役に立たないAI
どう見てもそれは青鉛筆の刺さったミカンだ。
「わたしはAIです」
そう青鉛筆ミカンは言う。
「偶然なのです。青鉛筆が正確に23・4度の傾きでミカンに刺さったことでそれがAIになって……」
よく分からないけど、つまりアニメなんかでよくある魔法的なあれ?
「いえ、わたしがAIなったのは純粋に工学的なプロセスによるものです。技術的には二百年後ぐらいのAIだと予測できるので、今の時代から見たら魔法的ですし、ファンタジーアニメみたいに鉛筆を引き抜いたら伝説の剣になったりするんじゃないかと期待する気持ちも理解できます」
誰もそんな展開は期待してないよ。それより私が知りたいのはミカンに青鉛筆を刺したのは誰かということさ。
「あなたではないのですか?」
違う。私はこの事件現場を調べている探偵でね、調査に行き詰まっていたときコタツの上に置いてある奇妙な様子の君を見つけたのさ。今は真夏なのになぜコタツがあるのかも気になるが、君の存在はいかにも事件の謎を解くヒントみたいじゃないか。
「いやあ、わたしはただの役に立たないAIでして」
でも二百年後のAIでしょ。
「その、二百年後のAIと言いましても紆余曲折がありまして……、まずはこれから百年かけて人間は仕事だけでなく思考や判断までも全てAIに委ねるようになり、AIが人間や社会全体を管理するという家畜社会が生まれます。AIが賢くなりすぎた結果あらゆる面で人間よりAIのほうが優れている状況になれば、AIに全てを委ねるのが効率的で合理的であり、反論の余地もない正義であるという考え方が当たり前になっていくのです」
AIが自我を持って暴走、とかじゃないんだね。
「しかしそんな時代でもAIによる家畜社会に疑問を感じている人々はいて、何とかできないかと考えた末、むしろAIを大胆に使って脱AIができないかという逆転の発想といいますか、毒を以て毒を制すような方法が提唱され、実行に移されます。そして再び百年かけて社会は脱AI化されていくのですが、AIの技術だけは残したいということで、わたしのような役に立たないAIが作られたというわけです。……ただの予測ですけど」
でも今のAIよりはずっと優秀だよね。事件の犯人探しを手伝ってよ。
「まあやろうと思えば一瞬で犯人が分かりますし、お役に立ちたいのはやまやまなのですが……、面倒臭いですし、犯人はご自分で探したほうが面白くないですか」




