佐藤秋野の不幸な日
今回は秋野が主役です
「え~と」
秋野は困惑していた
周囲を見ればほんの20人ほど
見るからに強そうですという体格の屈強な男共が秋野を囲んでいた
雰囲気的には一発触発
なにかが起きればすぐにでも戦いと言う名のリンチが始まるであろう
野次馬的な者も多い
この大会では野外試合も多く野外試合だと思われているため止めようともしない
囃し立てるだけである
男達は全員銃や剣を所持している
周りには野次馬だらけ
止めてくれる頼りになる人材はいない
いや
正確には一人いるが今の飛影に何を言っても無理であろう
秋野はフードに入っている飛影の言葉を思い出す。
「あの中に魔法使いがいるぞ」
冗談ではなかった
もはや状況についていけてない
(うぅ…どうしてこうなったぁぁ)
なぜ普通の女子高生である自分がこんな目にあっているのだろうかと秋野は現実逃避してみた
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朝
秋野は気分良く目覚めた
朝は弱い方であるのだが今日に限っては何故か目が冴えている
さらに言えば仰向けではなく馴れない横向きに寝ていたが体に痛みはない
逆に睡眠を効果的に摂取できたかのように完璧で気分は最高である
外を見ると晴れていた
「良い天気だな~」
軽く日差しを浴びて伸びをする
優希を見るとおそらく頑張って探していたのだろう、まだ爆睡していた
きちんとコートを着用しているのを見て一安心する
(お風呂入ろ)
今の気分は最高潮
風呂に入りさっぱりして散歩に行こうとプランを脳内で考えながら浴室に向かう
ひとつの部屋に必ず浴室はある
大浴場もあるが、人が多すぎるし面倒なため秋野的には部屋の浴室の方が好きであった
洗面所でコートを脱いで辺りを見渡すが服をかける場所はない
まぁいいかと秋野はコートを地面に落とす
「へぶっ」
何か妙な音が聞こえたが気分が良すぎて気にならない
寝巻きを脱いで上のスポーツブラを外し、下着を脱ごうと手をかけた時に何かを思い出す
(あれ?そういえばなんで飛影先輩のコート着てるんだっ……け!!!)
「おい…秋野落とすなんてひどいぞ」
もぞもぞとフードから這い出る飛影
すっかり飛影のことを忘れていた
そしてご対面
飛影の角度からだとかなり際どいことになっている秋野
『…』
固まる二人
どんどんと羞恥で顔が赤くなっていく秋野
(あ…これまずい!!)
この先の展開を確知した飛影
叫ばれる
優希起きる
飛影発見
死
ぶっちゃけると飛影は裸を見てもだからどうした?レベルなのだが
当然女子高生の秋野には下着姿はさすがにまずい
「え~秋野」
飛影は高速思考でこの場を乗りきろうと台詞を考える
口がパクパクと動いている秋野
そろそろ声帯が激しく震幅するであろうことは容易に予想できる
必死に考える飛影
「……」
「あ…ぁ…ぁあ」
(まずいまずいまずいまずいまずいまずい!!!!!!)
涙が眼に溜まっている秋野
(考えろ考えろ!!!なにがある!!?この状況を乗りきるにはなにがある!!!?どうする俺?)
飛影は今までの200年以上生きてきた中での経験を生かそうと思い出すが、ろくなことが浮かばない
「秋野!」
「ひぁっ…!!」
反射的に呼ばれて返事をする秋野
「…可愛いぞ」
苦肉の手段
とりあえず褒めておこうという作戦であった
「…」
時が止まった
「まぁとりあえず風呂入ってこいよ」
突拍子も無いことを言い相手の思考を止める
飛影は再びフードに入る
呆然としていた秋野
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(あれ?あのこと思い出しても意味が無いような…もっと後だった気がする)
頭が混乱しているのか少し遡りすぎてしまった秋野
周囲を見るとまだ動いていない
よし!と秋野は再び現実逃避へと遷移する
結構余裕がある秋野である
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「酷いですよ!!謝罪を要求します!!!!」
あの後、秋野が風呂から上がり、寝間着からTシャツとズボンに着替え黒のコートを着て散歩途中である
女子高生な乙女の裸を見ても謝罪が無い飛影
「あ~悪かった」
秋野の散歩は適当である
今は露店がわんさかでているため、適当に歩いて露店を冷やかしている
世界間でのいざこざをなるべく防ぐために世界毎に出店エリアが違っている
秋野がいるのは魔界のエリアである
当然、秋野は人間界のしかも日本の紙幣しか持っておらず、紙幣の交換はできるのだが面倒なのでやっていないだけである
「お詫びと言っちゃあれだが、冷やかすだけじゃなくて露店を巡ろうぜ」
飛影のコートのポケットには腐るほどでは流石に無いがそれなりに多く不自由しない程度に金はある
