護衛と危機
ちょっと路線変更です
「準備はいいかぁ!」
『おぉ~』
準備万端な面々
飛影の屋敷の食堂
屋敷に住んでいる面子にダドマとギルギアとアユリと彗と秋野が追加されて集まっていた
飛影と椿の過去話
今まで聞いたこともなくかなり気になるものである
椿以外の唯一知っている黒鋼は無表情に眺めている
「でも椿…飛影がいないのに話しても大丈夫なの?」
と椿が思っていたら黒鋼は口を開いていた
しかもその言葉は椿を容易に停止させていた
「……」
ゆっくりと考える
喋るつもりだった話を頭の中で反復させる
「ダメっぽい」
15秒ほど考えていた椿
結論は無理であった
「えっ!!?私仕事頑張って終わらしたのに!!?」
一番辛いのはアユリである
激務の中で自分の仕事だけ終わらせ他の全てをラインに押し付けてきたのだ
「う~ごめんなさい…多分飛影いないとちゃんと説明ができない…」
深々と頭を下げ全身全霊誠心誠意を見せ謝罪する
「…6日後」
飛影様はあとどれくらいで戻ってくるの?とアユリが聞く前に答えるシーレイ
他の面子もシーレイが何を言っているかは理解した
「わかったわ…ちょっとそれに合わせて仕事してくる」
どうしても聞きたいアユリ
今から仕事をこなせば一日休みを取ることは容易い
さっそくとポケットから転送札を取り出す
魔界・天界・人間界のいずれかに転移できる代物である
高価であるが買うことができるためレア度は低い
「使わんでも送ってやるぞ」
勿体無い気がしたダドマはそう提案する
「あらま…ありがたいわ」
金はあるが取り寄せる労力を考えるとダドマに送られた方が楽である
「許可寄越せ」
ダドマの方舟では同じくらいの実力者だと許可がないと転移できない
「許可するわ…あぁあと不穏な影に気をつけて」
最後に意味深な言葉を残して去っていった
「どういうことじゃ?」
アユリの言葉に反応したのはギルギア
「あ~それあれだな」
彗が今日のことを話す
ワーウルフについて
アユリがいなければ殺されたことを正確な事実として話す
「…シーレイ…飛影が帰還するのは6日後ですよね」
「…うん」
最初の方はただのワーウルフの暴走かと考えていたのだが
そんなことは今のリタにはどうでも良い
彗が言った
あと少しで死んだとの言葉
リタは……正確にはギルギアと火月と当事者であった秋野以外が固まる
「とりあえず飛影が来るまでに解決しなきゃな…今の話は口外禁止」
殺されかけたと彗か秋野が飛影に話した瞬間の反応は決まっている
付近にいるもの全てを殺すくらいのことはするだろう
それが容易に想像できる
ダドマは安全確保のため犯人を見つけて殺すために動く
「とりあえず絶対強者級は全員強者級以外と必ず共に行動すること」
とりあえずの安全策
今の集まっているメンバーは全員普通の人間ではないとはいえ
例え半数が絶対強者級でも半数はそうではない
絶対強者級がつけば大体のことはできる
「とりあえずは…仕分けだな」
10分後、仕分けが完了した
彗はリタ
秋野がギルギア
火月がダドマ
杏はアンジェレネ
優希がリーベ
椿がシーレイ
単独黒鋼
この構成は完全に敵を粉砕するための構成である
「ちょっと付近確認するか……」
ダドマは魔力探知をする
ちょっとの探知の範囲が100キロほどである
「いねぇな」
しかし探知の範囲内に怪しい魔力は感じ取れない
「とりあえずは明日にしましょう…今日はここに全員泊まってください」
すでに外は夜
暴れるにはちょうど良い時間だったのだが相手がいないのならば意味がない
飛影の指示で飛影がいない時はリタが屋敷の全てを任されている
この屋敷は豪華な見た目とは逆で要塞と言っても過言ではない
さらに言えばこれだけの絶対強者級がいれば安心である
今のこの屋敷は全次元…全宇宙で一番安全である
