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EP105.今後について

「…思ったんだが、何この新婚生活」


 朝飯を食いながらそう呟いたのは江波戸蓮えばとれんこと俺だ。

 俺のつぶやきに、目の前で一緒に朝飯を食っていた白河小夜しらかわさよは盛大に吹いてしまった。


「大丈夫か?」

「コホッコホッ…誰のせいだと思ってるんですか!?もう完全に目が覚めてしまいましたよ!?」


 いやだって、なあ?

 こうやって朝飯をなんの用事も無く平和に食べてるって…どこの新婚生活なんだろうか。

 ま、まだ付き合い始めて二日目だけどな。


「…なんで蓮さんは新婚生活って言って考えて、そんな平然としていられるんですか…」


 拗ねたように頬を膨らませてジト目で見てくる小夜。

 顔が赤いし、とても可愛いな。


 でも、『考えて』ってナチュラルに心読んでるのな。

 魔王様といい、姫様といい…俺の心を読むことは常識なのか?


 まあそれはさておき、平然とって?


「別に平然とはしてないぞ。心を無にしてるだけだ」

「どうしてですか?」


 今度はキョトンとした顔になる小夜、この顔もとても可愛い。

 心を読んだのか、小夜はまたもや頬を赤く染めた。


 …それならもう読まなくていいのに。


「読もうとしなくても、蓮さんの心が分かってしまうのですよ…蓮さんは顔にですぎです。逆に才能です…」

「それなら俺の顔を見なくていいんじゃないか?」

「それとこれとは話が別です!」


 冗談を言うとキッ、と睨んでくる小夜。

 可愛い。


「…なんで表情を変える度に褒めてくださるんですか?」

「口にはしてないんだがな…そりゃあもちろん可愛いからだよ。それ以上もそれ以下もない」

「そ、そうですか…」


 押し黙って俯く小夜、またもや顔が赤くてすごく可愛い。

 …もうそろそろ自分の語彙力が心配になってきたな。


「…話が逸れましたけど、どうして心を無にしていたのですか?」

「慣れないとやっていけないだろ。将来やって行かないといけないんだし」


 俺がそう言ってのけると、小夜は今日一番の赤さを誇る顔を浮かべた。


「…小夜?」

「……………蓮さんのばか…」


 可愛らしい愚痴を言い、ご丁寧に皿を退けて湯気を出しながら顔を伏せた小夜。

 EP95ぶりだな、これ。


 ちなみに、今回は俺も顔を伏せている。

 え?理由はって?


 『慣れないと』って言っておきながらその時点で耐えれなくて、既に煩悩が暴れまくってたからだよ!

 『無にして''いた''』って言ってたし小夜にはバレてたけどな…


 ああ…顔が熱いよ…








 あの後、沈黙の中で朝飯を食い終えた。

 小夜の飯…美味かったなあ…


 黙々と皿を洗い終え、休日なので朝シャンをしてからソファにもたれると、やっと羞恥の気持ちが落ち着いてきた。

 ちなみに、小夜は俺が二度寝してる間に部屋に戻ってシャワーと着替えを済ませていた。


「蓮さん」

「ん?」


 隣に座っている小夜が急に名前を呼んできたので振り向くと、真剣な顔でこちらを見ていた。


「…どうしたんだ?」

「今後のことについて、決めたいんです」


 今後…将来のことか?


「将来のことじゃないです!」


 さっきのを思い出して顔を熱くしたら、全力で否定されたので頭を振って忘れる。


「どういう意味だ?」

「簡潔に言うと、公にするのか…しないのか…です」


 「あー」と俺は天を仰いだ、多分だが学校のことだろう。

 小夜は学園で莫大な人気を誇る存在、それは本人も自覚していたはずだ。


 で、そんな小夜が付き合ったのだとすれば…公にすればかなり面倒くさいことになるだろう。

 EP99の時も、下の名前で呼びあっただけで騒がしかったからな。


「小夜はどうしたいんだ?」


 とりあえず、小夜の意見を聞いてみる。


「私としては、どちらでも…蓮さんは?」

「俺か?俺はぶっちゃけて言うとどっちでもいいんだよな」

「え?」


 俺の回答が予想外だったのか、キョトンとした顔になる小夜。

 …とりあえず説明しとくか。


「まず、俺って影が薄いから隠すことによっての束縛の点は心配ないだろ?とりあえず騒がしいのは嫌だし、これでしない方には軍配が上がった」


 影が薄くて本気でよかったよな、ここ。

 で、続きは…


「けど、しなかったとしたら小夜の告白の回数が減らなくて俺の精神がきつい。これでする方にも軍配が上がって、イコールになる」


 …まあ、本音を言わせてもらうと騒がしいのなんて我慢できるし、告白される辛さを受けたくないしで、する方が俺的には望ましい。

 けど、結構重要な事だしここは小夜に任せたかった。


「だから俺はどっちでもいいんだ。小夜に任せるよ」


 俺がそう言ってのけると、小夜は顎に手を添えて考える。


「…それなら、公にする方で良いですか?」

「ふむ…もちろんいいが、理由は?」


 俺が訊くと、小夜は微笑んで口を開く。

 その笑顔は、なんだか怖い。


「騒がしくなっても、一番の原因である私が沈めてあげればいいでしょう?」


 意味深に言う小夜…やべえ、なぜか分からんが背筋がヒヤッとしたぞ。

 …まあ、沈められる標的は俺ではないんだけどよ。


「それで、蓮さんはする以外の選択肢はなくなります」

「お、おう…」


 頬を引き攣らせて言うと、今度は笑みを深めて小夜はこう言った。

 今回の微笑みは、俺を優しい眼差しで見てくれている。


「あとの理由としては、蓮さんに傷ついて欲しくないですので」


 その言葉を聞いて、俺は目を見開いた。

 自然に、頬が緩む。

 小夜の心遣いに胸が熱くなった。


 俺は「ありがとう」と言って、小夜に抱きついた。


「れれれ蓮さん!?」

「しばらく、こうさせてくれ…」


 今は気持ちを抑えられそうにないからな。

 その考えが小夜に届いたのか、小夜は「はい…」と呟いて、俺の背中に腕を回してくれた。


「…そうやって、俺のことを優先的に考えてくれる優しさを持っている小夜も好きだ…」

「…自分の意思を放っておいて、私を尊重してくれる蓮さんのことが、私も大好きです」


 おっと…どうやらバレていたらしいな。

 苦笑しつつも、腕の力を強めて好きな人の温もりを感じたのだった。

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