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ハチャメチャ魔王  作者: 火憐ちゃん
個人編
59/110

復讐者

暴走してしまいました


「ヒヒ!!強いですね~強すぎだろうが!!」


「お前が弱いだけだ」


少女が持っていた巨大なハンマーはすでに粉砕されている


満身創痍


それが少女の現状


対してのダドマは無傷とまではいかないが軽傷程度である


「くそがぁ!!!」


《からくりマリオネット》


少女は魔法を発動


《天変地異・水双爪矛》


ダドマの右手の指に魔力が集中


一振り


指から水で創られた爪が空間を切り裂く


「くそ!!!」


表情を歪ませ後退し身を屈ませて爪を回避


ただのダドマの空振りではない


「種は見切ってんだよ…お前の魔法は糸を創る魔法だろ?デカイハンマーで相手の視線を集中させて本命の糸で切り裂くか、もしくは糸を絡ませて操るとかもできるな」


「っ!!」


舌打ちは肯定を示していた


ダドマの攻撃は糸を切り裂いたのだ


ダドマが少女の魔法である《からくりマリオネット》を見たのはたったの三回


三回で看破した


「最初はリタの傷見て刃物かなんかだと思ったんだがな…」


ダドマは水を統べるもの


空気中に不可視の霧を発生させ攻撃の種類、速度、角度を判断することができる


そのため《からくりマリオネット》の攻撃を察知できたのだ


「くそが!!こっちの攻撃は破壊するし、魔力は減らないしどういうことですか!?」


「俺は神龍だ、人間の理から外れたやつには負ける気がしねぇ」


《からくりマリオネット》


ほぼ可視不可能の糸をこっそりと張り巡らせる


「無駄だ」


《天変地異・糸切り刃》


張り巡らせる度にダドマはその糸を切り裂いていく


「…多分お前運が良いぞ。他の連中なら話も聞かずに殺されるからな」


ダドマはこの戦いで自分からは仕掛けていない


「あ?」


「とりあえず俺はダドマだ」


自己紹介


すでに総魔力の5割失っている少女


勝ち目が無いことは明白である


「……ユリ」


少女


ユリは魔力は解放しつつも腕を降ろす


戦う気はもう見受けられない


「ユリか…お前なんで飛影に怨みあるんだ?ちょっと面白そうだからな…それで面白かったら生かして、飛影と戦わせてやる」


「は?」


とユリは硬直する


「あんたら仲間じゃないの?」


仲間だと思っていたからこの学校を狙ったのだ


「仲間では無いな…友人とかのレベルだな」


「意味がわからねぇ」


友人を売ろうとしているように思える


「まぁ興味本意だな…ってなわけで話せ」


それは頼みでは無く強制的な命令


命令に背けば死ぬのは理解していた


話せば飛影と戦える


話さない理由は無い


「両親が殺された…」


「へぇ」


「国ごとあいつに滅ぼされた。あいつは笑ってやがった。」


「ほぉ」


「それだけであいつは殺したい…私は全て無くなった」


ユリはポツリポツリと語る


その日は雨が降っていた


滝のような水量で国の誰もが家にいた


雨雲がいくつも重なり空を見上げても太陽の光は全く照らさない


そんな天気だった


ユリはその当時は14歳で学校も休みになり


両親も仕事が雨が強すぎるため休みで一家揃って楽しく話していた


そんな時間


ユリにとってそれは幸福な時間であった


そして唐突に滅びはやってきた


空が明るくなった


光が戻り家を優しく照らす


晴れたのかとユリは笑いながら窓に近よりそれを見た


空が赤い炎で埋めつくされていた


それはあまりにも綺麗で幻想的で眼を奪われた


「綺麗」


子供だったユリにとってはそれが素直な感想であった


ふと気付くと自分より少し年上な少年が空に浮かんでいた


その少年が笑った瞬間


幻想的な景色が落下した


豪雨が降っているにも関わらず炎は消えずに降り注ぐ


「え?」


一瞬だった


僅か10秒足らずで国は炎に包まれていた


記録的な豪雨に意味がない


水は炎を消すが


水を消すのも炎だ


少女の眼が覚めたのは次の日の朝


見渡す限り焼け落ちた建物


肉が焼けた臭いが国中を包んでいた


