今日の夕飯はカレーです
番外編ではないです
「眠いわ」
小さく欠伸をする少女
吸血鬼リーベ
「昨日も夜遅くまでお酒飲んでるからですよ」
その隣を歩く少女
メイドの優希
優希も付き合いで昨晩から朝の4時くらいまでお酒を飲んでいてその後寝たため優希も条件は同じである
しかし眠そうではなくむしろ完全に眼が覚めている
「私夜型なのよ」
吸血鬼だからそれもそうかと納得する優希
二人はそんな他愛も無い話をしながらぶらついていた
「おかしいわね?」
ふとリーベが気づく
「同じところだわ」
本当に無計画でぶらぶらと歩いていたが真っ直ぐ歩いていたにも関わらずつい一分前と同じ場所にいた
「ふぇ?…あっほんとですね~びっくりです」
あまり緊張感は存在していない
「ふ~む…無限回廊のようなものかしら」
吸血鬼の聴覚を最大限に発揮しているが物音ひとつない
「狙いは私か優希かしら…」
しかしそれにしては敵の気配もない
「ベターな感じだと…ここから出さないようにして他の誰かを狙うというのが一番かしら」
リーベの推測
しかし優希は何も反応なし
「どうしたの?」
くるりと振り向くと苦しそうな表情の優希がいた
「あ…大丈夫です!!ちょ~っと貧血ですね~夜遅くまで起きてたせいかと」
リーベの視線に気付くとすぐに表情は明るくなる
「…この空間作ったのは絶対強者級ね…漂う魔力が強いから呼吸がしにくいのよ」
「へ?またまた~脅かしても意味無いですよ~」
おちゃらけて笑う優希だが足取りはふらふらである
「しょうがないわね…」
溜め息を吐く
《黒霧》
リーベから霧が爆発したかのように発生し周囲を黒に染める
「半径500メートルくらいね」
霧が空間を覆いつくしたのは5秒後である
優希は呼吸が楽になり頭痛も止んだ
殺意も敵意も無いただの絶対強者級が作成した空間であるが、意思なき魔力も害はある
そこでリーベは誰か知らないやつが作った世界を自分の世界で埋めつくし乗っ取った
そのおかげで優希は体調が戻る
「あ~楽になりました!助かりました~」
「…きつかったなら早く言いなさいよ」
軽く指を動かし指弾の要領で空気を放つ
「へぶ!」
軽く殴られたような感覚
「超痛いです!!」
黒霧が覆いつくしているため暗闇である
優希は食らった方向からリーベの場所を割り出し何故か持っているフォークを投げつける
しかしリーベのいる場所は反対である
黒霧の中では自由に移動ができるリーベは指だけを移動させたのだ
「さて遊びは終わりにしてでるわよ」
「へ?でれるんですか?」
「出れるに決まってるじゃない」
優希からは見えないがリーベは不敵な笑みを浮かべる
「ここはもう【私の世界】よ」
パチンと指をならす音
それだけで空間が砕け散る
一瞬で元の世界に戻る
黒霧も共に
「ぎゃああ!」
「うわぁ!」
「おかぁさぁん」
いきなり半径500メートルが闇に包まれたのだ
混乱は当然生じる
「忘れていたわ…」
すぐに魔法を解除
光が戻る
「これでよし…」
「あやうく怪奇現象になるとこでしたね」
このことは内緒にしようと二人で頷き合った
「よっし!ちょうどいいとこに絶対強者級発見!」
空から声が聞こえた
同時に何かがリーベと優希の前に着地
どこか慌てたような無表情の少年
黒鋼である
「ちょっと絶対強者級に終われてるからヘルプ」
黒鋼はリーベの後ろに移動
そしてすぐにやってきた
「霧がでてるからなんだと思いましたけど普通ですね」
再び空から
アンジェレネと抱えられている杏だった
「これ?」
リーベはアンジェレネを指差す
黒鋼は首を振る
「紛らわしいわね」
危うく爪切り裂くところであったリーベ
「離しなさいよ~」
ジタバタと暴れる杏
しかしアンジェレネはほぼ無視
リーベは気にも止めない
「リーベさんどっちがいきます~?」
