魔法の都市 マライブ 7
見知らぬ大きなベッド。広い部屋。内装は水色と白のストライプ。フカフカそうなソファにサファイアのような煌びやかな壺が壁に等間隔で並んでいる。
とにかくここは振り返ってみよう。マライブにたどり着いたものの、罪人扱いされて牢屋に入れられて…。看守に牢屋から出す条件に闘技場で剣士と戦って、勝って疑いは晴れたもののフラーフェが城門で暴れていて、それを止めたら兵士に致命傷負わされ俺が何とかして人間にして…。
咲「で、そのあと倒れて眠って…何でここに?」
???「ようやく起きたのか」
ふと扉付近から声がする。この声どこかで聞いたな…。
???「まだ、寝ぼけているのか。庶民は余程毎日が暇なのだな」
そうだ、この上から目線の言い方は…
咲「昨日の剣士!?ということはお前が…」
髪の毛に手を当て軽く払う動作をしつつ、こちらに振り向く。
???「ああ、そうだ。僕が騎士団長バーグ=シルべールの子息、ジール=シルベールだ。そのちっぽけな脳みそにでも刻み込んでおくことだな」
高圧的な態度は相変わらず。昨日の出来事から嘘のように回復している。
咲「そうだ!フラーフェはどうしたんだ!?」
あれから姿を見ていない。一体どこにいるのだろう?
ジール「落ち着け。彼女は無事だ」
そういうと、ジールがメイドに扉を開けるよう指示を出す。
扉の奥からもう一人のメイドと共にオレンジのドレスを着た、背の高いピンク色の髪の毛の少女が入ってきた。
俺の姿を見るや否や走り抱きついてくる。
???「サキ!!サキ!!」
小学生のように飛び跳ねはしゃぎまわる。
???「やっと、起きた!!やっと、やっと話せる!!!」
少々ぎこちない話し方。でも、この感じ多分そうだ。
咲「…フラーフェ?」
キラキラしたエメラルドのような瞳で、今にも泣きだしそうな声で話し出す。
フラーフェ「…もう会えなくなるかと、思ってた…」
あの時のことを思い出しているのだろう。そっと、頭をなでる。
咲「俺を守ろうとしてくれていたんだよな。ありがとな」
こらえることが出来なくなったのか、小さな嗚咽が聞こえてくる。
魔物という人間ではない存在なのに、何故かすごく愛おしく感じる。
まだたったちょっとしか過ごしていないのにな…
どこか懐かしい感覚もある。
ジール「あれから数日も眠っていたんだ。…どうだ、丁度昼食時だ。気が済んだなら召使に頼んで来ると良い」
そう言い放ち一人先に部屋を出ていく。