魔法の都市 マライブ 3
大きな歓声とともに闘技場の中に入る。中はかなり広く端から端まで平らだ。身を隠せるような場所もない。どうあがいても正々堂々と戦うしかないようだ。
???「ふん、貴様が死刑囚か。つまらん、どんな人物かと思ったが対した相手ではなさそうだね」
咲「…そうかよ、じゃお手柔らかに頼むよ」
???「お手柔らかに?ははっ、初めからそのつもりだ。貴様のような者に魔法など勿体ないからな。さぁ、来なよ『初心者』」
どうにも、そういうのはバレるみたいだな…。
咲「なら遠慮なくいかせてもらう!!」
こうなればもうやけくそだ。剣を構え、相手に素早く近づき振り下ろす。しかし、あっさり横に避けられる。
剣の振った勢いに負け、そのまま転んでしまう。
周りからはブーイングのような声、嘲られている声が聞こえる気がする。
咲「クソッ!!!」
立ち上がり、剣を振りまくる。それでも全て避けられる。当たる気配すら感じない。
???「どうした?その程度なのか?」
相手は疲れている様子もない。俺を見下し、あざ笑うことを楽しんでいるようだ。
咲「ふざけやがって!!」
何度も剣を振る。何度も、何度も。しかし一向に当たる気配もない。
???「見飽きたな。そろそろ終わりにしよう」
相手の一振りに俺の剣は吹き飛んでいく。そして喉元に剣を突き付けられる。
???「さぁ、最後に何か言い残したことはあるかな?」
咲「…ッ!!」
冷や汗が止まらない。怖さで声も出ない。こんな所で俺は死んでしまうのか。まだ何も知らないのに。こんな時でさえあいつが浮かんでくる。
フラーフェはどうしてるだろう?あいつは上手い事逃げたのだろうか?
まだ、まだだ。こんな所で死にたくない。コイツの、この首元にある剣さえ『無ければ』まだ俺は戦える――
???「言い残したいことは無いのか。ではさようならだ――」
剣が横に振られる。周りの歓声も大きくなる。しかし、
???「何だ、これは…!?」
闘技場が静まり返る。誰もが、今見ている光景に唖然としている。
剣が、光を放ち手元から無くなっていく。欠片も残さず。
???「貴様!?何をした!?魔法は使えないはず…!?」
俺自身も最初は何が起きたか理解できなかった。でも、そうか。そういうことか。
咲「魔法にはならないのか――」
なら、これも――
首輪に念じると、跡形もなく消えていく。
魔法も使える。これならまだ戦える!
咲「ここから反撃開始だ」