魔法の都市 マライブ 11
咲「…すげぇ」
一面石畳。よく見るファンタジーの世界だ。出店もあれば家の一階を店として開いている所もある。ただ、よくある武器屋、防具屋といった店は見当たらない。
ジール「それはそうだ。ここは魔法の都市、武器屋なんぞなくても魔法で防衛は出来るからな」
自慢げに話しているが、そのジールの腰には剣が備えられている。
兵士などの外に出る可能性のある者のみ支給されるそうで、街の住人は触ることすらないのだそうだ。
フラーフェ「見てサキ!!これすごくおいしそう!」
薄く伸ばした小さな生地にスライスした野菜や薄く切った肉をのせ、それを軽く丸め、ピザとクレープを合わせたような料理。パンの側面に切り込みを入れ、そこにハンバーグのような練り物野菜を挟みソースをかけたいわゆるハンバーガーのような食べ物など、先ほど食べたのにも関わらずに食欲をそそるような食べ物が色々あった。
咲「美味そうだが金なんて…」
ジール「ふん、これだから庶民は」
そういうと出店に近づく。
ジール「これとこれ、一つずつくれ」
???「あいよ…ってジール坊ちゃんじゃねぇか。なんだ?昔の味が恋しくなったってか?あの時のこと今でも覚えてるぜ?昔、バーグさんにダダこねて買ってもらっていたこととかよ」
ジール「…そういうことは言わなくていい」
咲「へぇ。昔はそんな可愛げがあったんだな」
横から二人の話に割り込む。
ジール「貴様は割り込んで来るな!」
???「おぉ?坊ちゃんの知り合いか?仲良くしてやってくれよ?子供ん時良く友達が欲しいって常々言っていたからな。いっつも一人仲間外れにされてミラド姫とくっついって…」
屋台のオジサンの話は止まらない。段々とジールの顔が赤くなっていく。
ジール「…ふん。僕は先にギルドに行く!」
一人でずかずかと先に行ってしまった。
いわゆるツンデレ?みたいなものか。昔そういうことがあってああいう風に性格が少しひねくれたのだろうか?
…って、しまったお金…。
???「お代は良いよ。久々にあんな楽しそうな坊ちゃんを見れたからな。寧ろお礼として持っててくれ」
ありがとうと言い受け取る。フラーフェに片方渡すと一瞬のうちに食べあげる。
…良く食べるなぁ。
それにしても綺麗だな…
フラーフェの身長は俺より少し高い。服装はミラドが選んだものらしく、膝下まであるオレンジ色の長いワンピース。細長いすらっとした腕には少し太めの腕輪、腰には革のベルト、脚にはパンプスから伸びた紐が巻かれている。皆から目を惹く様な、最早モデルといっても過言ではないだろう。
意識して見ていたのがバレてしまったのか、ミラドから呆れた様な目をされてしまう。
ミラド「女の子をそう見つめるのはいかがなものかしら?」
そう言われ慌てて目をそらす。不満そうに聞こえたのは気のせいだろうか?
とにかく、ここで時間を潰すのは勿体ない。名所か何かないかとミラドに聞く。
ミラド「そうね…。あるのはあるけれど、そういう所よりもあそこの方が貴方にはお似合いではないかしら」