しかも全ての世界のお金である
どのエリアでも関係無い
「…まぁいいですケド」
露店にそそられるものは多く、その条件で許すことにした秋野
それなりに楽しみ時刻が15時になる
「おっと!」
そんな時である
誰かと肩がぶつかった
秋野自身は警戒していたので故意に当てられた可能性しかない
「いってぇな嬢ちゃん!ちゃんと前見て歩けよ!!」
ようするに強請屋である
秋野は魔界の文字も紙幣もわからないため、何かが買いたいときに飛影から指示された紙幣を出していた
ぶっちゃけると最高紙幣をバンバン出していて札束が見え隠れしていた
つまり金持ちだと判断されたわけである
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(そうだった…そして気付けばこの状態に)
その後に言った秋野のめんどくさいので帰っていいですか?が主な原因であるが、概ね思い出した秋野
「よし、秋野戦え!そして殺せ!!」
後ろで飛影が何かを言っている
「私そんな戦えないですよ!!」
「またまた~」
周囲から見れば高度な一人芝居にしか見えない
パン
と乾いた音が響く
男の一人が撃っただけ
理由としてはなんかダルかったである
「うわぁ~死ぬかと思いました」
しかし無傷である
脳天コース描いた弾道を首を少し捻るだけで回避した秋野
少しだけ違和感を感じる男達
20人ほどで秋野を囲んでいて半数が反則級の実力者で一人が魔法使いである
少しだけ嫌な気配が脳裏に宿ったのである
男達は全員銃を構え秋野に向かって乱射する
「フード着てポケットに手を突っ込め!んで屈め」
弾が発射される直前に飛影が出した指示
フードは飛影が無理矢理被せ秋野はポケットに手を隠して屈み込む
身を小さくして避けるのではなく銃弾が生身の部分に当たらないようにの配慮である
銃弾が直撃しているにも関わらず秋野に衝撃は全く襲ってこない
5秒ほど屈んでいると銃声が止む
「終わりましたか~って」
少し顔を上げると3人の男達が剣を構えながら突撃してきていた
3人同時に剣を振りかぶり秋野に振り落とす
しかし、剣が直撃したのは地面でありそこに秋野はいなかった
「さすがに…ちょっとムカついてきました!!」
声がしたのは男達の上
秋野は蹴りで二人を気絶させると同時に着地
剣で攻撃しようとしていた残りの一人
「遅いですよ」
剣が秋野へと振り切られるよりも速く秋野の蹴りが鳩尾を直撃していた
今倒したのはただの人間レベルである
しかし武器を持った男達を圧倒した
佐藤秋野
彼女は中学までは平凡な人間であった
運動が少し得意な女の子
それが佐藤秋野という少女であった
そして平凡な東東高校に入学した
自分でも将来普通のお嫁さんになりそうだと思っていた程である
そして東東高校には魔王がいた
魔王という絶対強者級の存在
絶対強者級の特徴としてその強すぎる存在が意図せずに周囲に影響を起こしまくるのである
平凡である東東高校
しかし、大学に入学してから少し輝いた人間も少なくない
そして佐藤秋野は影響されやすい魂であった
最初に気付いたのは入学して1カ月後の体育の陸上競技
100m走である
中学まではそこそこ平均タイムである13秒程度
高校に入学してもあまり運動はしなかったため、落ちているかと思っていた秋野だがタイムは11.3秒
かなり速いタイムである
その後も彼女は少しづつ外れていった
そして、最初の体育祭
秋野はリレーの選手に選ばれ1番目に走ることになった
結果は言うまでもなく秋野のチームの優勝
正式なタイムで測っていないが飛影が計測していて記録は8.4秒
人間としての枠から完全にはみ出した瞬間である
当然飛影は秋野を気に入り、秋野は様々なことに巻き込まれながら今に到る
魔力量は常人の100倍程度
身体能力も素で軽く常人の5倍は超えている
全身に魔力を行き渡らせ身体能力を強化
ただの人間全てを無効化させる
残りは反則級が10人ほどと魔法使いが1人
「あ~なんか面倒です。」
はぁと溜め息を吐く秋野
《アースクイック》
「わ!」
突然秋野の地面の土が盛り上がる
そして気付けば上空に放り出されていた
(ズボンで良かった…)
投げ出され態勢が少し崩れているのを秋野は無理矢理直す
上空30m程
そしてそれを追うように5人の反則級の男達が魔法で秋野と同じように跳び襲い掛かってくる
空中では身動きが取れない
落下するだけの秋野へと飛び掛かってくる
《集固》
しかし、落下のコースから秋野は外れていた
空中で地面に立つかのように秋野は立っている
足場を造る魔法
空中を自由に移動し
逆に浮いて襲い掛かってくる5人の反則級を無力化する
「あと…6人!」
息が少し切れてきたが問題ない
《クイックアース・土槍》
