鬼ごっこ(2)
更新遅くなりました…
鬼ごっこ終了です
彗達は時計台に到着する
そして困ったことがあった
時計台にはミッションを邪魔するものやチームの邪魔するものがいないことを確認してミッションをクリアしようとするものが大勢いた
しかしそれは彗達には関係がない
「違和感ってなんだよ!!!!!!!!?」
それが困ったことである
数年いる生徒ならともかくたった四回目の彗達に違和感がわかるはずもない
中に入ることはできないようにされている
外側から時計台を眺めるが何も違和感を感じない
時計台という場所の指定を広範囲に受け取った者は周囲を隈無く探している
「さっぱりだ…」
『あと三分~』
面白そうな飛影の声
残り時間は少ない
「あれだ!!!違和感を探すんじゃなくて兄ちゃんがどんなことをするか考えて探そうぜ!!!」
時計台を知るものではなく
飛影を知るものとしての攻略法
「それぐらいしかないか」
「そうしましょう!」
火月の提案に二人も納得して頷く
「っ!!!!?」
彗は背後に気配を感じ跳躍
魔術の炎の槍が彗がいた場所に突き刺さる
三人は一斉に魔力を解放し身構える
流れ弾ではないことは放った生徒が笑いながら彗達を見ていたことで理解する
「何か用か…?」
彗は一歩前に出る
それだけで軽くたじろいで一歩後退する生徒は彗を睨みかえす
「鬼は他の奴の邪魔をしちゃいけないなんて言ってない!!!」
魔王と共闘できるのは確実に勝利を納めることと同意だ
「なるほど…な!!!」
再び魔術の炎の槍が彗に放たれる
彗は回避するために一歩横にずれる
だがそれよりも速く火月がその斜線上に移動していた
「ふん!」
炎の槍に応対するのは火月の魔力を込めただけの拳である
だが火月の一撃に炎の槍は容易く霧散する
「な…!」
「遅い!!!」
次の魔術を放つ前に火月は接近
魔術は必ず発動させるための予備動作が必要になる
その予備動作中に接近すれば大きく接近できる
ギリギリ間に合った生徒は火月に炎の玉を放つ
それを大きく屈みながら避けると同時に足払いをかける
相手が接近しているのに魔術を放った生徒は火月にとっては愚の骨頂である
踏ん張りを入れてすらいない生徒は容易く宙を舞う
火月はそのまま態勢を起こしながら回転し回し蹴りを胴体にぶち当てる
「が…」
そのまま数メートル吹き飛び気絶する
「よし!!」
小さくガッツポーズ
「強いな…」
「さすが飛影先輩から訓練を受けているのは伊達じゃないですね」
それ以上に彗が凄いと思ったのは炎に真っ向から向かったことだ
どんな生物でも火は恐がるものである
彗も反射的にとった行動は避けるであった
「よく炎に真正面から挑めるな」
純粋に疑問として聞く
火月の返事は簡潔で理解しやすいものであった
「兄ちゃんの炎に比べれば今のなんてゴミだゴミ!!!」
確かにその通りで比較するのすら烏滸がましい
彗は火月を軽く尊敬してしまう
「さて…どうするか」
そして気付けば周囲は魔術合戦が開始されていた
『終了~!!!ミッション失敗!!!俺らの初期値が二倍になった!!!』
そして時間切れ
『あ~黒鋼撤収~』
「はいよ」
飛影の言葉で空から黒鋼が降ってきた
着地地点は彗達の付近
「正解は短針と長針が同じ長さでした!!」
黒鋼が針に化けて短針の長さを長針と同じにしていたのである
普通でも違和感は感じるはずなので
あまり彗達に不利なわけでもなかった
「ばいちゅ~」
相変わらずの無表情で手を軽く振ると一瞬でその姿が消える
速度が速すぎて眼がついていけないだけである
「とりあえず…逃げるぞ!!!」
そんなことは彗にとってはどうでもいい
「え?」
「なんで?」
彗は焦っているが秋野と火月は理解していない
「飛影がくる!!!!」
『っ!!!』
二人がようやく理解した時にはすでに遅かった
「大正解~彗は正解だ…」
時計台を囲むように飛影とリタと息を切らしているコトハがいた
構わずに彗は魔法を構築せずに早急に逃げるために集中する必要がない魔力による身体能力の強化を行う
狙いはコトハの方向
