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第八話 関西からの編入者

時は昨年の八月上旬まで遡る。


「今日の雨は止みそうにないな。」

櫛部川が監督室で一人呟く。


夏合宿を直前に控えた城西拓翼大学駅伝部は、

慌ただしく、その準備を始めていた。


そこへ、

監督室に一本の電話が鳴り響く。


受話器を取ると、

相手は前監督の平林であった。


「よう。櫛部川クシ、元気か?」


突然の連絡に驚きながらも

櫛部川の心に懐かしさが込み上げる。


「はい!平林さんも

ご体調はもういいんですか?」


電話越しの平林は以前より元気そうだ。


「おう。おかげさんでな。

ところで、急なお願いなんだが、

お前に…いやジョーダイ駅伝部に

頼みがあるんだ。」


急にかしこまったように平林は、

ことの経緯を話し始めた。



第八話 関西からの編入者



「実は今、

関西の立命社大学で監督をしているんだ。


今シーズンの四月から指導しているんだが、

入学してからこの半年足らずで、

急にタイムが伸び始めた子がいてな。


この子の競技者としての未来を考えた時、

より良い環境で走らせてやることが、

指導者としての務めだと思ったんだ。


だから、そいつを預かって欲しい。

俺も手放すのは惜しいが、


本人もジョーダイで走れるなら、

是非とも行きたいと希望している。


すでに編入試験の

申し込みはしてあるから、

合格したら面倒見てやって欲しい。


間違いなく、

コイツは関東でも通用する!

そう思わせるヤツだ。


ちなみに、名前は、

『山之内 太陽』。


そう、あの山之内和月の弟だ。

学業も優秀だし、

才能は兄貴より上だぞ。」



山之内 和月カヅキ


城西拓翼大学のOB。


蒼太たちの三つ上の世代の

副キャプテン。

二年前の箱根駅伝本戦直前に

体調不良で無念の欠場となった。



また、当時、

最終学年の四年生であったため、

ついに、箱根駅伝を走ることが叶わなかった

悲運のランナーだ。


櫛部川の脳裏に二度と思い出したくない

あの日の悪夢が蘇る。


だが、それと同時に、

暗黒の中に一つの希望を見出せたような、

不思議とそんな気持ちが生まれていた。


(そうか、

きっと兄貴の無念を晴しにきたんだな。)


櫛部川の決意は固まった!


山之内ヤマの弟ですか…。


平林監督!

そちらに差し支えなければ、

是非ウチで預からせてください!


必ず、強いランナーに育て上げます。」


降り続いていた雨が少し収まり始めた。


そして、遠くの空に漂う雨雲の隙間から、

太陽の光が差し込んでいるのが見えた。


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