魔法の都市 マライブ 2
…そんな馬鹿な。俺が行った時にはすでに廃墟の街だったんだぞ。一体いつそんなことが出来るっていうんだ。
咲「そんなのでたらめだ!!俺が行ったときからすでに――」
看守「貴様と同じ髪色、同じ目の色をした者だ。そんな人物はこの都市にもどこにもおらん」
咲「嘘だろ、そんなこと…」
ふと、看守にもう一人の看守が近づく。どうやら伝言らしいがそんなこと知ったことではない。
そんなことよりも、メニスタを滅ぼしたのが俺と同じ髪色、目の色だということだ。一体どういうことだ。あの草原で目が覚める前に何か俺がやらかしたのか…?
…看守が何か言っている。何だろう?
看守「おい、32番。外に出られるかもしれないぞ?」
その言葉にはっと看守の顔を向く。無実だということが誰かに証明されたのか?
ただ看守の顔には驚いた、というよりも何か面白い物を見れるというような顔だった。
看守「運が良ければな」
咲「…どういうことだ?」
看守は静かに言い放つ。
看守「これから闘技場で戦ってもらう。」
咲「闘技場…?あの人と人が戦いあう…?」
看守「そうだ。そこでとある方に勝つことが出来たならば釈放してやろう」
看守は一つ区切りをつけて言い放つ。
看守「ただし、魔法を使うことは禁じるがな」
今、目の前に大きな扉がある。その向こうから様々な歓声が聞こえる。湧き上がる歓声とは裏腹に俺は手が震え青ざめているだろう。なんだってこんな目に遭わないといけないんだ。それに相手は人だって?
呑気に平和に暮らしていた俺に人を斬ることは出来るのか?模擬戦でも何でもない。
アナウンサー「――さぁ、幾度となく襲い掛かるモノを蹴散らし虐殺!!こいつに敵うものは誰もいないのか!!?さぁ最終戦!!次はどんなモンスターが――ん?ここで一つお知らせです!!なんと最終戦はモンスターではなく人間との対戦のようだ!!」
様々な声が上がる。つまらねぇ、さっさと始めろ、早く殺し合いを見せてくれ。
殺し合い――
その言葉が頭に響くだけで吐きそうになる。手に持った剣がさらに重さを増したように感じてしまう。
あの時の盗賊共はフラーフェのおかげで死ぬ恐怖なんてこれっぽっちも感じなかった。
でも今は独りだけ。自分で解決させなければいけない。
咲「…やるしかないんだよな」
息を大きく吸って深呼吸する。大きな扉が少しずつ開いていく。
アナウンサー「さぁ!!乱入者の登場だぁ!!」