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Ozの魔法使いと剣士と脚本家と  作者: めがね
1章 始まり - 覚醒からコントロールまで
3/4

アリカと運営役員たちと聖なる双丘と

 人ごみの中を歩く。

 ここはブリテン王国城下街。世界的に有名な鍛冶師のいる街には、自然と人が集まり、平日でもこの人だかりだ。


 今日は彼に用があるわけではなく、俺たちは店の2本手前の道を曲がる。

 人通りの少ないこの道をまっすぐ進み、一軒の居酒屋へ。

「あっ。いらっしゃい」

 夫婦2人だけで営業するこの店に客はほとんど居ない。

 今は昼時。酒を飲みに来る人は少ない。夕方になってくると、サラリーマンたちが疲れを癒しにやってくるのだという。


「今日も飲んでいかないのかい?」

 奥さんには申し訳ないが、

「すいません。これから報告にいかないと」

 丁寧に断る。

 まぁ、暇ができたらおいでよ。と奥さんは言いながら店の奥へと案内する。


 トイレへとつながるこの道の突き当たり。男子トイレでもなく、女子トイレでもないこの隙間に入り口はあった。

「それじゃぁまた今度」

 旦那さんからビールを2本いただいてしまった。

「彼女さんもまた来てよね。」

 あ、はい・・・と彼女は応え、俺たちは闇へと消えた。




 株式会社Oz。ざっくり言うと運営本部。

 世界中の王国からつながるショートカットは、本部近くの雑居ビル2階アニメイドOz本店のスタッフルームへとつながっていた。

 なぁ。俺はアリカへ問いかける。

「奥さんたちに説明しなくて良かったのかよ」

 階段を降り外へ出た俺たちは、まったりと路地を歩く。

「あんまり俺のことを話すと、変な混乱招くかもしれないし」

 それもそうだ。アリカも意外と真面目に考えてたんだな。

「でもあの時の『あ・・・はい』は可愛かったぞ。女としてやっていけるんじゃn(ry」

 ボディに右が決まった。

 もう一発決まる前に、全力で謝る。

 その言葉に、素直でよろしい。と気持ち悪いほどの笑顔をアリカは見せると、本部入り口のドアが開く。




 ただ、だだっ広いだけの空間がそこにはあった。

 相変わらず殺風景だな。どこぞやのリフォームの匠が開放感がなんたら。と言って劇的大改造・・・

 この話はやめておこう。


 受付にいるMOBのお姉さんに挨拶をし、奥まで進む。

「みなさんが4階でお待ちですので、そちらの方へお願いします」

 了解しました。という俺の声に笑顔を返してくれるお姉さん。ん~・・・かわいい。

 興奮さめやらぬ中、俺たちはたわいもない話でエレベーター内を過ごし、4階のスタッフ休憩所の扉を開く。




 パン!パンパン!


 銀やら金やらと、なんかキラキラした紐が俺たちの頭にかかる。

 クラッカーとはすぐに気づいたが、ツッコミを入れる前に周りが動いた。


「うぉぉ!すげぇ!」

「本当に女の子になっちゃってる♡」


 同僚『その1』から『その7』はその場で歓声をあげ、『その8』から『その20』までは興奮した面持ちでこちらへ寄ってくる。

 その内『その14』の彼は、

「も、も揉んでいいっすか」

 指を大きく開いたその手を、緊張のせいか震わせて希望の丘まで近づける。

 頂点まであと数センチというところで、アリカの裏拳が決まった。

 へぶぅ!というオーバーリアクションとともに大きく吹き飛び、『その8から12』までが巻き込まれる形となって、衝撃は収まった。軽くネタが入ったとはいえ、この人間ボーリングを目の当たりにすると、やはり敵には回したくはないと思う。

 ううう・・・と地面へ突き飛ばされた『その12』は、怪しくグーパーする右手を掲げて

「男同士ならいいじゃ・・・まいか・・・ガクッ」

 と最期の言葉を残し眠りについた。

「男同士でもダメなことはあるのーっ」

 アリカは腕を胸を守るようにし、大声をあげる。しかしそれは、完全に男が好むようなポージングとなり、数名が興奮のあまり服を脱ぎ、半裸状態で夕方のランニングへ向かっていった。

 興奮したのは彼らだけではない。彼女たち、同僚『その3』、『その4』は手をつないで声を合わせる。

「それじゃぁ、女同士ならいいよね~」

 その声に突き動かされたのか、『その19』は背後からアリカの胸を掴んだ。

 むにゅっ。という効果音が聞こえてきそうな指の食い込みは、見ているものを快楽の少し手前まで誘う。

 俺はレズビアンというものに一切抵抗がない、むしろカモーン!な感じなので、その光景を脳内メモリに保存しつつ、生暖かい目線をされるがままの胸に注いだ。

「ほうほう・・・これは上玉。くっくっくっ・・・ここがいいのか?」

 時代劇の悪代官的なセリフを言いながら、ついにシャツの中へとその手を侵入させる。

「だめっ・・・いやだって・・・いやぁぁぁぁああああああ!」

 その瞬間『その19』はその場に崩れ落ちた。女性には簡単に手を出さないアリカであったが、今は緊急事態と見たのだろう。後頭部を『その19』の額に打ち付けたのだった。

 一息つくと、紅潮したその頬など気にする素振りは見せず、アリカはシャツの乱れを直す。

 しかしまぁ・・・ズレた下着を直すのは誰からも見えないようにしたほうがいいと思うぞ。生き残った男数名が前かがみになっているのがその証拠だ。断じて俺は前かがみにはなっていない。猫背なだけだ。




「茶番は終わりですか?」

 奥から大きな樽と上底から現れた人の頭。同僚『その21』が姿を見せる。

「ったく・・・なんなんだよ。みんなして俺を」

 そういうアリカに、樽が底の部分から僅かに足を覗かせて歩み寄る。

「仕方ないですよ。アリカさんは魅力的です。」

 その低い身長のため、アリカを見上げるように言った。

 いや・・・俺男だし。と頬をさらに赤くさせるアリカ。

 不覚にも萌えてしまった。


 ごほん。

「なぁ樽。こいつのことなにかわかったんか?」

 少し気持ちを落ち着けて俺は問いかけた。

「樽じゃなくて樽田って名前がちゃんとあるんですが。」

『その21』いや樽田は、空中に出現させたディスプレイを見ながらつぶやく。

 これを見てください。と俺達の身長に合わせて、彼にとっては少し高い位置に画面を移動させた。


 これは?

 どうやらアクセス履歴のようだ。赤い文字で書いてあるところ、不正アクセスか。

「その通りです。ですが御存知の通り、僕達は社長権限を持たないので、不正アクセス扱いとなります。」

「ってことは、内部の人間がやった可能性もあるってこと?」

 アリカは画面を凝視したまま聞く。

「そういうことになりますね。ですが、犯人はわかっています。」

 ・・・ゴクリ。俺にもわかるほどの音を立てて、アリカは樽田の顔を見る。

 樽田は一呼吸置き、続ける。

「率直に言います。犯人は・・・」




「アリカさん。あなたですよ。」

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