EP173.禁断の遊戯
「ひ〜ま〜……」
俺だ、江波戸蓮だ。
すっきり起床したものの、少し気まずい空気になってしばらくした時だった。
ソファの離れた位置に座っていた凛がぐでーっともたれながら呟いた。
いや、一応ここって他人の家なんだからもう少しマナーを守りなさいよ。
とか言いたいところだが、正悟さんは何も言わないし俺だって人のことは言えねえし。
まあそんなことはさておいて、俺は俯くような姿勢になって凛の方に顔を向けた。
「課題は終わってるのか?」
冬休み……EP32のことを思い出し、少し半目になりながら尋ねる。
一応あの時はギリギリ終わったらしいが、夏休みの休みの長さだと、それ相応の課題の数は出てるだろうしそうもいかないだろう。
隣に座っている白河小夜も、少し苦笑しながら凛を見ていた。
そう心配していたのだが、凛はもたれたままこちらにサムズアップを送ってくる。
「ここに来るまでに終わらしたよっ!」
見事なドヤ顔である。
だが凛の性格上、夏休みがまだ一週間ほど残っているのに終わってるとは珍しいな。
「てわけでさ、蓮。なんかない?」
「いや、ここ俺の家じゃねえからな?」
あぐらを書いてこてんと首を傾げる凛に、俺は即座にそうツッコむ。
いや、さっきのやつといいこいつここが俺の家と勘違いしてるんじゃねえか……?
「あはは、冗談だって。こんなこともあろうかと、ちゃんと遊びは用意しているのだ」
「いや『こんなこともあろうかと』って、話し始めたの自分だよな?」
ツッコミが激しい今日この頃なのだが、凛はそれを無視して自分の荷物へ近寄る。
「どんなものなのでしょう……?」
「……ろくでもなさそうなのは勘弁だが」
小夜とそんな軽い会話をしつつも、凛はすぐに目当てのものを見つけたらしい。
輪ゴムで纏められた割り箸と、細長い筒を持って、こちらに近づいてくる。
その割り箸には一つ、先端に赤い印が塗りこまれていて……ってまさか。
「王様ゲームか!?」
「ぴんぽんぴんぽーん」
心当たりのある遊びを驚愕しながら叫ぶと、凛はそう言ってにまー、っと笑う。
今の時点で、何かよからぬことを企んでいるのは一目瞭然だ。
そういえばこいつ、ポーカーとかブラックジャックとか、そういうギャンブル要素の強い遊びが昔から好きだったな……
王様ゲームも勿論例外ではなく、寧ろ、特に好いていたのを覚えている。
「せっかくこんなに人数がいるんだから、皆で楽しまないとね〜」
「……あの」
愉快に笑う凛だが、申し訳なさそうに手を挙げている少女の声が隣に。
小夜だ……前屈みになって、凛に挙手しているのを主張していた。
「どしたの?小夜ちゃん」
「えっと私、王様ゲームというのを聞いたことはあれどしたことはなくて。ルールを教えて頂ければなあ、と」
あー、なるほどな。
確かにこのご時世、王様ゲームは楽しいものだがすることは少ないイメージがある。
実際俺も、凛を絡まずして王様ゲームをしたことはない……いや、当たり前か。
まあそんなことはさておいて、したことが無ければルールがわからないのはあながち仕方の無いことだろう。
「あー、おっけーおっけー。でも、その前に一回参加者を集めよっか」
小夜の言葉に凛は理解の頷きを見せて、優しい口調でそう提案してくる。
……実際言うと、参加するであろう人物は全員このリビングにいるんだけどな。
まあ一応呼びかけて、ローテーブルを中心に全員L字ソファに座った。
参加者としては、こんな感じだ。
・江波戸 蓮
・江波戸 凛
・江波戸 瑠愛
・白河 小夜
・白河 薫
・白河 純玲
・山地 芙陽
ご丁寧に本名を並べたが、要は金髪三兄妹を覗いた少年少女組である。
あの三兄妹は今や海へと遊びに行っているため、まあ仕方がない。
「は〜い、ルールわからない人〜」
まるで飲み会の幹事か何かのように、手を挙げて指揮し始める凛。
まあ実際主催者ではあるし、文句はない。
それで、凛の質問に手を挙げたのは二人。
先程も挙げていた小夜と、恐る恐ると言った感じに挙げている純玲である。
「薫と芙陽はルール知ってるんだな」
別にルール自体は簡単のため、そこまで意外なわけではないが一応話しかけてみる。
「ようつべとかでたまに見るからね」
「私は実際にしたことあるわ。恋人は居ないけど、友達はいるし」
芙陽はいいとして、薫はそれを聞くと少し同情してしまうからやめて頂きたい。
ただ、言動に棘が出てくる部分はあるものの薫も良い奴だしきっとできるさ、うん。
「おっけー。じゃあ、説明するね〜」
挙手した人を確認して、凛が割り箸を入れた筒をからからと揺らす。
意外にマメなのかわからないが、割り箸の見た目は全て同じように見える。
「まず最初に、「王様だーれだ!」って言って、一斉に割り箸を一本取る」
凛は実際に「王様だーれだ!」と言って、筒の中にある割り箸を一本取った。
抜き取られた割り箸の先端は赤くない……が、なにか番号が書いているように見える。
「今回は三番だったけど、誰か一人は赤い印のついた割り箸がくる。それが王様」
すると凛は、筒に入った割り箸を鷲掴みにして、全て抜き取った。
そのうちの一本は、先端に目立つような赤色が振り込まれている。
「で、王様は1番から6番の番号を言って、なんでもいいから命令する」
「なんでも、ですか?」
オウム返しをして尋ねたのは小夜だ。
凛はその質問に、迷うことなく頷いた。
「あっでも、命や身体に関わるものは無し。あと、命令できるのは3人までね」
かなりの詳細まで説明してくれている。
案外、凛は何かを教えるのが上手いのかもしれない。
「命令された人な命令を遂行したら、割り箸を戻して、また引き直す。それの繰り返し。命令するのが誰かわからないのが、面白いところかな」
「以上」と言って、凛は割り箸の入った筒をローテーブルの上に置いた。
小夜と純玲を見る限り、今のところ疑問点は浮かばなかったみたいだ。
「いい?」
実際、凛が小夜と純玲に確認すると、二人ともこくりと頷いた。
「よし、じゃあさっそく!みんな割り箸掴んで〜」
凛の指揮のもと、俺ら7人は筒に入っている割り箸を一本だけ掴む。
俺と芙陽は遠いところにいるからか、ローテーブルに乗っかる形になってしまった。
それを気にもとめず、凛は続ける。
「せーのっ」
「「「王様だーれだ!!」」」




