第六話 オールドルーキー
二月某日、朝練前。
城西拓翼大学陸上競技場にて。
櫛部川監督から集合がかかる。
隣には、見慣れない青年が
一人立っていた。
(だれだろう…。歳上っぽいし、
濱上コーチと同じくらいだな。
新しいコーチかな?)
皆、そう思っていた。
第六話 オールドルーキー
静まったところで、
濱上コーチが朝礼を始める。
「新しいメンバーを紹介する。
俺の実業団時代のメンバーで
来年からジョーダイに入学する
宗像哲也だ。
他の一年生より、ひと足先に
チームに合流してもらった!
今後はプレイングコーチとしても
頑張ってもらう予定だ。
それじゃあ、宗像、
自己紹介たのむ。」
(ってことは、
俺たちとレースに出るってことか?)
(いやいや、宗像って言ったら…。)
部員の動揺は止まらなかった。
宗像が一歩前に出る。
「来年から入学する、宗像哲也です!
高校卒業後、旭化製薬で
十二年間駅伝をしてました。
この度、ようやく
大学に行くためのお金がたまり、
奥さんにも許可が出たので、
ようやく箱根駅伝に挑戦することが
できるようになりました!
必ず力になりますので、
よろしくお願いします!」
(やっぱり、
旭化製薬のエースだった宗像さんだ!
てか、奥さん居んのかよ!?)
部員全員が驚きのあまり、
固まっている。
「ちなみに、
俺と宗像は、同い年だし、
旭化製薬時代に、ニューイヤー駅伝で
一緒に優勝したこともあるから、
そこんとこも忘れんなよ!」
部員が萎縮してしていると感じた
濱上コーチがその場を和らげようと
したが、
この付け加えは、全く逆効果だ。
(知ってるよ!
だから、みんなビビってんだよ)
部員全員が、そう心の中でツッコんでいた。