物流の街 キブス 10
…何かが顔に当たる。頭が働かない。視界もぼやけている。
また何か顔に当たる。視界が少しずつ鮮明になっていく。
ぼやけた視界には何か一定のリズムで音が鳴る物、人の身体が映され所々光っている物、事細かに数字が表示されている様なもの。まるで現代の機械と似たようなものが並べられている。
手や足を動かそうにも動かない。動かそうともがくと髪の毛を誰かに掴まれ無理矢理頭を上げさせられる。
???「やっと起きたか!ほら、しっかり目を覚ませ!!ほら!!!」
目の前にはカイがいた。
咲「カイ…?ここは…?」
カイ「気絶されたら研究が出来ないじゃないか!!」
咲「がっ…!?」
突然体に激痛が走る。体に電流の様なものが流れたような。
視界と頭が一気に醒める。
同時に思い出す。カイが俺らを裏切っていたことも。
咲「カイ、この…。うぁっ!?」
また全身に痛みが走る。
カイ「全く。何故研究に協力的にならない?この力がどれほど素晴らしい物か君には分からないのか!?」
何度も、何度も何度も身体に激痛が走る。段々と鼻に肉が焼ける様な臭いがしてくる。
???「まだそんな原始的な方法で実験しているのか?だから君は部下に慕われないんだ。だいたい――」
奥から年老いた老人の声が聞こえてくるが、意識が遠のいていきまた途切れた。
???「――キ!――きて!」
誰かの声が聞こえる。頭に何重にも響いていく。どうやらまた気絶したらしい。体を揺らされているのか、それともまたカイに何かされているのかさえ判別がつかない。そんなぼんやりとした頭は胸の痛みで覚めていく。
咲「うっ…」
段々とぼやけていた視界が元に戻っていく。同時に聞こえていた誰かの声もハッキリと聞きとれる。
フラーフェ「…キッ!!ねぇ、起きてよサキッ!!」
涙目になりながらずっと身体を揺らしていたフラーフェが視界に入った。
咲「フラーフェ…?」
声に気づいたのか目を見開ている。安堵感なのか溜め込んでいたものが溢れ出したのかフラーフェは顔をクシャクシャにして目から大量の涙がこぼれ堕ちていく。
フラーフェ「サキィ…!!もうっ…死んじゃったのかと…思っ……」
最後まで言えず泣きついてくる。後ろにはドラコも一緒にいた。
ドラコ「ギャウギャウ!!」
フラーフェ「…うん、そうだね。まだ終わりじゃないもんね」
涙を拭いつつフラーフェは俺の手足の枷を外していく。
咲「フラーフェ…一体どうやって…」
確かドラコとフラーフェは牢屋に閉じ込められていたはずだ。
フラーフェ「ドレンさんのおかげだよ。ね、ドラコ」
ドラコ「ギャウ!」
そう言ってフラーフェの手にあったのは鍵だった。
フラーフェ「昨日私達で街の広場に行った時にドレンさんが言っていたでしょ。あれのおかげ。あの話に矛盾があって、それで気づけたの」
そういえば確かにドレンさんは言っていた。『空が暗い時、日の光が入らないような寒い時』と。オブリテの花はそこの気温で花の色が決まる。あそこに咲いていた花はオレンジ色だけだ。それにこの街の気温は一定になっている。つまりはあの言葉はこのことを指していたんだと今になって気づく。
フラーフェ「私たちが閉じ込められた牢屋が少しだけ寒くって。それでピンときたの。ドレンさんが言っていたのはここの事じゃないかって。もしかしてと思ってドラコをさすってあげたら鍵を口から出してくれたの。ドラコには辛い思いをさせちゃったけど…良し!外せた!」
外れると同時に俺は地面に両膝をつく。カイにやられたのがかなり響いているのか歩くことすらままならない。
フラーフェが自分の首に俺の腕をまわす。
フラーフェ「サキ、大変だろうけど頑張って!!」
少しずつ何とか歩く。とにかくここから逃げなくては。