《集固》
同時に秋野も火月の手を掴むとコトハの頭上を飛び越える
「…はぁ…はぁ……ちょっと逃がしちゃったわ」
「ちょっとじゃねぇし!!重要なの逃がしたし!」
「まぁいいでしょう飛影…【全員】捕まえれば良いのでしょう?」
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80分後
全てのミッションに失敗している彗達
抜け道すら見つからない
確実に4,000人あたりはすでに捕まえられている
「もう大半が捕まってますね……」
「あいつら今0.5%だろ?」
「強すぎだっつ~の!!!」
もう彗達の手に負えないほどに強さのレベルが上がっている
この鬼ごっこをクリアするにはミッションをクリアして飛影達を封じることしか可能性が無かったが
どのミッションもクリアは着眼点を変えることで容易くクリアできるものだったがいずれも邪魔が入りクリアすることができないでいた
「抜け道…」
彗は改めて考える
屋上で輪になって何かを考える
「……そういえばなんで4,000人捕まってるんだ?」
ふと火月がぼやく
「先輩方に捕まったりしているからじゃ?」
火月の疑問に秋野は普通に返す
「!!?」
だが彗が何かに気付く
「そうだ……確かにおかしい…5,000人を二対一で分けた…逃げるやつと鬼に…」
だがそれだと
彗の中でピースがはまっていく
「単純に計算しても多くて…3,500人も逃げるやつはいない…それが今4,000人捕まってるってことは…」
ぼそぼそと考えをまとめる
秋野と火月はまだ理解できていない
今までの二回の試験の抜け道を探し当てたのは彗である
彗が探し当てようとしているのを見守っている
「三人チーム…二対一…右側は逃げろ…左側は組んだ奴を追え…100秒後スタート…捕まったらチーム全員がアウト……鬼として俺達が追いかける…レベルが上がる…佐藤が攻撃した時に狙いはいい……!!!」
彗は全てを理解した
「くそ!やられた!!!」
地面を殴る彗
「この鬼ごっこ…すでに詰んだ…」
悔しそうに頭を掻く
うだぁと寝転がる
「どういうことですか!!?」
「やっぱ…飛影はすげぇよ…この試験…鬼は三人だけだ…」
『へ?』
寝転がったまま彗は抜け道でありこの試験の本質を説明する
基本的にこの試験は三人組で行うこと
二対一で分かれたことに意味はない
この試験は三人組で行うものであるからだ
右側は逃げる
左側はそれを追う
上手い言い方で一度も追う側を鬼とは言っていない
チームとして行う試験であるため時間差をつけてスタートさせるものだから
当然飛影達から逃げるために先行する方は逃げる
後からスタートする方はそれを追って合流しなけろばならない
そして与えられた8分20秒
その時間を使って合流してクリアのための考えをまとめる
それがこの試験の本質である
考える時間が足りない場合はミッションをクリアして飛影達
鬼の強さを抑えることで考える時間が延びる
秋野が攻撃を放ち飛影はそれに対して狙いはいいと言った
この試験は5,000対3の戦いだったのだ
飛影達が弱いうちに気絶させることで二時間逃げ切ることができる
途中のミッションや飛影達を気絶させることができたものは印象に残る
「この鬼ごっこは飛影達三人だけから逃げる試験だ、気付けば一番簡単で一番難しい」
すでに飛影達の強さは倒すことが不可能なレベルになっている
だがこれが最初なら容易く気絶できた
なのに試験の本質をわからずに勝手に鬼だと勘違いして足の引っ張りあいを繰返した
「やっと気付いたの?遅いわね…けど貴方達が一番最初ね」
『!!?』
三人が声のする上を向くと
空にコトハが浮かんでいた
同時に巨大な氷が降り注ぐ
魔術によるものである
鬼に触れたらアウト
それは攻撃に触れてもアウトなのか
「そんなことないわよ」
彗のそんな疑問に気付いたコトハが微笑む
しかしその魔術の威力
意味が分からないほどの威力
氷が爆散
爆散を繰返し礫になり襲いかかる
その礫の一つ一つも巨大化し半径一メートルほどに
