父と娘の死合
エリアとガイルの戦いです
ガイルの魔法
《クリウス》は移動魔法である
範囲は一キロ
そして自分しか移動ができない
魔法単体で戦うことはできないため、ガイルは近接戦ができるように身体を鍛えた
魔法は単純すぎるためそこまで強くない
だから近接戦の訓練が取れた
格闘のスキルを鍛えることで魔法の幅も拡がった
エリアの魔法
《廻眼》は視界に入れているモノを強制的に廻す
だから視界から魔法で脱出できるガイルとは相性が悪い
エリアは体格的に力のぶつかり合う近接戦は苦手である
しかし戦いが始まって三分
ガイルは苦戦していた
当然エリアも厳しい戦いになっているがガイルの想定していた強さを遥かに上回っていた
《廻眼》
「くっ!!」
《クリウス》
廻眼によって強制的に視界外に移動しなければならない
エリアの背後に移動し拳を握る
「っ!!?」
それに反応したエリアは振り向き視界に入れると同時に防ごうと構える
《クリウス》
攻撃が当たる直前に再び背後に移動
エリアは躊躇なく前方に跳躍振り返りガイルを視界に入れる
魔法合戦
エリアの攻撃も届かず、ガイルの攻撃も避けられる
ガイルとしては完全に接近戦を狙いたいが上手く距離が詰められない
また、少しでも同じ場所にいると廻りはじめてしまう
連続で魔法を使わなければならない
「エリア…その歳でその実力は大したもんだな!!」
「師がお父様なので…当然です!!」
エリアの廻眼をクリウスで避けクリウスで接近するガイルから離れる
根比べである
判断をミスると一撃でもっていかれる
エリアの視界から逃げるために広いとはいえ廊下の壁や天井を使って魔法無しで回避を試みてもエリアは的確に視界に入れていく
魔法無しでは避けられない
しかし接近戦を持続させれば視界から外れる
深呼吸で呼吸を落ち着かせる
覚悟を決めて接近
最悪腕の一本は犠牲にする
その覚悟である
手を抜こうなど本能が戦いを望んでいるこの状況でなくても行う気は無い
娘の成長を直に感じれるのだ
「ふっ!!」
《クリウス》
上に跳躍すると同時に地面に移動して着地
一瞬だけ視界が外れる
それを見逃さず爆発したかのように急速接近
勢いをそのままに一直線に駆け拳を放つ
それを見てエリアは笑う
その笑みは飛影のような笑みであった
拳が直撃する直前に防御すら間に合わない一撃に対しエリアはぎりぎり拳に触れるところまで腕を近付けさせる
直撃させ宙に浮くガイル
「は……?」
攻撃を当てた方が態勢を崩す
宙に投げ出され咄嗟のことになにも反応できない
空中で頭を逆さにして回転している
《廻眼》
ガイルの肉体が廻り始める
回転しているため全体的に身体が廻る
ミジリと砕ける音が響いた
「っ!!?」
《クリウス》
咄嗟の反応で魔法を発動
エリアの視界外である背後に移動
「しっ!!」
右腕が使い物にならなくなったがまだ左腕がある
接近戦は継続できているため問題はなかった
エリアは移動場所を予測していてすぐに振り返る
眼前には腕
視界をガイルの右腕で防がれる
自らの腕を切り裂いたガイルは視界を防ぎ廻眼すら無効化し左手を抜き手に返る
打撃よりも貫通力を重視する
直撃させれば一撃である
「!!」
エリアが咄嗟に攻撃の軌道を予測し腕を犠牲にする覚悟で防御に転じ
《クリウス》
ガイルは再び背後に移動
確実に
怪我を負った状態では長期戦は不利だと考えて
この一撃で決めるために念には念をいれた
エリアは視界が塞がれ気づけなかった
気付いたとしてもすでに遅い
エリアが回避行動をとるよりも速くガイルの一撃はエリアの心臓を穿つ
「あ…」
とん、と何かに押された
「まったくもう!!あなたが死んだら飛影さん暴走しちゃうんですよ!!」
背中から胸部までをガイルの腕が貫いた
その軌道上に存在する心臓も弾けとぶ
痛みを感じることなく即死である
「はぁ…はぁ!!」
息も絶え絶えで今すぐに倒れそうなガイル
そこにはガイルの一撃をエリアを護るために飛び出して代わりに食らった優希
「あ…あ」
エリアは呆然としている
ガイルは優希の身体を貫いている腕を抜く
大量の血が溢れ出す
「……だから、逃げろって言っただろ!!」
入ってきたのもわかった
しかし一切手加減できなかった
殺す気もなかった
気絶だけさせれば充分だったがどうしようもない本能
「なんなんだ!!この状況は!!?」
怒りに任せ地面をがむしゃらに殴り付ける
破壊衝動も本能に含まれていて本能が薄まった
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
娘の叫び声
優希は自分を庇って死んだ
殺された
強くあれば
エリアが
もっと強くあれば死ぬことはなかった
「お父様!!私は貴方を殺します!!!!」
還すではなく殺す
殺気がエリアに宿る
ガイルの本能もエリアを敵として捕捉し再び構える
「もうやめろ!!今すぐに逃げろ!!」
さっきまで確かな疲労感があったがすでに無くなっている
ガイルの制止もエリアの耳には入らない
《クリウス》
勝手に身体が魔法を構築する
勢いよく接近するエリアの眼前に移動
そのまま蹴りを放つ
《廻眼・骸腐》
エリアはその蹴りを受け流しもせずに真正面から掴む
掴んだ右手の骨が折れる音が響いたが関係なかった
掴んだ瞬間
ガイルの右足が爆ぜた
「な!!?」
掴んだ一瞬で高速で脚が廻った
「あぁぁぁぁぁぁぁアァ!!」
ガイルが驚いていてもエリアも本能も止まらない
態勢を崩したガイルにエリアがゼロ距離まで接近
《廻眼・骸腐》
エリアの廻眼の赤い光が左手にも灯される
嫌な気配を感じたガイルが左腕でエリアを殴り付ける
エリアの左手がガイルの左腕に触れる
その瞬間に爆ぜた
「ぐっ!!」
そのままエリアの左手は止まることなくガイルの首に触れ
「すまないな…エリア」
頭が爆ぜる
ガイルが最後に残したのは謝罪であった
頭が無くなり完全に反応が無くなった
エリアはその場に崩れ落ちる
掠れていく視界の中で優希の死体が映る
その表情は死んでいると思えない綺麗な微笑みだった
「ご…めん…なさい…」
エリアもその場で気絶する
決着です。