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次の日、学生の身分の者は普通に登校する
学生の身分ではない、ぶっちゃけ暇人達は街へ繰り出す
暇人構成は杏達と優希達である
ニグループは適当に分かれ遊び…ではなく敵の炙り出しのためにしょうがなく街で遊んでいるように見せている
「さて…では彗さん、お昼ご飯をご一緒しませんか?」
「あ…あぁ」
リタと彗
現在昼休みである
今のところ何も異常はないが彗は窶れきっていた
窶れる原因は簡単でリタである
護衛を完璧にこなすために彗に付きっきりである
朝登校してからまず彗の机を自分の机とくっつける
休み時間には必ず共に行動している
彗がトイレの時はトイレの前に待機していたほどである
それだけなら別に気にならない
そこまで彗の精神は弱くない
だが原因はリタなのだ
リタの特徴
才色兼備に頭脳明晰に運動神経抜群に清楚で物凄く可愛い
そんなリタ
当然ながら男子からの人気は高い
いつもは飛影が必ず近くにいるため(そう見えるだけで実際は逆)話しかけることができないがサボり癖があるがあまり休むことはない飛影が学校を休んでいる
物凄いチャンスであるのだが
現在リタは彗の護衛中
周りから見ればイチャイチャものである
かなり長くなってしまったが一言で説明するならば
彗は学校中の男子から睨まれていた
そのため窶れている彗
しかしリタは
(私が完璧に護衛できていないから彗さんはやつれています!…完璧な護衛として…)
少しばかり阿呆なリタクオリティ
リタは頭も良く要領も良いのだが、一回ドツボにはまると弱い
泥沼のように思考が変な方向に沈んでいくのだ
その結果はいつも悪い方向にしかいかない
リタは彗の弁当を見る
中身はリタと同じもので優希が作ったものである
「失礼」
リタは食べようとした彗の弁当を手に取り、一番旨そうなおかずを一口食べる
「ふむ…」
「???」
意味がわからない彗
リタは全ての弁当を一口だけ食べる
「これとこれは毒が入っていますので食されないようにお願いします」
「はい?」
作ったのは優希である
その後は彗が自分で管理していたため毒を混入できる隙はないはずである
「いやいや…そんなわけ」
「優希さんはやりますよ?いつもは飛影が弁当を作りますし、うちの人達はほぼ毒の耐性がついていますから気にしないです」
ちなみに毒は死にいたるものではない
ちょっとバカになったり、
ちょっと短気になったり、
ちょっと髪の毛が伸びたり
程度である
だが実際に実験できる者がいないため優希はチャンスがあれば盛る
そんなわけで弁当を交換する二人
中身は同じものであるが周りからすれば当然の反応がある
(うぅ!!寒気が……)
だが自ら進んで毒を食べるわけにもいかない
諦めて食べようとしたところでリタの目がドアを注視する
「こ…こんにちは」
ドアが控え目に開く
入ってきたのは東東中学の制服を着た少女
上級生のしかも高校の校舎に入ることに緊張しているのか目がキョロキョロと挙動不審に動いていた
「火月ちゃんのお兄さんはいらっしゃいますか?」
知り合いの名前が出てきたのでリタが立ち上がる
「飛影ならいませんよ…要件があれば伝えておきますが」
火月からの要件であれば電話か性格上直接来るはずである
少女の個人的な要件だと解釈する
「え…いないんですか!?いつ頃戻られますか?」
マイペースな少女
緊張していることもありリタは気にしていない
「5日後ですよ」
「へ~5日後ですか…」
少し目の前の少女の雰囲気が変わる
「う~ん困った…いないんですか…5日後ですか…なら」
ニタリと笑う少女
「!!?」
その瞬間リタは魔力を解放
「皆殺しにできそうです」
だがそれより速く目の前の少女は絶対強者級と遜色ない魔力を解放
巨大なハンマーを振りおろしていた
衝撃が襲った
次回へ続く