物流の街 キブス 17
咲「は…!?」
困惑してしまう。預かってくれ?同じ姿?俺と同じ姿というのは…
ドラゴン「この子が貴女と同じ人間にしてほしいと望んでいるのです。私達は人間の世界に干渉は一切しない魔物。ですがこの子はあの女、貴女に何かを感じてしまったのでしょう。人間になりたいと思う何かが」
目を鋭くし俺に顔を近づける。次の俺の言葉次第ではかみ殺すとでもいわんばかりに。
ドラゴン「貴女がここの連中と同じことをするのであれば私は容赦なく貴女を食いちぎってあげましょう。…この子を大事にすることが出来ますか?」
ドラゴンの目を見つめる。その目は確かに恐ろしく金縛りにあったかのように全く身体が動かせない。けれど何故か嬉しさのような悲しさのような、親としての感情のようなモノがにじみ出ているような気がした。
ドラコ「ギャウ…」
小さく鳴いたドラコを見る。何を言いたかったのかは分からない。でも俺はその時ドラコがどうしたいのか何となくだけど感じた。
ドラゴンの方に振り向く。
咲「俺は確かにフラーフェを魔物から人間に変えた。あの時はそうするしか助けられる方法が無かった。今回はドラコがそう望んでいる。そう思うようになったのはきっと、ドレンと同じ世界を見てみたいからだ。アンタが感じている人間とは違う人間がいるって分かったから。それと多分…」
ちらっとドラコを見る。
咲「俺と一緒にいたいんだろ?」
本当に何となくだが俺と離れたくないということだけは分かった。
ドラゴンは動かない。先程からの威圧感も変わらない。だが諦めなのか悟ったのか
ドラゴン「変わらない…か。分かりました。この子の言う通りにしましょう」
たたんでいた翼を大きく広げ空へと飛び上がる。俺らには分からない言葉でドラコに話しかける。そして彼方へと消えていった。
ドラゴンの姿が見えなくなる。一呼吸おいて俺はドラコに最後の確認をする。
咲「…ドラコ、本当にその姿には二度と戻れないぞ?それでもいいのか?」
ドラコは悩む様子もなくすぐさま返事をした。
ドラコ「ギャウッ!!」
まるで早くしてくれと言わんばかりだ。
咲「…分かった」
気を集中する。フラーフェを変えたのは結構前の事でもあり不安があった。
魔物を無くす。イメージを固める。間違っても存在を消さないように。その時ふと何かがよぎる。ドラコと同じドラゴン。でも大きさは全く違う。先程の親ドラゴンと同じくらいの大きさだ。
集中しなおす。少しずつドラコが白く光はじめ辺りが目を開けられないほど眩しくなる。
光は少しずつ弱くなる。その中心にはエメラルドの様に光る長髪の女の子が横たわっていた。
ドラコ「ん…終わったの…?」
咲「ああ、終わったよ」
俺は顔を横に逸らしつつ答える。
またやってしまった…!!
ドラコは服を着ておらず裸の状態だ。何か着せるものはと聞こうにもジールも目を逸らしている。
お前もか!!そうツッコミたい気持ちを抑えミラドを見ると彼女は初めてフラーフェを見た時と同じように目をきらめかせている。
ミラド「…かわいい」
俺らは全く身動きが取れないのをいいことにドラコにすり寄っていく。
咲「ミラド、その子火を吐…」
ミラド「…それを早く言いなさいよ」
遅かったようで既に顔と前髪少々焼け焦げたらしい。
ドラコ「おねーさんより、おかーさんの方がいい!!」
そう言うと俺に抱きついてくる。
咲「おかあ、さんっ!!?」
ドラコ「だって私のおかーさんが貴女の事をおかーさんと呼びなさいって。おかーさんはおかーさんじゃないの?」
あのドラゴン最後の最後俺に嫌がらせを仕掛けたな…!!
咲「あのな、今こんな姿してるけど本当の俺は男なんだよ?」
ドラコ「そーなの?」
何とも純真無垢な子なんだろうか。
ガルク「良かったねー、ねーおかーさん」
ドラコの隣に胸糞悪い笑顔のアイツがいた。