初めてのただいま
飛影の家の人物説明話です
火月は今初めて
いや、地元付近で有名な金持ちが住んでいると噂の大豪邸の目の前にいた
学校が終えた後に更に遊んだ後の帰宅なので
時刻は18時00分過ぎ
飛影とリタと火月が門の前にいた
リタの表情はどこか疲れている
いきなり
妹ができた
と飛影がカミングアウトをしたのである
椿なら笑ってまだ受け入れることができたが
リタはそのようにもいかず
飛影の気まぐれの理解と困難なことをした後で少し疲れている様子だが
妹の存在はなんとか認めたらしい
「すっげー!!」
これは火月の感想である
一般的な屋敷が具体化された屋敷
敷地面積は一般学校のトラック一周は150m
塀を一周すればそれよりの距離がある
「さて…と」
飛影は門を開ける
まるで打ち合わせをしたような
いや打ち合わせ通りに飛影とリタは門をくぐり火月の方に振り返る
『ようこそ!!異常で異質が集まる家へ!!そして…お帰りなさい』
リタ個人としてはこの挨拶は駄目だろうと思っていたのだが
火月にとってはその言葉は特別だったらしく
「あ…ありがと…ございます…ただいま帰りました」
笑いながら涙がこぼれている
「さぁて泣くのは早いぞ!これから愉快で異質な自己紹介が始まるぞぉ」
わしゃわしゃと豪快に
そして優しく火月の頭を撫でる
そして孤児として過ごしてきた火月に初めての帰る家ができ
初めてその門をくぐる
くぐった先は地面や壁や木などが少し粉砕されている庭
「えっと、兄ちゃんこの庭はどうしたんだ?」
「…少しな」
「少し…ですね」
何故か火月の問いに明確に答えない飛影とリタ
原因は飛影とリタ
最初は組み手という名目でトレーニングしていたが
次第に熱くなってしまい
少しはっちゃげた結果である
「へぇ~そうなのか~」
火月はそういうことを気にするタイプではないのか軽く流す
「ちなみにこの家は二階建てで18LLDDKKだ。二階にも一応リビングがあって一階に遊び用と飯用のKが一つずつある」
庭に入り屋敷のドアまでの移動
30秒程であるがその30秒で屋敷の軽い概要を説明していく
「んでこれが正面玄関で他にも裏口とかがある」
この屋敷の庭にはスイッチを入れると落とし穴が10個程出現する
そこから屋敷の中まで入れる
がスイッチを入れるということは
それ即ち厳戒警戒中なので落とし穴に入るが最後
庭の下
10メートル落ちた先の地下室には絶対強者級が待ち構えており
入ると同時に死ぬ
そんな警戒するためにスイッチは一度も入れたことはないが
ある馬鹿が時々警戒時ではない際にスイッチを入れて落とし穴に落とそうとするので
遊ぶためにスイッチが入ることはある
だがそれを火月に伝える必要はないと飛影は判断する
色々とオブラートに包みながら説明し
正面玄関の扉を開け放つ
「ただいまぁ」
「ただいま帰りました」
慣れているように
というよりも
日常でいつも使う言葉を飛影とリタは使用する
「…ただいま」
火月もいつもの活発さは消えて照れているように小さく
消え入りそうな声だがしっかりと家に帰ってきたことを告げた
「お帰りなさ~い、お疲れ様でっす!!」
それを待ち構えていた従者の格好
ただの私服にエプロンをつけただけの少女が敬礼しながら迎える
「えっと火月、こいつは優希だこの家の従者かな?一応」
「一応ですか!!?」
ズガァンとオーバーリアクションで答える優希
活発よりうるさそうな印象を覚える
「よろしくです!!」
しかし火月は律儀に頭を下げて挨拶をする
この屋敷の従者
名前は優希
名字は市原
火月と同じ孤児院出身である
身長は160cm
17歳のどこにでも居そうな少女である
だが
髪は地毛で茶色
瞳の色は金色
少し異質である
飛影がこの屋敷をダドマに作ってもらい維持するにも必要だったため
従者を雇い入れ優希が入った
常識を知らなかった飛影は
月給150万円で募集したため当然ながら応募者が殺到
100人を超えるその中から唯一選ばれたのが優希である
つまり普通ではない
家事全て普通より卓越しており
庭にあるガーデニングでは妙な動く植物が生えていて
時々飛影にバッサリと切られることも多々ある
だがめげずに更なる改良を続ける
そんな少女である
予め飛影は火月を連れてくることを伝えていたので優希も驚くことはない
正面玄関から入ると最初にだべるためかソファやテレビが置いてある空間
そこから二階へ続く階段やキッチンへと続く廊下
食堂などが続く
火月が好奇心全開でキョロキョロ周囲を見渡すとソファにうつ伏せで寝転んでいる少女がいた
「うにゅ」
少し騒がしいと感じたのか少女は顔を上げ飛影を見て匂いを感じ取り顔色を帰る
「ちょっと飛影…どういうこと?」
飛影に詰め寄る少女
手にはワインの瓶
「私の血が流れてる貴方が怪我をしてるのはどういうことなの?」
酒の匂いが周囲に漂い
火月は一歩後退する
「いやぁダドマに力抑えられてて再生力もかなり落ちてる」
「あのドラゴン潰してこようかしら」
忌々しいとばかりに表情を歪める
「無理だから止めとけ…火月、リーベだ」
リーベという名の少女
正式にはリベリア・ラインベルト・ミリア
なのでリーベと周囲は呼んでいる
10歳程の少女で
身長は130cm
可愛い容姿である
だが服はジャージでそれが全てを台無しにしている
淡い紫色の髪色
赤い眼
八重歯は尖っていて
実年齢は250歳
正真正銘の吸血鬼である
火月がリーベの背中を見るとジャージを突き破って黒い蝙蝠のような翼がいつの間にか生えていた
「あぁこれが妹?よろしく」
まだダドマを恨み中なのかぶすっとした態度で手を差し出す
酒臭いが酔ってはいないようで言動も姿勢もしっかりしている
「よろしくお願いします!」
自分よりも年下に見えた火月はあまり緊張もなく元来の元気良く挨拶をする
「あっ!!おかえり飛影にリタちゃんに火月ちゃん」
火月の声が聞こえたのか階段から椿が降りてくる
「まぁ今いるのはこの5人かな?合計で10人はいるけど基本あいつらはどっか行くからなぁ」
少し寂しそうな飛影
一度ため息をつく
そして全員が一斉に火月を見る
『これからよろしく!!』
飛影は爽やかに笑い
椿はこれからの火月のことを少し心配しながら苦笑い
リタは元気がでるような笑みで
優希は何かイタズラを考えている笑みで
リーベは不適な笑みで
歓迎する
「これから世話になります!!」
腰を90度折り曲げ綺麗な姿勢であった
リーベから血を貰ったということは飛影も吸血鬼ですね