいいだけよ。政治なんて面倒なだけじゃん」


「ん。おう、それいい。早速夜逃げの準備しとくわ」


 さて、問題はまだ一つ残っています。あれからペルーさん、しつこいほどのツッコミもなりを潜め、渋い顔で唸ってばかり。うう、これには私たちの世界の命運がかかっているんですが、何とか面白いお話として納得してくれませんかね……?


「いやぁ、納得も何も、現実は小説より奇なりと言うし……あんな展開を見せられて、何か色々どうでも良くなってきた……最初にお嬢さんが言ってた計画の方が、ネコビームなんかよりまだ現実味があるし……そろそろ家に帰って小説書かないと締め切り間に合わないし……もう別にそれでいいのかなって……」


 そ、そうでしょう! じゃあ今回のお話は『長靴をはいたネコ』ということで是非!


「あ、でも未だに一個だけよくわかんないんだけどさ。なんでネコに長靴をはかせなきゃならなかったの? 何の役にも立ってないじゃんあれ?」


 え? う? そ、それは……えっと……ネ、ネコに長靴をはかせたら、格好いいからです!


「あー、なるほどねー……」


 どうやらそれで、ペルーさんも納得してくれたみたいですね。フレイア様が開いてくれたターミナスの先には、無事、元通りの私たちの世界がありました。色々ありましたが、貧乏でも何でも我が家が一番です!


 ミニッツテイル・イワノヴァの異世界ネコ歩きシーズン2! スペシャルな第十回は「長靴をはいたネコ」をお送りしました。果たしてシーズン3はあるんでしょうか!? それは私にもわかりませんが、またいつか何処かで、お会いしましょう!

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