タバコ職人、殿になる
『霧島百万両始末記』主要キャラクター・ステータス
(ステータスは100が最高値)
主人公サイド:霧島藩
【主君】 孝四郎
元・江戸のタバコ職人。ひょんなことから貧乏藩の藩主に。
統率: 50
武力: 60 (職人の腕っぷし。喧嘩ならそこそこ強い)
政務: 55
知謀:75 (職人の知恵と屁理屈。初期70から成長!)
魅力:91 (底知れない人たらし。懐に入り込む天才)
野心:80
【相棒】 黒瀬 鷹之介
元・霧島藩の正統な世継ぎ。文武両道のエリートだが、現在は工場の最高執行責任者(COO)兼・孝四郎のボディーガード。
統率:85 (軍隊並みの生産管理を行う)
武力:75 (剣の腕は一流)
政務:80 (お役所仕事、関所の通過、予算管理担当)
知謀:65
魅力:55 (真面目すぎるツンデレ)
野心:70
【ブレイン(?)】 大里 惣兵衛
霧島藩の国家老。お金の計算と、胃薬の服用が日課。
統率:40
武力:15
政務:70 (帳簿付けと、土下座の速度は天下一品)
知謀:50
魅力:60 (愛すべき中間管理職)
野心:10 (とにかく平和に平穏に暮らしたい)
ヒロインズ
【毒舌女中】 おりん
孝四郎の身の回りの世話を担当。
統率:50
武力:45 (護身用の懐剣使い。怒ると怖い)
政務:60
知謀:70 (冷静な観察眼)
魅力:75 (クールビューティー)
野心:30
【お茶のプロ】 お鶴
知覧藩の元スパイ。現在は霧島藩のお抱えブレンダー(茶葉担当)。
統率:30
武力:40 (忍びの基礎訓練あり)
政務:50
知謀:65 (お茶に関する知識はチート級)
魅力:85 (健気で可愛い、みんなのオアシス)
野心:20
ライバル・同盟国(他藩・幕府)
【隣国・知覧藩】 宮地 紋太夫
知覧藩家老。策謀を巡らせ、経済封鎖や偽物、政治工作で孝四郎を追い詰めた。
統率:70
武力:40
政務:85
知謀:80 (お上の法律を使ったネチネチした嫌がらせが得意)
魅力:45
野心:75
【北の軍事大国・肥後藩】 細川 越中守
肥後藩主。武門の誉れ高く、頑固一徹だが、領民思いの名君。
統率:90 (大軍を率いるカリスマ)
武力:85 (自身も豪傑)
政務:70
知謀:60
魅力:80 (豪快な親分肌)
野心:65
【霧島城・大広間】
霧島藩の重臣たちがズラリと並ぶ中、一人ぽつんと座らされているのは、麻の着物に煤汚れた前掛けをした男、孝四郎。手には、愛用の煙管が握られている。
畳の上で胡座をかき、きょろきょろと天井を見上げている様は、どう見ても職人のそれだ。重臣たちの険しい視線も、どこ吹く風である。
家老の惣兵衛が、ひときわ深刻な顔で咳払いをした。
「……ゴホン。孝四郎よ、心して聞け。お前は……実は我が霧島藩の血筋。伝説の将軍の血を引く、唯一の生き残りなのだ!」
「はあ」
孝四郎は、煙管をくるりと指の上で回した。
「んで、なんであっしなんです? 長屋のタバコ巻きなら、今日も注文が詰まってて忙しいんでさぁ。昼飯、今日はうなぎの予定だったのに」
重臣の一人が「うなぎとは何事か!」と震えた。惣兵衛が手で制し、さらに一歩前に出る。
「お前を、我が霧島藩の新しい『殿様』として迎えたい!」
「殿様ぁ?」
孝四郎は、ようやく惣兵衛の顔をまともに見た。
「嫌ですよ。武士の堅苦しい暮らしなんて、あっしには向いてねえ。朝から晩まで正座してたら、足がしびれちまう」
