暴走の理由
ギルギアとガル
飛影とあやめの戦いです
魔界と冥界が繋がる少し前のことである
ギルギアはガルと戦っていた
「ふむ…我と打ち合ってもほぼ無傷とは面白いの」
拳を打ち合わせること実に1,000発以上
ギルギアは不敵に笑い
ガルは息をきらしていた
ギルギアの鎧は所々にヒビが入っている
「それはこっちの台詞だ…俺と打ち合ってもほぼ無傷じゃないか」
ガルの魔法
《アルケミィ》
は硬化の魔法である
自分自身を硬化する硬い膜を生み出す魔法だ
最初に飛影とギルギアが放った衝撃波を防いだのもこの魔法である
「全力で殴ったのにも関わらずなんで損傷がそんな少ないんだ」
ギルギアの鎧
龍の鱗を部分的に人型形態でも使用しているだけ
かなり強固な鎧だが魔法と比べたら劣る
しかしほぼ無傷に等しい状態である
「なに…単純じゃ、貴様に力が無いだけじゃ」
そしてその答えは簡単だった
パワー不足
いくら硬いものでもパワーがなければ砕くことはできない
飛影の場合は硬さがないためパワーで砕いているだけである
《グラビティ・圧》
「あとあれじゃな…我と貴様は相性が悪いからの」
ギルギアは魔法を発動
上からの力がガルを押し潰す
「グゥ!!」
あまりの重さにその場で膝をつく
どんなに硬くても動けなければ意味がない
「魔法自体は面白いんじゃが微妙なんじゃよ…貴様は」
硬いだけで応用力がない
パワーもスピードもないただの硬いだけ
それがギルギアの印象であり事実である
ガルが重力の檻から抜け出そうと力を込めた瞬間
重力が増した
今度は膝をつくレベルではない
押し潰されるレベル
全身が床に食い込んでいる
どうあがいても抜け出せない
相性以上に圧倒的な実力差がそこにはあった
「ぐぁぁ…ぁあ!!」
痛みで呻き声をあげるガル
《アルケミィ》
魔法を発動
「悪手じゃ」
ガルの魔法は硬い膜を生み出す魔法だ
膜というのは物質であり重さが備わっている
そんなもので防御しようとすれば逆効果である
膜が例え一グラムでもあれば今の膜は軽く見積もって100トン
ギルギアからすれば自殺行為である
「がっ!!」
最後に声にならない悲鳴をあげ潰れる
死んで魔力が操れなくなりガルだったものは潰され文字通り跡形もなく消えた
「ふむ…絶対強者級でもこの程度かの」
ほぼ損傷なし
接近戦最強は伊達ではない
「む?」
勝利の余韻どころか退屈の溜め息を吐こうとしたギルギア
いきなり背筋が凍った
遅れて圧迫感が世界に拡がる
「やつか…」
誰かすら考える必要なくギルギアは答えに辿り着く
「シーレイの言う通りならこっからが本番じゃな…」
ギルギアは首の骨を一度鳴らし魔力全開
笑みを溢しながら跳躍する
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再び時は遡る
ギルギアとガルが打ち合っていた時
飛影はあやめと対峙していた
あやめの武器は二丁拳銃
対する飛影は素手である
どちらが不利かなど答えるまでもなくあやめである
銃は所詮銃
弾丸より速く動けること
撃つ瞬間の隙
軌道が丸わかり
絶対強者級からすれば避けてくださいね二秒後に貴方の額を狙って撃ちますからと言われてから撃たれるようなものである
威力もたかが知れている
「いきますよ」
「こいや!!」
《無限色・緑》
《風華・壁》
あやめは魔法によりその常識を容易く撃ち破った
あやめの放った弾丸は飛影が風華の壁を展開するより早く飛影に直撃する
「っ…わぁお!!」
壁を展開しながら次の行動に移っていた飛影は腕を掠める程度だが驚きは充分だ
「今の最速の弾なんですけど避けますか…」
「面白いな…」
弾という物質は飛ばしていない
あやめにとって銃は魔法の威力底上げの集中とイメージする道具であった
「それでは…飛ばしますよ」
あやめは二丁拳銃を構える
《炎舞・掌》
《風華・纏》
飛影は無炎を両手に纏い風を全身に纏う
「こい!!」
飛影が応じると同時
《無限色・128》
あやめの連弾が始まる
赤・青・緑
三色を基準に僅かな色の違いで性質が変化する
追尾する弾
威力重視の弾
速い弾
範囲がでかい弾
高速で撃ち出される無数の弾丸
「っ!!?」
まるで弾の壁
飛影は近付くこともできない
