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なかよくテッパンいただきます

「東京で粉もん食べるなんて」


 相方はご機嫌斜めだ。

 出かけるのは、もうちょっと後でいいだろうということにした。理由は単純。俺は金がない。

 仲がいいことをアピールするなら、別に遠くに行く必要はない。


「おっ、お寿司? 焼肉?」


 一緒に飯食うだけでもいいのでは、と言った俺に笑顔でこう提案してきたのが相方だ。

 相方は高校生になったばかりで、元気いっぱいのポニーテールの少女。幼馴染で、ここ5年ほどは関西にいた。

 本名は萬綿乃絵美(まんめんのえみ)で、芸名はればさし。

 今すぐにでもトップアイドルになれるルックスをしている。

 俺は駆け出しのお笑い芸人で、バイトで生計を立ててるボロアパート暮らし。当然ながら金がない。

 彼女は妹のように思ってかわいがってきた、今は大事な相方だ。だからもちろん、寿司とか焼肉を奢ってあげたい気持ちはある。

 しかし、金はない。かといって、ここでラーメンを食っても仲良しアピールにはならない。

 金をかけずに、楽しく仲良く食べられるものはないかと。考えたわけですよ。

 答えは……そう! 鉄板焼きだね。

 鉄板焼き屋といっても、ステーキや伊勢海老を出すタイプの高級店ではなく、お好み焼きと焼きそばともんじゃ焼きを出す店ね。自分で焼くやつ。

 近所にある店だが、ひとりで行くような店でもない。今回始めての来店だ。一度お持ち帰りで、お好み焼きを買ったことがあるので味はお墨付き。乃絵美を連れてくるにふさわしい店だよ。

 予約の名前を告げて、店の中へ。

 テーブル席もあるが、奥にある畳の部屋にしてもらった。

 

「粉もんって言っても、もんじゃ焼きだ。東京名物じゃん」

「んー。まあねえ」


 唇を(こんなふう)にして、まだご不満の様子だ。


「一緒にもんじゃをつくって、この小さなヘラでカジカジする。仲良しだろ。SNSでアピールできるよ」

「インスタで、もんじゃねえ……」

「ハッシュタグつけて投稿してくださいよ」


 ピンクだの水色だのの変なスイーツより全然いいだろ。

 ふたりで土手をつくり、液体を流した。ちなみに、明太もちチーズです。

 乃絵美はグチャグチャのところをスマホで撮影した。

 そうそう、もんじゃをインスタに投稿しなさい。


「#ゲロ」

「やめろい!?」


 なにがハッシュタグゲロやねん!

 確かに面白いハッシュタグつける芸人のインスタあるけど!

 東京名物だから!! 炎上しかねませんよ!?


「ちゃんとしたハッシュタグつけてくださいよ」

「わかりました」


 わかってくれたみたいですねえ?


「#酔い止め薬忘れた」

「ゲロじゃねーか」


 もんじゃはエチケット袋の中身じゃねーわ。


「#日曜朝の渋谷の道」

「ゲロじゃねーか」


 それを食ってるのはカラスだけだわ。


「#罰ゲーム激辛からしシュークリーム」

「ゲロじゃねーか」

 

 これは、俺も芸人だからやってみたいけど。テレビでもんじゃ吐いてみたいなー、じゃないんだよ。


「もういいよ。そもそももんじゃの写真投稿してどうすんの。ふたりで作ったり食べたりしてるとこだろ」

「確かにそうだねえ? じゃあ、ほら作ってよ」

「そうねえ。この辺はもう食えそうだよ。いい感じに焦げてる」


 乃絵美は食べる直前の俺をカシャッ。


「#どんなもんじゃ」

「おい! 俺がスベった感じになる!」


 一般の人なら、そういう投稿でいいのかもしれないが。

 っていうか、ればさしならいいかもしれん。かわいいから。俺はキツイって。

 食ってるとこもパシャッ。


「#なんぼのもんじゃ」

「おい! どこがだよ!」


 誰に喧嘩売ってんだよ。うまそうに食ってるだけだろ。

 ダジャレ言いたくなってるだけじゃね?

 まあでもそういうハッシュタグあるな……。


「#ろくなもんじゃねえ」

「ほんとにな!」


 もんじゃは美味いけどな!

 俺はビールを飲ませてもらうぜ。彼女はコーラのゼロ。

 

「じゃあ、やってみてよ。お笑いのセンパイ」


 ぐぷっ。

 び、ビールが気管に……!


「げはっげはっ」

「きっちゃなーい」


 お、お、お笑いのセンパイ!?

 ここでそのパス、鬼か……。

 むせる俺をあざ笑いながら、もんじゃをコーラで流し込む乃絵美。


「そういうのいいから。はやく」

「悪魔じゃん……」


 俺がむせってることで機嫌が良くなるとかドイヒーすぎるじゃん……。


「はい、どうぞ。ればさしがもんじゃを食べてる写真のハッシュタグとは?」

「え~?」


 美味しそうにもんじゃ焼きを食べる美少女で一言。全然画像が面白くない!

 この大喜利、難問すぎるだろ!


「えっとー、えっとー、#ヘラヘラしててもカワイイ」

「あー。持ってるのが、ヘラだけにね。次」

「次!? んとー、んとー、#カワイイ顔が俺のお好み」

「お好み焼きじゃなくて、もんじゃだって! ってか、カワイイって言いすぎ……」


 だって……カワイイんだもん……。顔をTEPPANみたいに赤らめちゃって……。

 んじゃもう思いっきりボケるか。


「えー。#実は下の毛がもんじゃもんじゃです」

「一本も生えてないわー!」


 一本も生えてないんだ……。

 そっか……。

 

「……」


 ツッコんだ後でわかったらしく、乃絵美は顔を真っ赤にしたままもんじゃを食べている。

 

「……」

「ちょ、見ないでよ」


 特に下半身を見てるわけじゃないのだが、めちゃくちゃ恥ずかしがっている。

 いやー。

 うまいねえ。もんじゃ焼きは。TEPPANいただきます。


テッパンいただきますは、火曜は全力華大さんと千鳥くんになる前のタイトルですね。

鉄板の話をするみたいな番組の設定は本当に最初だけでしたね。

私は番組が終わる前にやっていた、夫婦の動画を見て、どこで奥さんがブチギレてるか当てるクイズが面白かったです。お互い好きな男女なのに気持ちがすれ違って結果それが笑いになる。それってラブコメじゃないですか。





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