「ちょっと暴れたいわね」
黒鋼も入れて3人はある一点だけを見ていた
「りょ~かいです。じゃあ暴れる場所提供しますよ」
「あらほんと?助かるわ」
軽い世間話のような会話
三人の目線の先には男がいた
ガルシアと同じように長身でガタイが良い
30前後の傭兵のような男だ
「あれよね?」
「そうだよ」
男は五メートルほどの距離をあけて止まる
「その二人は結界に閉じ込めたはずだが……抜け出す程度は運が良いのか…まぁ無駄な殺生はしたくない…今逃げれば見逃してやる」
そして開口一番である
結界を張った男は自身が空間に関与することがそこまで得意ではないようでリーベと優希が出てきていることに驚きもしない
ピキリとリーベの額に血管が浮き出る
「殺すわ」
我慢を知らないリーベ
微笑んでいるがかなりひきつった笑みである
「その少年だけで良いのだがな」
溜め息を吐く男
《部分的移動()ショートムーヴ》
「ぅ……」
男は魔法を発動
同時にリーベが苦しげなうめき声をあげながら浮き上がる
男の右手だけが移動してリーベの首を絞めていた
男は魔法を解除する
「これでお前は一度死んだ。実力差がわかったら帰れ」
アンジェレネも黒鋼も優希も杏も表情がひきつった
リーベは今度こそぶちギレた
「ふふっ」
一瞬笑い姿が消える
高速接近したリーベは男の首に爪をあてていた
「……!」
僅かだが眼を見開く
「不意討ちで調子にのるんじゃないわよ…お前も一回死んだわ」
「…面白い」
嘲笑うリーベ
野獣のような笑みを浮かべる男
同時に魔力を解放
「ぎゃああああぁぁぁあ!」
アンジェレネは叫びながら二人に接近
二人の腕を掴み
《アンビリルワールド》
魔法を発動
強制的にアンジェレネの世界へ飛ばす
「アブナカッタです」
世界の耐久力的には大丈夫だが周辺がやばいことになる
学校や屋敷には結界があるため周囲の影響はまだ少ないが
結界もない住宅地で絶対強者級の魔力が敵意と殺意をもって解放するのならば周辺500メートルは普通の人間が運がよくて精神崩壊
運が悪ければ死ぬ
咄嗟にアンジェレネは魔力を使って相殺するように杏と優希を守った
「大丈夫ですか~?」
安堵の溜め息を吐きながら振り向くアンジェレネ
「ギャァアアアアアア!!!」
優希は無事だが杏が俯せで倒れていた
「大丈夫ですか!?」
すぐに駆け寄り身体を揺する
「誰のせいよ!!!」
勢いよく元気に起き上がる杏
アンジェレネは咄嗟に行動したため抱えていた杏を落としたのだ
「さて…お家に帰ってご飯の用意ですね」
優希の目の前には護衛兼荷物持ちのアンジェレネがいた
「カレーがいい」
「はい、了解です」
「う~ん」
悩むアンジェレネ
魔力探知するまでも無く学校の方で合計五つの絶対強者級の魔力が解放されている
(助けに行った方がいいかな…)
少しだけ悩む
「まぁいっか」
悩んだ結果はめんどくさい
「シーフードがいいです!」
「はいは~い」
ご飯にのみ思考を割り当てる
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そして
「弱すぎるわ…」
アンビリルワールドでは
欠伸をするリーベと血塗れの男がいた
「…化……物め」
リーベのとった戦法は簡単で猪突猛進である
たかが部分的な移動の魔法である
リーベの黒霧でもできることであり傷はすぐに再生するリーベにとって相性的にも実力的にも上だ
「あら?弱すぎる貴方が悪いんでしょ?」
リーベは右手の爪を伸ばし振りかぶる
男はすでに抵抗できる力など残っていない
「すまない…スキア」
それが男の最後の言葉だった
絶対強者級にもピンキリあります。
黒鋼は絶対強者級ではないので勝てないですが
リーベは普通に強すぎるレベルのため圧勝です