防いで脚を止めたら集中放火を食らう
風と無炎で弾を受け流し相殺し流しきれず掠り狙いが定まらないように不規則な動きを続ける
それでも動き続ける
攻撃を避けながらも飛影は弾幕を観察する
弾一発一発の威力は低い
だが一発でも食らい脚を止めたら最後
魔力も体力もこのままでは飛影の方が先に無くなる
飛影は避けながら吸血鬼の爪を伸ばす
無炎を纏った爪を移動しながら速度が落ちないように動きが規則正しくならないように
ただ集中する
僅かな隙を待つ
「ふっ!!!!」
そして訪れた隙
観察し僅かな色の違いを見極めほんの僅かな隙を発見
飛影は力の限り振り切る
攻撃力最強の飛影
万全の態勢ではないが無炎と爪によって発生した鎌鼬が合わさり
無数の弾丸相手に相殺する
《炎舞・流星槍》
そしてそのお陰でできた魔法構築の時間
飛影は最短で一番強力な技を選択
飛影の手に無炎の槍が構築
「おらぁ!!!!」
無駄無くその槍を投擲
新たにあやめが放った弾丸を焼失させ一直線にあやめに放たれる
《無限色・黒》
あやめは咄嗟に魔法を構築
一番威力がある弾を両銃で一発ずつ受け流すような角度で放つ
ぎりぎり逸れる
《炎舞・流星群》
《無限色・256》
飛影の背後に大量の無炎の槍が構成される
あやめは両手に先ほどの二倍の魔力を込める
弾幕合戦
殴り合いではなく、火力と数での中距離合戦
飛影が笑うと同時に闇色の流星が放たれる
そしてあやめも魔法を発動
力VS量
降り注ぐ無炎の槍
真っ向するは億数もの弾
力では飛影は最強である
その飛影に対して物量で挑む
それは一番可能性がある戦いだ
「…くっ!!?」
先程の弾幕の100倍程の物量
にも関わらず拮抗している
飛影は余裕の表情で次々に無炎の槍を生み出し放つ
拮抗したのも僅かな時間であやめは徐々に押されていく
《無限色・1024》
《炎舞・絶断》
あやめが更に全魔力を込めて魔法を発動
威力、量ともに倍増した弾幕
飛影はそれに対して爪を媒介にして無炎を纏わせる
20メートル程の大きさであるが手刀の延長である
「うん、あやめ…楽しめたぞ!!」
あやめの弾幕が飛影の無炎を押し崩すと同時に飛影は振り下ろした
絶断
剣が巨大化し高層ビル程の大きさになりその名の通りに直線上のすべてを絶った
無数の弾幕も一本の剣撃に全てを破壊される
「あぐ…!!」
あやめが回避する時間も無く左腕を焼失させる
「俺の勝ち、まだやるかい?」
「やんねぇよ…完膚なきまでに敗けだよこっちの」
飛影の問いに答えたのはリオンであった
「けっ!!合格だよ合格!!」
両手を挙げようとして降参ポーズ
左腕はないため右腕だけだが雰囲気でわかった
「ったくよ!!さっき気付いたらシステムハックし返されて元通りになっちまったし!!俺は負けるし!!あ~くそ!!俺こんなとこから脱出したかったんだけどな」
あ~あ~と深い溜め息
魔力はもう抑えていて戦う気は見受けられない
飛影も魔力を抑える
「脱出させんのはいいが…とりあえず黄泉帰りしたやつを還せ」
「ほんとか!!?」
飛影の一言目に嬉しそうに反応するリオン
ギルギアはまだ戦っているようだが負けるとは思わないので飛影は気にしない
「あ~でも…還すには消滅させるしかないんだよ!!」
目を逸らし言いにくそうなリオン
リタ達がいるから大丈夫だろうと飛影は不安を覚えるがすぐに拭えた
「一応強いのには肉体持たせて感覚共有できるから覗けるけど見るかい?」
リオンはどうせ時期がくるまで出られないからと暇潰しに提案する
次元の切れ目には魂しか送れない
それに天界に制御をとられているためその機能すら無くなっている
気になる反面見たくない飛影だが状況は知りたかった
「頼む」
リオンは次元の切れ目に映像を映し出す
「肉体持ってるやつの視点なこれ」
映像として映し出されたのはリタである
しかし一瞬だけ映りいきなり映像がぶれ切れる
「あっ殺られた」
一瞬であった
さすがリタだと飛影は頷く
「んじゃ次~」
リオンは次の映像を映し出す
次は秋野が映っていた
しかしその表情に敵意はなく視点でみると骨を破壊していた
「うわ…こいつすげぇ!!」
本能にあやめと同じ殺戮と破壊を埋め込んであるが、この視点の肉体持ちはリオンからすれば神のような精神力を持っている
