ギルド『ハブドブレイブ』 16
咲「…ッはぁっ、はぁ」
何とか立っているものの、最早気力でどうにかしているだけだ。
ガルクの一撃一撃が重い。あと一発でもくらったらもう立つことは出来なさそうだ。
ガルク「あーあ、つまんね。魔法の扱いはまあまあだが、接近戦が全くダメだな。使い物にならん」
…悔しいがガルクの言う通りだ。今まで神様がくれた力でどうにかこうにか修羅場をくぐり抜けて来たが今回のは魔法では対処できない強敵のようだ。
咲「親父…」
ふと、親父がいつも言っていた言葉を思い出す。
――咲、その力を誰の為に振るう?それを常に考えることだ――
誰の為に…。
頭が冷静になっていく。
息を整え、静かに戦闘態勢に入っていく。
やるしかない。効く相手なのかどうか分からないが。
ガルク「…何だ?」
咲「…行くぞ」
ガルクに駆け寄る。
ガルク「ようやく、突っ込んできたか」
ガルクが剣を構える。
縦に振って来たのを確認しギリギリの所で身体をひねってかわす。
ガルク「うぉっと!!?」
寸での所で回避される。
ガルクが俺から距離をとっていく。
ガルク「剣の練習とは言ったものの、そうかやっぱりな」
ある程度は見透かされてはいたのか。
咲「どこらへんで気づいてた?」
ガルク「そーだなぁ…ギルドでの初対面の時だな。今のでようやく確信は持てたが。お前、拳闘士だったか」
こちらの世界ではそういう言い方なのか。
俺のいた所では拳闘士よりも空手といった方が分かりやすいか。
そもそも俺は剣とかの近接が出来ないのではなく剣というモノに慣れていなかっただけだ。これだけ魔法が使えるならそんなものは不要だとは思っていたのだが。
咲「今までのしてきたことを倍で返してやるよ」
もう一度戦闘態勢に入る。
ガルクに狙いを定める。しかし、
ガルク「…はい、本日はここまでー」
手をパンパン鳴らす。つい呆気にとられてしまう。
ガルク「実践とはいったがこれ以上はもういいわ。お前がどういう系統なのか知りたかっただけだし。んじゃお疲れー」
歩いて去っていく。呼び止めるものの続きは明日の一点張り。
不完全燃焼のまま、納得のいかないまま俺はフラーフェと一緒にバーグの屋敷へと帰るしかなかった。




