ギルド『ハブドブレイブ』 2
無視し続けること数分後、アレは端っこでブツブツと独り言を呟きながら涙の水たまりを作っている。
流石にあのままだとこちらの罪悪感が募るので一応名前だけ聞いておく。
だが聞いた直後、後悔した。酷く後悔した。先ほどの落ち込みぶりは何処へやら。
待ってましたと言わんばかりに勢いよくテーブルにの上に乗り、うざったらしい笑顔をしながら語り始める。
???「フハハハハハハハハハッ!!!よくぞ聞いてくれたな!!俺の名はガルク=レイズ!!この街の、いやこの世界で最高のイケメン!森羅万象において俺を超えるものはいない!!俺こそ最強の戦士だ!!どうだ、驚いて声も出ないだろう!?」
咲「…」
ガルク「そうだろう、そうだろうとも!!さぁ俺を崇め、奉るが良い!!」
…何だコイツ。関わったらいけないんじゃない。目を合わせるのもいけないくらいの馬鹿だ。
火の魔法を放とうとするが、ジールが制止する。
ジール「落ち着け。確かにアレは頭がおかしいが、このギルドのマスターだ」
ジールの言葉に耳を疑う。あれがギルドマスター?
ガルク「おうよ!俺がバーグさんの一番弟子よ!お前がサキだな?話は聞いてるぜ。…へー、じゃあこのピンクの髪の子が――」
ひょいっとテーブルから降りフラーフェに近づく。
咲「触るんじゃねぇ!って…あ」
フラーフェに触ろうとしたからつい手が出てしまった。
勢いよく吹き飛ぶ。転がって転がって壁に激突してようやく止まる。
ガルク「サキちゃんよぉ…そりゃ、ねー…ぜ…」
一言いうと力尽きた。
咲「…安らかに眠れ」
ガルク「いや、死んでないからね!?」
ひょこっと起き上がる。全力で殴ったつもりなのだがまだピンピンしている。
咲「まだ、殺り足りなかったか」
ガルク「サキちゃーん!?魔法じゃ流石に真っ黒こげになっちゃうよ!?もう変に近づかないから!!近づかないからぁ!!」
???「…私の夫を可愛がるのも良いけれど、そこまでで止めてもらえるかしら?」
後ろから声が聞こえてくる。
???「やけに騒がしいと思ったらこれは一体どういう事かしらね?」
カレンがアワアワと慌てふためいている。他二人も表情が引きつっている。
咲「コイツがフラーフェに色目使って寄って来たからな。ちょっとお灸をすえていた」
???「あら?そうなの?…ねぇ、ガルク?」
あ、この人怒らせちゃいけない人だ。般若が見える。
ガルク「いやぁ、そんなこと…いやいやいや!!違う!?違うからね!?ちょ、ちょっと待って!話を最後まで聞いて!?ね!?ちょ、ちょっとだれかああぁぁぁぁぁ…」
受付の奥の部屋に連れて行かれる。数分後、戻ってきたのは先ほどの女性だけだった。
???「迷惑をかけてごめんなさいね。…あなたたちがサキとフラーフェね。バーグさんから話は聞いているわ」
白い白衣のようなものを着た女性は話す。そういえばさっき夫って…
???「私はガルクの妻のマキ=レイズ。よろしくね」