茶原を探して
休日話で
飛影とレインです
休日
雲ひとつない良い天気
港の方には青い海が広がり
空は青空が見えて
飛影の隣には青い顔があった
真っ青と言っても良いレベルである
(ど…どどどどどどどうなったたたたらり)
心の中でも壮絶な緊張に伴い焦っているレイン
先輩のコレットと同室のレイン
部屋にある紅茶の茶葉が切れてしまい買い出しを任せられた
本当はコレットも行くつもりであったが急遽仕事の用事が入り
メリア育ちではない片田舎からでてきたレインには場所がわからない
そこに偶然通りがかった飛影
コレットは丁度いいとレインに飛影という存在に慣れさせるためと道案内に飛影に頼んでみると二つ返事でOK
コレットとしても道に迷わせることが無くなり
飛影としても暇が潰れてラッキー
というところであり
そして現在城下町
私服に身を包んでいるレインの隣にいつも通りにてきとうな服に黒のコートを着ただけの飛影
先程から会話はない
飛影が何か話しかけようとするとさらに顔を青くする
気絶しないだけまだマシであるが隣を歩いている二人の距離は一メートル
これは隣を歩いているというのだろうか
と飛影は疑問に思いながら歩いていく
(まま…まままおぉうさまが隣に!!!隣にいるぅぅ!!!一緒に歩いているぅぅ!!!)
片田舎からでてきたメリア国に憧れていたレイン
小さな頃からの夢として城で働きたいと思ってようやく夢が実現した
そして先輩であるコレットに教育してもらい一生懸命に仕事をこなすレイン
メリア国で働きたいのが夢であり
魔王である飛影と話をすることも夢であった
(なななななにかか!何かお話をぉをししななければばばば)
大変頭の中が切羽詰まっている
レインにとって魔王は雲よりも遥かに上の人物である
アイドルとはレベルが違う
魔界にもアーティストもいて当然アイドルグループもいる
そういうものに興味がないレインとしてはどんなものかわからないが
アイドルと会ってもここまで緊張はしないだろう
(うぁぁぁ!!!魔王様にご迷惑がぁぁ!!!私なんかと一緒に歩いているせいでままま王さまの風評に傷ががが)
飛影と一緒に城下町へと行く者は基本的に見られる
好奇心からくるものである
ずっと顔が真っ青になっているレインは具合が悪いのかと思われているがそんなことはない
むしろ元気である
「……レイン、あれうまそ…?…いない」
飛影はさすがに顔が真っ青すぎているのでレインが心配になり
てきとうなファーストフードども買おうかと思って振り向くが影も形も無い
「ありぃ?」
付近を見るがいない
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「……あれ?ここは?」
その頃のレイン
飛影が曲がった通りを気付かずに直進して路地に入っていた
迷子
メリア国の道を知らないレインはその路地がどこかわからない
自分の進んでいる路が少し不良の溜まり場になりつつある場所に続いているとは知らない
「……迷いました」
迷子になったら来た道を戻ればいいだけであるが、思考に夢中になりすぎて来た道がわからない
なんとなくで進んでいると少し拓けた場所にでる
出口かと思ったレインだが瞬間的に硬直する
気合い入っている不良さん達の溜まり場であったからだ
五人でだべっている
「……」
人がいるのだから道を聞けばいいとは考えるレインだが
ギロリと5人程に睨まれ終了
自然と足が後ろに下がるが
レインはかなり可愛い
そしてその溜まり場には人が滅多に来ない
声も届かない
不良達にとっては獲物でしかない
不良達は立ち上がりゆっくりと距離を詰める
レインはそれだけで足が止まった
(…まずいまずい!!まずいですこの状況!!!)