生存者はユリだけだった


ユリはもともと魔力が高すぎる少女だった


そして自分の危機に対して魔力が覚醒した


自らの身体を魔力で包むことによって生き残れたのだ


だが少女は自分が生きていることはどうでも良かった


風の音だけが国に響く


「ひっ!!!」


ふと自分の家だったモノを見たユリは悲鳴をあげる


母親の焦げた黒ずんだ指と母親が大事にしていた指輪が見えたからだ


再び意識を失う


次に気付いた時はある男の背だった


「だれ?」


もうどうでもいい


なんでもいい


ただ気になっただけ


ユリの眼は死んでいた


「正義の味方だ」


男はそう返した


「正義…馬鹿みたい」


この世に正義なんてない


それは一番ユリが思ったことだ


正義のヒーローが入ればあんなことが起きる前に止めて欲しかったのだ


ユリは再び眠りにつく


ユリを拾った男の名前はハイト


外見は26歳


魔力が高いものは老化も遅くなる


ハイトの実年齢は98歳である


ギリギリ絶対強者級ではない実力者で職業は勇者であった


「…魔王?」


明るい性格なハイトと過ごし少しづつ心の傷が治ってきたユリ


ある日の夜のこと


ハイトがユリの国を滅ぼした者を教えてくれた


「そう…魔王だ、傍若無人の悪の化身…俺が絶対殺さなければいけない相手だ」


ハイトの眼が少し怨みのこもった眼になる


だから気付かなかった


「教えて……」


「え?」


それはギリギリ絶対強者級のハイトの背筋を凍らせた


「戦い方…教えて…あいつは私が殺す」


眼が怨恨の塊であった


深い深い


黒い黒い


憎しみ


「あ……あぁ」


ハイトは頷くしかできなかった


20年ほど


ハイトはユリに戦い方を教えながら魔王を追っていた


そして追い付いた


場所はメリア


セツネという王女が統治している国


大国の部類に入る


というよりも現在は何でも世界一の国を目指して活動中らしい


「ここだ」


「ここ?」


そこはユリの故郷の隣国であった


灯台もと暮らし


「…ここにあいつがいるんだよね」


見上げるは城


おおらかな国で城の中までは無理だが周りまで入るのは良いらしい


ユリの眼が鋭く細まる


「とりあえず呼び出す」


ハイトは敵意を含めながら魔力を解放する


反応はすぐに返ってきた


「あ~すまんがなんかようか?」


城の窓から飛び降りてハイトの前に着地する


短髪ショートヘアー 身長は170cm 歳は30歳程の外見で無駄な脂肪はついていなく。身体も引き締まっている


顔の造形も整っていて格好いいとも綺麗とも言えるまさしく美形で


国王セツネであった


槍を持って対峙している


「すまないが、魔力を抑えてくれ、城の者が恐がっている」


「あぁ…すまない」


王としてのセツネの圧力にハイトは大人しく従う


もともと狙いは魔王だ


一般人に手を出すのは本意ではない


魔力を抑えるハイト


「それで…なんのようだ?」


戦う気はないためセツネは槍を地面に突き刺す


「ここに魔王がいると聞いたんだが」


ピクリとセツネは眉をひそめる


「確かに…いるな…何の用だ?」


いるという言葉にユリは眼を見開き臨戦態勢へと移行しようとする


「復讐…」



ハイトによって止められる


「復讐…ね…やめたほうがいい」


「…」


ハイトは何を知ったような口をとセツネを睨む


「お前らは強い…それはわかる。二人とも私以上に魔力を持ってる」


セツネは老化が遅くはなるが老化が止まるほど魔力は高くない


「だからこそ…命を無駄に散らすな」


セツネは羨ましそうにハイトとユリを見る


セツネの魔力的に限界でこれ以上は上昇しない


「私はアイツの域にいけなかった…それだけが謝りたいことだな」


最後のはセツネの独白であり一人言である


「…決意が変わらなそうだな…呼ぶぞ」


少し寂しそうな眼で復讐に囚われた二人を見る


《威雷》


雷が空に伸びる


「……どうした?」


すぐに魔王はセツネの隣に着地する


「復讐者だとさ…」


セツネが簡単に説明する


「あと任せて大丈夫か?」


今は忙しい時期である


