魔法の都市 マライブ 6
その隙を好機とみたのか兵士の一人がフラーフェに襲い掛かる。
咲「フラーフェ!!?」
俺の叫びも遅かった。兵士の槍がフラーフェの体を突き抜ける。
兵士の一人が高笑いしつつどこかへ逃げていく。バーグが残った兵士に追うよう指示をしている。
あの兵士を一発殴りたかったが、今はそんなことはどうでも良い。
咲「フラーフェ!!おい、フラーフェッ!!」
近くで声を出しても身体を動かそうとしない。急所だったらしい。
まさかこんなことになるなんて。
出来るかわからない治癒魔法をかけてみる。だが慣れていないからなのか、意味がないからなのか効果が見られない。
キシュゥゥ…。
小さく声を上げるフラーフェ。衰弱していっているのが目に見えてわかる
このまま、もうどうにもならないのか!?
バーグ「ぬぅ、治癒部隊でも魔物相手の治療はどうにも…」
咲「何でだ!魔法なら何でも――」
焦りからか怒鳴り散らしてしまう。
バーグ「誰も魔物の構造なぞ分かる者はここにはおらぬ!!せめて魔物でなければ…!」
クソッ!!魔物だからって治癒が効かないなんて一体どうすれば!?
…魔物でなければ?
咲「――魔物じゃないなら良いんだな?」
俺の考えが分かったのかバーグは目を大きく見開く。
バーグ「サキ!?まさか――」
何か言っているようだが俺の耳にはもう届かなかった。
――そうだ。魔物が駄目なら人間にしてしまえば良い。
闘技場で使ったあの能力。剣や首輪を消した能力。その物の存在を無くすことが出来るというなら、フラーフェの魔物という『概念』も無くせるはずだ。
キシュ…
フラーフェの声も段々聞こえづらくなっていく。もう、俺の思い浮かんだ方法はこれしかない。
咲「もうちょっと気張ってくれよ…!!」
集中する。間違えるな、フラーフェという『魔物』を無くすんじゃない。魔物という『概念』を無くすんだ。
あの時と同じようにフラーフェに気を向ける。少しずつ、少しずつだが光を放ち始める。
それは段々と大きくなり、やがて目を開けられないほど輝きフラーフェと俺を包み込んでいく。
――目の前に誰か映る。黒髪の人物。顔が前髪で隠れていて分からない。
咲「お前は誰だ?」
俺の問いに笑うとも悲しんでいるとも分からないような表情を見せる。
また強い光を放つ。眩しさに目をつむる。少しずつ目を開けるとそこに黒髪、黒目の人物は居らず、淡いピンク色の髪の毛をした一人の少女が倒れていた。
大きなピンク色をしたカマキリの姿が消え、代わりに一人の少女がいることからこの子がフラーフェなのだろう。ただ先ほどの傷はなく、今まであった傷も消えていた。
ただ、問題があるとすれば――
ばっと後ろに振り返る。
服をどうしよう――!?
カマキリの時に服なんて着ているわけもなく、ましてや用意なんて出来る状況でもない。
ん…
目が覚めたような、そんな声が後ろから聞こえる。
と、とにかく、今自分が着ている上着を渡そう!!
そう思った瞬間、ズボンの裾を引っ張られる。
そろーっと足元を見ると、寝相が悪いだけなのかフラーフェらしき人物が裾を寝ながら掴んでいるだけだった。
はぁっ…と一息つく。
とりあえずは安心かな…?
安心したら、何やら酷い眠気が襲ってきた。
ああ、まずい。まだ安心してはいけないのに…
しかい抗うこともできず、意識が途切れていく。
次に目が覚めたとき、俺はとてつもなく豪華なベッドの上で寝ていた。
咲「何処だここは…?」