距離は二メートル
足が震えて動けない
どうしようもなくて眼を瞑る
そして力強い手がレインの手を掴む
「…や!」
必死に振り払おうとするが意味は無かった
そしてそのまま引っ張られる
後ろに
「やっと捕まえた…」
雲の遥か上の存在がレインを捕まえていた
飛影の登場に周囲が静まり
リーダー格の男が黙ったまま飛影に近付く
指の骨を幾度も鳴らし準備を整える
「……」
レインを避ける形で横に回り込む
「あの!!!めっちゃファンです!!!握手してもらってもいいですか!!!?」
頭を下げて手を差し出すリーダー
飛影は不良などによく憧れを抱かれる
絶対強者級としての強さ
メリアを守るヒーローのような存在
強さに憧れる子供や不良達にとって最上の存在である
飛影は黙ったまま手を握り二回縦に振る
「うぉぉぉぉぉ!!!!やべぇ!超やべえ!!!!」
物凄く興奮した様子のリーダー
次々に握手を求められ全員と握手をかわす
『魔王さんの連れとは知らずに申し訳ありませんでした!!!!』
そして素直にレインに頭を下げて全力で謝罪する
ちなみにレインは現在、先程と全く同じ態勢で飛影に手を捕まれ寄っ掛かっているような態勢である
起こっている現状に脳が対応しきれずそこまで頭が回らない
「へ………いやあの…別に大丈夫です」
慌てて釣られて頭を下げるレイン
「え~と…とりあえずだ!!!お前ら今度から弱者を狙うな」
飛影は誰にでも平等ではない
一番好きなのは家族や友達(屋敷に住んでいるものやセリエやエリア含め)
二番目は気に入った者(コレットやレイン含め)
三番目にメリアの国民
である
他は知らないゴミだという考えである
さすがに三番目に入っている不良達だが二番目の方が優先される
手を出していたら飛影が出し返していただろう
「狙うなら対等のやつかそれ以上のやつだ…間違っても戦えないものは止めろ」
戦えないものは戦えるものに守られる存在
それが飛影の考えである
『はい!!!必ず守ります!!!』
即答異口同音ハモり
「んじゃ買い物の途中だから」
言いたいことを言い終わると飛影はレインの手を引いて路地からでる
基本的に今のメリアの道は路地などは特に飛影とセツネが面白半分に設計したもので知らない者は必ず道に迷うように設計されている
飛影は道の設計者であり熟知しているためすぐに路地から出ることができる
「全く…考え事して歩くのはいいけど周りは見なさいな」
はぐれた瞬間に飛影は風華で周囲を捜していた
もう少し遅ければ危なかったであろう
「申し訳ありま」
魔王に余計な手間をさせてしまい申し訳ない気持ちになり頭を下げた瞬間に見えたのは自分の手
「……」
固まる
手を繋いでいた
繋がれ先は目の前にいる飛影
「あわ……あわあわわわわわあわあわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ」
顔を真っ赤にし真っ青になり、さらに真っ赤にし真っ青になりを繰返し
その場で卒倒する
「あ……気絶した」
手を掴んでいた飛影はそのままレインを誘導し背負う
(道案内も兼ねてなんだが……)
レインはしばらく起きそうにない
強制目覚ましは常人に行うと強制他界か強制精神崩壊になるため実行できない
「……まぁいいか今度で」
はぁと溜め息を吐き飛影は目的地の紅茶の茶葉専門店へと歩を進める
城へと戻るとコレットが出迎える
「あぁ~やっぱりですか」
半ば予想していた通りになっていた
「昔のコレットみたいだ」
コレットも新人時代に今のレインと同じように出掛けて同じように戻ってきた
「う……また古い話を…」
今でこそ普通に接しているが新人時代はレインに負けず劣らずという感じである
唇を尖らせる
「アハハ!」
「……とりあえずレインをベッドに寝かせてあげましょう」
いつまでも飛影の背負わせるのはさすがにあれなので飛影とコレットは部屋に向かう
部屋についてレインを降ろそうとした飛影だがホールドされていて自然にはとれない
「ホントにコレットに似てるな…」
飛影にとっては少し前のことで今でも思い出せる
「え!!?私もやりましたか!!?」
その時は寝てる立場だったコレットの記憶にはない
「やりましたよ」
飛影は慣れたように風華を発動する
風華でレインを固定し飛影が屈むことでするりと抜け出せる
そしてそのままベッドへと寝かせる
「手慣れてますね」
「エリアで慣れた」
エリアも小さな頃から飛影の背中で寝ることが多く
起こさないように寝かせなければいけないため慣れていた
「エリア姫も同じような感じだったんですか?」
「もっと難しい」
エリアは生まれた時からの魔法使いで魔法に敏感である
さらに寝ていても飛影には気付くため今のようにすると起きるか泣きじゃくる
そのためホントに無理な時は一時的に炎舞で人肌の熱を再現
起きて飛影がいないと泣くため、朝までには用事を終わらせる
用事が無いときはベッドに寝かせて一緒に寝る
「あの頃は多忙だった…」
懐かしむ飛影
「そういえば噂でエリア姫を背負いながら鬼ごっこしたって聞いたんですけど」
「あったな…あれは」
飛影は懐かしいフレーズとともに記憶が泡のように浮き上がり
「あ…」
閃いた
飛影は立ち上がりコレットの頭を撫でる
「…サイコ~コレット超感謝、面白いこと思い付いた」
ニヤリと笑う
「役にたてられたなら嬉しいですけど」
飛影のその笑みは即退避して傍観者になるのが正しい
「ウヘヘ…準備しよ…コレットまたな」
にやつきながら飛影は部屋を出ていく
「……犠牲者さんごめんなさい」
コレットにできるのは不明な犠牲者に謝ることだけであった
何かいいことを思い付いた飛影です