新幹線の中で
今、ゼロと男は、向かい合うように新幹線の座席に座っている。
「・・・」
「・・・」
新幹線に乗って約三十分。一言も話していない。
二人とも、さすがに気まずさを感じていた。
ここで、ゼロのほうから行動に出た。
「なぁ。そういえば、あんたの名前は?」
「海音寺 カレンですよ。」
「カレン?もしかしてハーフ?」
「いいえ。純血の日本人ですよ。そういうあなたの本名は何ですか?」
そして、ゼロは即答した。
「俺の本名を呼んでくれる奴は、もういない。だから、俺に本名なんてなし、必要ない。そのまま、ゼロでい。」
そういったゼロの目には、薄く影を落ちていた。
「いえ。それは通り名でしょう。しかも、暗殺の。なんだか縁起が悪いです。」
「はぁ~~。名前なんて、どうでもいいだろ。」
その言葉を聞いたカレンは、意味ありげに言った。
「じゃあ、私が決めます。『海音寺 笑美』です。」
「えっ・えみっ!だと!?女みたいな名前じゃないか!!」
仮『笑美』は顔を、怒りと恥ずかしさで真っ赤に染めていた。
「クスッ名前『なんて』どうでもいいんでしょう?」
「うっ・・・」
自分が言ったことなので、ごまかすことも、撤回することもできなかった。
そうして、ゼロの名前は「海音寺 笑美」 となったのだ。