大広間に、奇妙な沈黙が落ちた。
その隅に控えていたお付きの女中、おりんが、ため息をつきながら冷めた目で口を挟んだ。
「諦めなさい、孝四郎さん。このお爺さまたち、あなたを『生贄』にしようとしてるんだから」
「おりん! 余計なことを言うな!」
惣兵衛が顔を赤くする。が、孝四郎はすでに首をかしげていた。
「いけにえ?」
「……実はな」
惣兵衛は、額の汗を拭いながら続けた。
「我が藩には、少々の、その……借金がある。金額にして、百万両ほど」
一瞬の間があった。
「ひゃ……」
孝四郎の口が、ゆっくりと開いていく。
「ひゃくまんりょう!?」
声が大広間に響き渡った。欄間の埃がはらりと舞う。
「幕府からの命令だ。五年以内に返済せねば、霧島藩は取り潰し。そして、その時の藩主は……江戸に呼び出され、打首に処される」
静まり返る大広間。重臣たちは目を泳がせ、誰一人として孝四郎と目を合わせようとしない。
孝四郎は、ぽかんと口を開けたまま、しばらく宙を見つめていた。
やがて、ゆっくりと視線を重臣たちの列へ向ける。一人一人の顔を舐めるように見てから、深く息を吐いた。
「なるほど」
静かな声だった。
「つまり、誰が殿様になっても、五年後には首が飛ぶ。だから誰もやりたがらねえ。んで、身寄りのねえ職人のあっしを担ぎ出して、代わりに首を差し出そうって魂胆ですか」
「い、いや! 決してそんな! 武士の情けというか、血筋の導きというか……!」
惣兵衛が両手を振るが、孝四郎はもう聞いていなかった。
懐からタバコの葉を取り出し、手際よく煙管に詰めはじめる。重臣たちが「無礼な!」「大広間で何をするか!」と騒ぎ立てる中、孝四郎は静かに火をつけた。
ふぅーっ、と紫煙が天井へ昇っていく。
「……まあ、いいですよ」
「え?」
惣兵衛の声が裏返った。
「い、いいのか!? 命がかかっておるのだぞ!?」
「職人ってなぁ、納期と品質がすべてでさぁ」
孝四郎の目が、そのとき初めて変わった。きょろきょろしていた庶民の目ではない。何千本ものタバコを巻いてきた、職人の目だ。
「五年って納期と、百万両ってノルマ。……職人魂に火がついちまいましたよ」
煙管をゆっくりと膝の上に置き、孝四郎は惣兵衛を真っ直ぐに見た。
「ですがねぇ、惣兵衛様。あっしが殿様になるってことは、この藩で一番偉いってことだ。だったら、今までの武士のプライドやらメンツやらは、今日限りゴミ箱に捨ててもらいます。あっしは職人だ。職人のやり方で、この百万両、返してみせまさぁ」
「しょ、職人のやり方……! 武士に向かって何を言うか!」
「文句があるなら」
孝四郎は、ひょいと立ち上がった。
「惣兵衛様が殿様になって、五年後に首を差し出してください。あっしは長屋に帰ります」
「ぐっ……! わ、わかった! お前の好きにせよ!」
惣兵衛が膝を折った。後ろに並ぶ重臣たちも、渋々と頭を下げる。孝四郎は煙管をトントンと軽く叩き、にやりと笑った。
「決まりだ」
立ち並ぶ重臣たちを、職人が仕事場の手下を見るような目で見渡す。
「お前ら、今日からあっしの手下だ。死に物狂いで働く準備、しときなせえよ?」
おりんが小さく呟いた。
「……とんでもない殿様が来たわね」
惣兵衛は、その日初めて胃が痛くなった。後に彼は語る。この胃痛は、五年間、一日も止まることがなかったと。
こうして霧島藩の歴史上、最も「煙たい」殿様が誕生した。




