とある男の嘆きと始まりと
≪プロローグ≫世界の摂理
外国のレンガ造りの家が、立ち並ぶ街。
昼間は、人でにぎわっていそうな風景だが、夜になるとまるで誰一人としていない世界。
そんな世界に男が一人。
その男は、まるで孤独を愛する狼のような、抜き身の刃物みたいな雰囲気だった。
そして、誰かに話しかけるようにつぶやく。
「世界には、『超能力』が存在する。
能力として人の中に眠っているもの。才能、力、この世界に当然のようにある『物』、それが超能力の正体である。それこそが世界の摂理なのだ―――ウィルキン・エングラム」
ゆっくりと滑らかに話していく。
「これは有名だろッ?
彼がこのことを唱えた時、世間は見向きもしなかった。まぁ、仕方ないだろな。だが、彼はずっとこのことを主張し続けた。しかし、その行いは国家反逆罪として処理され彼は、銃殺刑に処された。まぁ、超能力を研究しろだのあぁだの宗教じみたこといってれば当然だがな。
殺されそうな瞬間に、現れた一人の人間。彼こそが、世界的に有名な『オリバー・ウィンストン』だ。わかるよなッ? えッ、わからないッ? ……まぁいいや。
そして、彼はウィルキンを救出し、ウィルキンと友に姿を消したとされている。拉致ッたんかどうかは知らんがな。
後に迷宮入りした大事件、なんせ刑務所にいた約140人の人が体中に刃物で切り刻まれて死に、生き残った3人は「奇麗な声が響いていた」と証言していることから、『天使の産声』や『聖なる惨殺事件』といわれていて、どこぞやの宗教団体に祀られるほどだ。」
奇妙な笑顔を顔に貼り付けている。
まるで、誰かに質問されているかのようにある程度合間をおいて、
「今も謎に包まれているが……。えッ、知りたいって? ……『好奇心猫を殺す』だ。死にたくなければ聞くなよ。……まぁ、これから話すがな。」
ふと寂しげに顔をうつむかせた。
少しすると嫌味あふれる笑顔で話し始めた。
「これは裏では有名な超能力事件のひとつで、迷宮入りしていると国家警察が主張しているが、主犯のオリバーは捕まっており、懲役50年と四肢切断という前代未聞の刑に処されている。そこまでしないと危ないとはいえ、怖いな。共犯の容疑は友人のホーバー・ジェンキンスにかけられている。もうじき判決がくだるだろうな。といッても40年も前のこの時間軸だと半年前の事件だがな。おッと話がそれちまったな。
えッ、俺は誰だって? 今さら感たっぷりだがまぁいい。俺は、……ただの『矛盾した人』だよ。常に監視するものと言ったところかな? 今のところは……、だがな。」
すると、いきなり誰もいないはずの方向を向いた。
すべてを知っているといわんばかりに、
「さて、この話はここまでだ。今から〔還る〕ところだが君も付いてくるかい、この世界から40年後に? 超能力Lv.9Rk.Maxの天才『片桐裕紀』君?」
語り終えると男は使命を終えたといわんばかりにその場を去った。
まるで、空気と同化するかの様に一瞬で。
そうして街は元に戻ったかのように、静かに眠りについた。
高校一年のときに考えたものです。
多少後付をするかもしれませんが、ご了承ください。