第十八話 『天才と呼ばれた弟』 〜矢車兄弟編②〜
箱根駅伝に挑戦できる男の多くに
共通していること…。
それは、『走りに関しては、子供の頃から
地元で負けなし』であったということだ。
無論、蒼太たちも例外ではない。
そして、当然のごとく、
キャプテンの矢車拓也も、中学生の頃は
故郷の福島県会津若松市において、
その世代の「絶対王者」として君臨していた。
しかし、彼が中学三年生の時、
自身も予想だにしなかったことが起きたのであった。
第十八話 『天才と呼ばれた弟』 〜矢車兄弟編②〜
地元の中学では、当時、陸上競技部の
キャプテン兼エースであり、
向かうところ敵なしと謳われた矢車拓也だったが、
所属する陸上競技部に二つ歳の離れた弟の
和真が入部してから、その状況は一変した。
入学したばかりの弟のカズマが、
矢車(兄)が得意とする三千メートル走で
陸上競技部全員に圧勝してしまったのである。
そして、勢いそのままに、
一年生ながら全中に出場し、
カズマが最も得意としていた1500メートル走で
八位入賞を果たしてしまう。
この日を境に、カズマは
「会津の天才ランナー」と呼ばれるようになり、
兄である拓也は、いつしか、
「あの天才カズマの兄」という、
おまけのような扱いを受けるようになった。
当時のことを知る地元の友人たちは言う。
拓也の性格がナイーブになり始めたのは、
ちょうどこの頃であったと。
だが、兄・拓真は完全に挫けてはいなかった。
「確かに、弟は俺が足元にも及ばないくらいの天才だ。
だけど、ここで諦めたらダメなんだ。
高校でさらに努力を重ねれば、
いつかは天才を超えられるはずだ。」
このわずかな希望を胸に
矢車拓也は、地元の強豪校である
会津若松高校へと進学したのであった。




