危機と危険と殺し合い
む~つかしいです
「あ……」
唖然
彗は現状が理解できていなかった
中学の女子が飛影を訪ねたかと思えば次には恐怖が襲い掛かった
直前までの少し異質だが平和な日常が既に感じられない
グラウンドで粉砕された校舎を見ている彗
気付いたらグラウンドにいた
校舎を見る限り生存者はいない
昼休みの最初であったため体育の授業で外に出ていた生徒も校舎に戻っていた
あの少女はそれも狙っていたかのような最悪な時間帯でのこの現状
校舎のところどころに見える赤い肉
原形を留めていない人の姿
風上にいるため匂いは無いが
「ぅ…」
一瞬で日常が壊されたことに吐き気がする
「…彗さん、無事ですか?」
下の方から声がした
校舎を見ていたから気付いていなかった
「リタ…大丈夫……か」
言葉を失う
足元に倒れているリタは腹が裂けていた
内臓がはみ出ていて生きているのが不思議なほどの重傷である
「ちょっと油断してしまいました…死にはしないと思います」
笑うリタだがその表情に余裕はない
同時に二つの箇所の瓦礫吹き飛ぶ
「なんだいきなり…くそいてぇ!」
「ヒヒ!!皆殺しのつもりだったんだけどなぁ!!生き残りいましたかぁ!」
ダドマと少女であった
額を出血しているダドマの傍には無傷の秋野と椿
「…おいリタ無事か!?」
ダドマは方舟を使い一瞬でリタと少女の間に移動する
「あれ?シーレイがいないですけど…」
椿の護衛はシーレイのはずだがその姿は見えない
「あぁシーレイならなんか潰さなきゃいけないやつがいるらしい」
そうダドマが告げた瞬間…
中学の方で合計3つの絶対強者級の魔力が解放される
さらに同時に飛影の屋敷の近くでも二つの絶対強者級の魔力が解放される
「ヒヒ!!祭りですね!最高だぁ!!!あなた達全員血祭りにしてあのクソヤロウに見せつけてやる!!!」
巨大なハンマーを構える
可愛らしい外見を壊れた笑みで全てをぶち壊している
ダドマは溜め息混じりに深く息を吐く
目の前の敵に意識を集中させる
「リタちゃんこれのんで」
椿が渡したのはというよりもリタに無理矢理飲ませたのは飛影がもしもの時にと頼んだレア度は最高
世界中を捜しても一つもない回復藥である
「だ…大丈夫……」
本当は吐き出したいがレア度と効力的に吐き出せない
「大丈夫じゃないよね?神様でも人体の構造は似たようなもんだし…あの傷は死ぬよね?」
椿の言うことは正しい
あのリタの傷はもって一時間だった
しかし逆に一時間はもつ
椿がその回復藥を持っていることは知っていたリタ
だからこそ一時間は待って他の重傷になった者に優先してほしかったのである
「私よりも先に優先すべき」
「うっさい!」
物凄く怒りの表情
「ダドマさん、あとよろしくできる?」
「任せろ」
ダドマは目の前の少女を睨み付けている
「屋敷までお願い」
「あいよ」
《方舟》
ダドマは椿、リタ、秋野、彗を飛影の屋敷まで転移させる
「さて…おいそこのガキ」
「ヒヒ!!なんですかぁ~?怖い怖い怖いなおい!!!」
口調が安定していない
ただの頭がイカれているのかそれとも挑発のためか
ダドマにはその判断はできない
「よくも俺の遊び場壊してくれたな」
「あぁっ!!?遊び場だったんですかーそれはスーマセーン…まあただの人間だろ?そんなことは気にする必要ないですよ~」
謝罪の一言はどこまでも軽い
死んだのは高校の生徒と教師ほぼ全員
約700人程度
絶対強者級からすれば雑草をむしりとった程度である
それは正しい
ダドマも同意見である
「…ここまで壊されるとな…修復よりも世間体が面倒なんだよ」
学校の修復自体は一分もかからない
だがここまで粉砕し、さらに生徒も教師も大量に死んでいる
そんなとこに誰が生徒を預けようとするか
「んなこと気にしない気にしない♪ガンバれ!!」
完全に他人事
ダドマは確かに人間はどうでもいい
だが学校という場所が壊れるということは
ギルギアや飛影やリタ
彗や秋野や椿【で】遊ぶことができなくなった
「さて…とりあえず、何が目的だ?」
臨戦態勢はすでにとっている
高校の敷地に結界を張り外からの干渉を拒絶する
「あぁ?目的ぃ!!?決まってるじゃない!!!あのクソヤロウを絶望まで追い込んで殺すことだよ!」
「クソヤロウ?」
「あぁクソヤロウだ今は飛影って名前のクソヤロウだ!!!あいつは仲良しこよし!!はっ!いいご身分なヤロウだ!」
(あのヤロウ…厄介事押しつけやがって)
ダドマは心の中で舌打ちをする
「それで?なんでこうなった?」
「あぁ?ヤロウを絶望させるには周りを全殺ししてからでしょ?」
ようやくダドマは合点がいった
「…なるほどな、まぁ昔なにやらかしたかは気になるが…その口はもう開かなくていい」
「そ~ですね~」
くるくると自分の背丈程の巨大なハンマーを肩に担ぐ
これから始まるのは殺し合い
殺るか殺られるか
「ヒャハ!!!」
《天変地異》
「ヒヒヒヒ!!!」
《からくりマリオネット》
笑いながら激突する
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「ふむ…どうしたものか」
ダドマと狂った少女が激突する少し前
ギルギアは物凄く困っていた
高校の校舎から爆発音と知らない絶対強者級の魔力が解放されている
それはかなりどうでもいいことで軽い現実逃避である
中学の校舎はワーウルフの集団に襲われていた
ギルギアは授業見学という形で火月の護衛をしていた
最初は一匹二匹だったので重力を空に向け上に吹き飛ばしてブラックホールの中にぶちこんで処理をしていたが
さすがのギルギアでもいきなり100を超えるワーウルフが転移して更に遠距離で建造物も生徒も破壊してはいけないのであれば守りきれず校舎への侵入を許した
「ふ~む…しょうがないのう」
中学の校舎中がパニックに陥っているがギルギアは頬を掻くだけ
「火月…我の背中にしっかりとしがみつけ」
遠距離では無理だと判断
護衛対象である火月を一人にすることはできず最終手段
「お…おう!」
こんな状況でもパニックにならず少し慌てているが指示に従う火月にギルギアは軽く微笑む
(あのチビが選んだだけはあるみたいじゃの)
ギルギアはもう人の目を気にしない
少しだけ龍の形態に戻る
尻尾が背中にしがみついている火月を落ちないように支え、龍の翼が火月を軽く覆い攻撃から守らせる
「しっかりと気を引き締めるんじゃぞ」
「お…おう!!」
しがみつく力が少し増す
天性のものなのか魔力を自然と火月は解放し纏う
「ふむ…」
《グラビティ・重拳》
ギルギアは調子を確かめるかのように付近にいたワーウルフを全力で叩き潰す
「生きてるかの?」
「…なんと…か」
火月の反応に満足したギルギアは魔力を全解放
「よいことじゃ」
「……」
今度こそ火月は気絶した
個人話が個人戦になっちゃいました