攻撃の意志は完全に無く飛影は安心する
「次は~」
リオンが視点を変更
映し出されたのはエリアだった
「っ!!?」
「知り合い?」
飛影の表情を見て視点を固定する
「娘だ」
「娘いるんだあんた…ふ~ん」
興味ないように相槌をうつリオン
「うわ…こいつ移動魔法持ちか…視点がゆらゆらする」
戦いはじめて少し経ちリオンは文句を垂れる
「おい!!こいつの動きを止めろ!!」
「無理だよ!!んなもん!!」
嫌な予感がした飛影
この時飛影は重大な間違いを三つ犯している
一つはあやめを殺さなかったこと
二つはリオンの提案を受けたこと
三つは例え天界がどうなろうとも今すぐに冥界を壊してヘリオトロープで魔界に戻らなかったことだ
そして少し経ち
「おっ…あんたの娘ピンチだぞ!?」
どこか興奮しているリオン
映像はエリアが手刀で刺されそうな場面である
気付けば飛影は歯を食い縛り拳が血塗れになり再生を繰り返している
ピンチならシーレイとかリタが助けてくれるはずだと願って
そして飛影の願い通りにエリアが視点から外れ手刀の範囲から逃れる
代わりに見知った背中に刺さる
「あ…」
「おい!!あんたの娘生きたぞ!!代わりに誰か死んだけど」
その存在がわからないリオンは娘が生きて良かったなと言っている
他人の視点の後ろ姿だけでわかる
市原優希である
人間界に来て最初にできた家族
飛影が気に入っているため普通の人間ではないが
心臓が無くなれば死んでしまう
他人の目でもわかってしまった
(…優希が死んだ?……そんなわけはない…優希は強い子だ…でも…無理だ…これは現実だ…あれは致命傷だ…生きることが許されない傷だ…なんで死んだ?誰が殺した!?この視点のやつか!!?リオンか!?あやめか!?依頼したラインか!?……違うか…俺のせいか…俺がいれば護れた…はずなのに…もういい…もういいや…優希が死ぬ運命だなんて信じられるか…もういい…こんな世界は滅んじまえばいい…!!)
「あは…」
笑い声が聞こえた
その笑い声は冥界という悪意の闇に汚染された精神をもっているリオンに寒気を与えた
「あはは…あははははははは!!」
「ぅ…ぁ!!?」
(マズイ!!)
これはヤバい
殺戮と破壊の本能が恐怖で逃げろと叫ぶ
リオンはその場から離れようとしたが飛影がそれを目で追っていた
《無限色・1024》
リオンはあやめに代わりに片腕でも銃を構えて魔法を発動
「あはは!!」
魔法を放つと同時にすでに飛影は接近していた
頭が弾け飛ぶが止まらない
一瞬で首が再生しあやめは飛影が本来得意とする間合いまで接近を許してしまった
頭を掴まれ一瞬で地面に叩きつけられ腹を裂かれた
「ァァァァァァァぁあ!!」
腹を裂かれ激痛が襲う
皮と肉が綺麗に剥がされ内蔵が露出する
「あはは…あはははははは!!」
飛影は悲鳴をあげるあやめの内臓を一つ一つ握り潰して笑っていた
心臓が鼓動を止める瞬間に心臓をもぎ取られ飛影はそれを食べる
「ふむ…貴様がキレていることは何度もあったが暴走するとはこういうことなんじゃな」
その背後にギルギアがいた
鎧を纏って準備は万端である
「あは♪」
「まぁよいここで死ね」
飛影はギルギアに接近
力の限り拳を放つ
ギルギアは直線すぎる動きにカウンターで飛影の頭部を粉砕する
しかし飛影の拳は止まっていなかった
全力の飛影の拳
当たる直前に無炎と風を纏いギルギアの腹に直撃し
「ぐっ…!!?」
世界が崩壊する
ギルギアはあまりの力に風も追加されなす統べなく吹き飛ばされる
およそ300キロ
ただダメージやらその後の攻撃や世界のことを考えず力を放出させた一撃でギルギアが吹き飛ばされた距離
そして150キロ
無炎の熱と風華の暴風で地表が吹き飛んだ距離である
「あはははははは!!」
世界が壊れかけ
天界よりも次元の切れ目で繋がっていた魔界と共振
接続される
そして飛影は切れ目を通って魔界に戻り
ギルギアはそれを追い
あの場面に戻る
ギルギアはあれですよ、強すぎるんであんな感じに
あやめは近接は苦手なので連射で近付かせないように戦ってました
作中でキレると暴走で分けてたと思うんですが、キレるは怒り暴走は狂います
次回は飛影殺しです