仕事をさぼる時間の余裕分は無い


「いいぞ…すぐ行く」


「っ!」


その発言にハイトは剣で飛影に斬りかかる


ユリは出遅れていた


飛影のことを復讐したいほど怨んでいる


だが


対峙したときに身体が恐怖で硬直していた


飛影は黒く黒くどこまでも黒い刀


魔剣でそれを受け止める


「お前は自分が滅ぼした国を覚えているか!!!!!?」


「多分…覚えてんじゃない?」


ハイトは両手で剣を握りしめ魔力を解放し全力で攻撃し


飛影は軽く刀で受け止める


《光剣・漣》


剣を片手に持ちかえて空いた片手で光の剣を作成、握りしめ飛影に向かって振り抜く


「ふざけるな!!!お前は命をなんだと思っている」


「知らん、どうでもいいだろ?」


《炎舞・炎剣黒炎ver》


ハイトの光の剣は黒炎で創られた剣に両断される


「くっ!!!貴様ぁ!」


ハイトの攻撃を飛影は真正面から受け止める


「飽きたな」


ポツリと飛影が呟く


50回程攻防を繰り返した時のことだった


「馬鹿にするな!!!」


この世に正義と悪がいるならば飛影は悪であろう


逆にハイトは正義である


しかし現実は無情なもので


「ぐぁ!!」


ハイトの右腕が切り落とされる


正義が必ず勝つなんてことはありえない


「…」


痛みに怯んだところに更に追撃で左腕を切り落とす


「くっ…!」


「はい…終わり」


飛影は刀を鞘に納める


「命まではとらんから帰れ」


「……」


ユリは目の前の状況が理解できなかった


ハイトとは20年の中


強さは知っていた


それが遊ばれて負けた


「ふざけるな!」


《光剣・放》


怒りのままハイトは光の剣を放出する


それが飛影の頬をかすった


「……」


飛影は溜め息を吐く


「救えねぇな」


《炎舞・獄炎》


一瞬でハイトの頭を鷲掴みにし、炎を放出する


その炎はハイトを包み込み少しづつ焼いていく


「がぁぁぁぁぁあ!」


皮一枚づつ焼かれる


指の一本づつ焼かれる


いくら地面に転がろうとも炎は消えない


「お前止めろ!」


《からくりマリオネット》


ユリは糸を操り飛影へと放つ


「止めません」


《炎舞・炎壁》


炎の壁が糸を焼き付くす


ユリが何度も何度も足掻くが飛影の炎を越えられない


その間にもハイトは悲鳴をあげながら焼かれていく


「止めて!!!もう帰るから!!!」


ユリがここまで生きてこれたのはハイトのおかげである


復讐は諦めたくないが死なせたくない


暴力では勝てない


だからお願いをする


「いや無理…今回俺は優しいぞ…一回見逃してあげたにも関わらずケンカ売ったからな…二度目はないんだよ」


飛影の中でもう殺すことは確定していた


そしてユリはなにもできずにハイトの悲鳴を聞きながらただ死ぬのを待っていた


助けてくれ


それがハイトの最後の台詞でありユリの人格の最後であった


「こんなことだよ…私があいつを殺したい理由なんてね…他の連中も同じような感じだ」


「なるほどね~なかなか極悪だなあいつも」


笑いながら


ダドマが話を聞いた感想はその程度だった


「なんでメリアを襲撃しなかったんだ?」


ふと浮かんだ疑問


わざわざ探さなくてもメリアを壊せば飛影は必ずやってきた


「あれかな…国を滅ぼしたらあいつと同じになっちまうからだ」


「なるほどな…」


二回頷くダドマ


《天変地異・無限一手》


ダドマは魔法を構築する


「なっ!!!」


話せば飛影と戦わせてやるという言葉を信じたユリにとってそれは予想外だった


「面白かったらって言っただろ?実に不愉快だ…その程度でここが壊されたからな」


「この…」


《からくりマリオネット》


ユリは全魔力を込めて魔法を構築


咄嗟に防ごうとするが


「悪手だ」


半分以下のユリの魔力の魔法

全魔力を込めたダドマの魔法


防ぎきれるものではない


糸による防御は壁にもならず


ユリと共に一瞬でその存在が消滅する


「さて…どうすっかな」


ダドマはこういう性格です

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