少年暗殺者Ⅰ
この話は、暗殺のことについて語っていたり、他にもいろいろなことを、知ったような口ぶりで説明したりとしていますが、それは作者自身の考えでありもしかしたら、不快な思いをされるかもしれないので、あらかじめご承知下さい。
それではみなさん、『天才学級』をお読みください。
ダっダッダッダッダッダッダッダッ
暗闇の中で、走る影が二つ。
その影はまるで、飛んでいるようだ。これは決して大げさな比喩ではない。
そう、二つの影は多種多様な屋根の上を、人間とは思えない速さで器用にも飛び移りながら、ある者は逃げ、ある者は追いかけている。
いったいどれほど走っていたのだろう。
追いかけられていた者が、足をいきなり止めた。
追いかけていた者もさほど、驚いた様子もなく足を緩やかに止めた。
「おまえは誰だ」
まだ、声変わりしきれていない少し低めの声が響いた。
「クスッ さぁ誰でしょう。」
少し楽しそうな声色だった。
そのことが、癪に障ったのか少年の声色は怒りを帯びていた。
「おまえ何なの?死にたいの?殺すよ?つーかしね。」
少年は、殺気を込めていった。が、男はにこにこと笑っていた。
「もう少し落ち着いたらどうですか?『暗殺者;ゼロ』ともあろう人が、暗殺の基本ともいえる冷静さを欠いたら、それはもう『暗殺』ではなくただの『人殺し』です。貴方は、ただの『人殺し』に成り下がるおつもりですか?」
「っ、五月蠅い!!だまれ!」
少年は図星をつかれたのか、ただただ相手を罵ることしかできなかった。
相手を罵っても無意味であり、いかに自分が愚かな行動をしているかはもちろん少年は理解していた。だが、その時の少年には何時もの冷静さも余裕も、持ち合わせていなかった。
だからだろうか、少年は暗殺者としてやってはいけないことをした。
ガンっ ダンっ
闇夜に、不釣り合いな鈍い音が響いた。
そう、少年は一対一の『殺し合い』を自ら、始めたのだ。
本来、暗殺というのはターゲットを誰にも気づかれず、隠密行動を駆使し迅速かつ、冷静に『殺す』ことだ。つまり、暗殺は一方的な『殺し』である。
『殺し合い』などもってのほかだ。そのため、少年は暗殺者としてのタブーを起こしたのだ。