それはすでに礫といえる大きさではない
《限界突破・全身強化》
《集固》
襲いかかる氷を彗が弾く
その首根っこを火月が掴み弾いた後にまた行動できるように彗の身体を動かし
氷の僅かな隙間を通り抜け秋野がコトハに接近した
「…やるわね」
一瞬でそこまでの反応ができたことにコトハは少し驚いてしまう
「とりあえず落ちてください!!」
《集固・エアロバースト》
コトハがいるのは空中
戦うことができるのは秋野だけである
風を圧縮して指向性を持たせ放つ
その一撃をコトハは危なげなくするりと回避して屋上に着地する
「え?」
秋野が落とそうと放った一撃は避けられたが狙い通りに地面に着地した
外見上コトハは近接戦ができるとは思えないほど細い
「無傷は凄いわね」
屋上や校舎は見る影もない程の破壊されているが全員が無傷
「どうも」
無傷ではあるが腕や足が痺れている彗
「今の魔術だよな…」
少し時間を稼ごうと彗は話しかける
その間に秋野も着地してコトハを挟む
「魔術よ…私が法則性を見つけて改良したオリジナル」
「だからか…」
彗は納得する
込められた魔力が今までと桁が違っていた
魔力消費を増大させ威力と効率を重視した魔術
「……ひ~くんに怒られちゃうわね」
損害がかなり大きい
「ちなみにあんたを直接攻撃したらアウトか?」
火月の疑問
彗と秋野はまだ触れずに攻撃することはできるが火月にはその術がない
「全然攻撃していいわよ…気絶したらアウトにするから」
微笑みながらコトハは魔力を解放する
《クルーズ》
「安心しなさい…私はあの中で一番弱いし、貴方たちと同じ反則級だから」
巻き戻ったかのように校舎が修復されていく
あの魔術を見た瞬間にすでに戦略は決まっていた
接近戦以外は勝ち目がない
だから彗達は僅かな時間差をつけて前後から攻撃を放つ
時間で言えば一瞬である
「戦略はいいわね」
柳のようにコトハは全ての攻撃を回避する
余裕の回避である
しかも0.5%の実力だ
コトハはゆったりとした動きだが一撃すらかすらない
無駄な動きを無くし効率性を重視したものである
《限界突破・フル強化》
《集固・乱舞》
だが三人を相手にすれば絶対に避けられない攻撃は生まれる
秋野と火月で絶対に避けられないよう態勢になるように攻撃で誘導させ
「うぉら!!」
彗が全力で拳を振るう
完全に直撃コース
手加減できるほど実力差はない
ゆえに拳はコトハの顔面に突き刺さる
《クルーズ》
はずだった
「惜しい」
いきなり眼前から姿が消える
声は背後から聞こえた
彗が振り替える前に掌底が彗を捉えて吹き飛ばす
「先輩!!」
僅かに秋野の注意がコトハから離れる
《クルーズ》
「私から目を離すのは駄目よ」
眼前にコトハが一瞬で現れる
鳩尾への軽い衝撃
「っく……」
それだけで秋野の意識は飛ぶ
「視線、力の入れ具合、気配、魔力…全てを観察し避けに徹すれば大丈夫よ」
残ったのは火月だけ
「まぁあれね…気付くのが遅かったのよ…ピカピカも話聞くまでわからなかったし」
開始30分以内に気付けば余裕で勝てた試験である
「ピカピカ?」
そんなことより火月が気になったのはピカピカという単語である
「集中途切れた」
《クルーズ》
再び鳩尾に一撃
後ろに跳んで衝撃を逃がそうとしても身体が動かない
「くっ……そ」
そして火月も気絶
「あっさり勝っちゃったけどいいのかしら?ひ~くんは戦っとけって言ってたけど」
コトハも彗達と同じ反則級
そして飛影達と同じく一%未満で戦っていたが
コトハは無傷である
「戦いにもならなかったわね」
溜め息を吐くコトハ
ちなみにであるがピカピカはリタのことである
光のキュリクレイでピカ
光速の神の翼も光速の光でピカ
合わせてピカピカである
「さて…残りの生徒を」
捕まえようと考えるコトハだがその前に花火が上がる
それは確保終了の合図で
終了時間になる前に5,000人確保終了したという証明だった
はい、そんなわけで…鬼は三人だけだということで
簡単でうざい屁理屈で申し訳ないです
次はクラスが決まっちゃいます