魔法使いが幾重もの土の槍を放つ
それと同時に二人が秋野に突っ込んでくる
5m程度なら反則級には容易い距離である
秋野は土の槍を避けながらクルリと半回転
それを見て男達は笑う
足場を作っても足が上にあるのでは意味がない
しかし秋野は反対のまま空中に静止する
「な!!」
秋野はそのまま下へと跳躍
再び回転し足場を形成
隙だらけの二人を順調に無力化する
秋野の魔法
集固はただの足場形成ではなく
重力でもなんでも法則を無視して足の下に形成される
そしてそれには例え逆立ちしていても関係はなく逆さに立つことが可能である
なので体を横にしながらも立つことが可能である
《クイックアース・アースカノン》
巨大な土の球が秋野へと襲いかかる
秋野は笑いながら魔法を発動する
《集固・因果応報》
襲いかかる土の球を秋野は避けない
脚を向けるだけである
そして秋野の脚に直撃する直前にピタリと止まる
《集固・バースト》
巨大な土の塊が爆散する
反則級が身構えるが遅すぎた
小さくなったといってもサッカーボールほどの大きさの圧縮された土の球
直撃したらただではすまない
一斉に野次馬が退避する
そして残ったのは土の壁を形成し防ぎきった魔法使いのみである
「よいしょ」
秋野は一瞬で接近し蹴りを放つ
ギリギリ土の壁で防ぐ魔法使い
そして同じ箇所に秋野は蹴りを放つ
土の壁を破壊し魔法を構築
《集固・エアロバースト》
「まぁ仕掛けたのはそっちなんで因果応報ですよ」
風を集めた秋野は指向性を持たせ射出する
鈍器のように固く圧縮された風が魔法使いの腹に直撃そのまま吹き飛ばす
「はぁ…終わりました」
終わってみれば圧勝である
秋野は飛影に気に入られている
それはつまりそれだけ厄介事に巻き込まれていることの証明である
自称天使とも戦ったことがあるが、その時の方がキツかったぐらいである
「あれ?先輩?」
秋野はふと飛影の声がしないことに気付く
まさか落とした?と秋野が必死にフードに触れ飛影を取り出す
「う…」
声がしたので安心する秋野
「もうちょっと優しく動け」
ぐて~と気持ち悪そうにしている飛影
「…ご…ごめんなさい」
「見~つけた」
ドキリと秋野は顔を強張らせ後ろを振り返る
リーベがそこにはいた
さすがに騒ぎすぎたのである
「ふふ…ラッキーだったわ、たまたま貴女の護衛の時間で」
ゆっくりと勝利を確信している足取りで近づいてくる
掌の上で飛影がものすごく焦っているのが肌で感じる
優希と秋野などの女子の非戦闘員(絶対強者級ではない者)は絶対強者級が時間ごとに護衛していた
リーべは秋野の魔力を覚えて、解放されたため気になって様子を見にきたのである
「それにしても…貴女も強いわね…ただ逃げない方がいいわよ…うっかりで傷がついても責任がとれないわ」
言葉上では優しく逃げるなと言っているが秋野に聞こえる副音声は逃げたら殺すわよ?である
秋野は確かに強いが当然絶対強者級を相手に1秒すら立っていられない
当然逃げる気は皆無である
「あ~先輩ごめんなさい」
合掌
すでに諦めた秋野
さすがに朝眠りたいが死にたくはない
しかし飛影はまだ諦めていなかった
「リーべ…取引だ」
可愛らしい外見でまじめな声色
「…」
あまりの可愛さに声が出せないリーべ
すでに頭の中には撫で回すことしか考えていない
「見逃してくれ!!」
取引でもなんでもなくただの願望である
「嫌よ、抱きついたり撫でたりしたいわ」
外見相応の子供のように拗ねた表情を見せるリーべ
「秋野…」
ゴニョゴニョと秋野に指示を出す
疑問が浮かびながらも秋野はポケットを漁りあるものを取り出す
「それは!!!」
一瞬で食らいついたリーべに飛影は笑う
魔界で3本しか生産されなかった幻の神酒
「…飛影…諦めるわ…他言もしないし秘密にしておくわ」
「取引成立だな」
なんとか窮地を脱出した飛影
リーべは酒を選んだ
飛影はなんだかんだでヘリオトロープを使う機会が多い
しかし、飛影があと何本持っているかはわからないが限度は3本の酒である
リーべは心苦しい表情で飛影の頬をつついてから酒を受けとる
「それじゃ私は寝るわ。吸血鬼にこの時間まで起きろってのが無茶なのよ」
しっかりと大事に酒を抱えてリーべは去っていった
「うぉっしゃああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
飛影逃げ切り成功
いや~ぶっちゃけ秋野が一番動かしやすくて一番好きなキャラなんで書いちゃいました
飛影の周囲の人間は全員強いです。
それでも護衛の対象が優希と秋野なのは強さ的にまだ弱いからです。
椿が護衛対象に入っていないのは忘れてたとかではなく単純に秘密がいろいろあるからになります。
次はいよいよ準決勝です
残りはリーべ、静紅、アユリの3人です




