魔法の都市 マライブ 9
バーグ「ミラド姫…今お二人はお食事中です。お静かにして頂けますかな?」
バーグが注意するもあまり聞いていないようで色々と質問を投げかけてくる。どれも早口過ぎて上手く聞き取れない。バーグが語気を強くして言う。
バーグ「…護衛も付けず一人で街を抜け出し、魔物に追われ多くの方に迷惑をかけたのをお忘れですかな?」
流石にこれには反応したのかシュンと縮こまる。
ミラド「う…。それは…その…」
どうやら何かしでかしたようなのだがどういうことだろう?
バーグが頭を抱えながら俺たちに話してくれる。
バーグ「はぁ。…今回の件は二つの出来事が関係しておってな…。一つ目がメニスタ方面から魔物の大量発生。二つ目が」
ちらっとミラド姫と呼ばれた者に目を向ける。
バーグ「あちらのミラド姫が城から居なくなったことだ」
城から抜け出す?大量の魔物の出現?
――まさか。
咲「俺がミラド姫を誘拐して、かつ魔物を発生させマライブを襲撃しようとした犯人だって思われていた…?」
バーグ「…おおむね間違いではない」
つい大きなため息が出てしまう。
なんてこった。それのせいで俺は死刑囚に…。
経緯は分かったが、まだ謎は残っている。
咲「俺と同じ黒髪、黒目がメニスタを滅ぼした人物なのにバーグさんはどうして違うと判断したんだ?」
途中からこちらの話を聞いていたジールとミラドもこのことだけは気になっていたことらしい。
ジール「そうです父上。何故この者が違うとおっしゃるのですか?黒髪黒目など私は見たことなど無かったのに」
ミラドも同意のようだ。
バーグも否定はしなかった。
バーグ「私も最初はそうだと思っていた。だが、違った。そもそもあやつはそう易々と人前に現れぬ。それに人を憎んでいる。城門の兵士なんぞすぐにでも殺しにかかるだろう」
一息つき、皆に向けて静かに言う。
バーグ「奴は魔物も憎んでいる」
咲「魔物も…?」
バーグ「そう。だからこそ魔物――フラーフェ殿と共に行動していた咲殿は違うのではないかと疑ったのだ」
咲「だから、俺に魔物をどう捉えているのかと尋ねて来たのか」
コクリと頷くともう一つ付け加えた。
バーグ「皆ミラド姫が誘拐されたと慌てふためいていたが私ともう一人、私の弟子だがそうではないと踏んでいてな。私はこの騒ぎで動けないのでそやつに捜索を頼んだのだ。結果、私たちの予想通りだったのだがな」
バーグが呆れた様な目をミラドに向けるとやけに冷や汗をかいている。