EP144.到着
俺だ、江波戸蓮だ。
あの後、持ってきていた荷物をラゲッジルームへと収納してワゴン車に乗り込んだ。
席としては車が大きすぎてラゲッジルームに余裕があったため、備え付きの椅子を倒して俺と白河小夜が乗り込み。
二列目には、元々座っていた小夜の親戚純玲が戸惑っていたが、その隣に俺の妹瑠愛が乗り込んでいった。
運転するのは、小夜の父親である正悟さん……助手席は空席だ。
「純玲ちゃんは何歳なの?」
戸惑う純玲を他所に、瑠愛はほとんど変わらぬ表情で容赦なく質問を仕向ける。
魔王様の弟に対してもそうだったが、瑠愛は性格に反して積極的らしい。
で?純玲の年齢か〜……
初対面からずっと座ってるから身長は特定しずらいが、横に座っている約160の瑠愛よりは座高が少し低い。
顔立ちとしては小夜程ではないが綺麗で大人びているし……俺や小夜と大して変わらないような気がするが。
「じ、14歳です……」
勝手に予想をしていると、純玲はおずおずといった感じで俯きながらそう呟いた。
ふむ、14……ってことは、まだ中学生か。
「中学……三年生?」
再び、瑠愛がそう問い質した。
その年齢は確かに中二、もしくは中三だ。
んー……中二でその顔立ちは、些か成長しすぎてる気がするような気がする。
しかし、純玲は首を振った。
「5月生まれなので、まだ中学二年生です……」
「そうなんだ。綺麗だね」
少し驚いて、目を見開く俺と同じ感想を純玲に向ける瑠愛。
純玲はそれに、「そ、そんなっ……」と縮こまってしまっている。
……仕方ないかもしれないが、マイペースな部分はまだ見受けられないな。
「小夜。少し気になったんだが、普段の純玲ってどういう感じなんだ?」
そう思って、俺は隣で座っている小夜にそう訊いてみる。
ちなみに、当たり前?のように太ももを挟んで手と手は繋がれていた。
「純玲ちゃんが打ち解けてくれると、基本的に懐いてくれます。
どういうことかと言うと、くっついて離れない感じで、とても可愛くなります。
いつでもくっついてくれるところが、マイペース、と言えるところですね」
いや、猫か?
小夜の言葉を聞いて、最初に思ったのがそれだった。
いや、猫とは違って警戒せずに怯える方なのだが……いや、それでも猫か?
「普通に話せるようになるまではすぐですが、打ち解ける、と言った感じになるまでがとても長くて……
今の段階でも、純玲ちゃんが懐いているのは彼女の姉と、幼馴染の男の子らしいです」
……ん?幼馴染って最近どっかで聞いた気がするんだが……気のせいだよな?
「……あ。聞いてなかったが、純玲の苗字って小夜と同じ白河であってるのか?」
「え?あ、はい。私の叔父の娘さんですので、私と苗字は一緒ですよ。
ですが、どうしてそのような事を?」
「いや、一応だ。苗字といえど名前だし、今後お世話になるんなら知っときたいからな」
俺の言葉の意味を察したのか、繋がれていた小夜の手の握りが強まった気がした。
「ついたよ。さあ、どうぞ」
「でっか……」
「うん……」
無事に小夜の実家に着いたのだが、俺と瑠愛はそう感嘆の声を貰う。
……そう、でかいのだ……どこぞの屋敷、というわけでは無いのだが、一軒家にしては一回り二回りくらいはでかい家だった。
具体的に外観は説明しずらいが、白が基調のとても未来的な見た目をしている。
窓は多く大きく、中から見てはいないがなんとなく景色が良さそうである。
様々なる花がその周りの庭を飾り、木々による木洩れ日が美しい。
「……あの、正悟さんも小朝さんも、どこぞ社長では……ないんすよね?」
「え?うん。でも、小朝さんは沢山稼いでるみたいだよ」
小夜の母親であるあの人、結構元気な性格してるが実はかなりすげえんだな……
おずおずと言った感じで、俺らは正悟さんと純玲について行く。
……小夜は車の中と同じく、隣で手を繋いでいた……安心と幸福をもたらしてくれる。
正悟さんが扉を開くと……中から、純玲よりは少しハスキーな声が聞こえてきた。
「あ、正悟おじさん!純玲!おかえり!」
「ただいま、薫ちゃん」
「小夜ちゃんは──あっ!」
なんだか元気な声がして、俺らが中を除くと……純玲を成長させたような顔立ちや体つきの少女がでてきていた。
……いや、マジで純玲がもう少し大きくなったらこうなるんじゃねえの……?
そんな色素の薄い髪を短くしてショートボブにした少女は、小夜を視界に収めると目を輝かせる。
「小夜ちゃん!おか──………」
しかし突然、俺の方向へと視界を飛ばした瞬間……その瞳は淀んだ。
そして、その視線は俺と小夜の手に飛ぶ。
その少女……薫?は、再び俺に視線を戻し……指をさして、低い声を発した。
「……誰?小夜ちゃんと繋いでるその忌々しくて図々しい男は……」
「?」
殺気を溢れさせた言葉とその指さしという、あまり慣れていない状況に俺は首を傾げる。
……いや、だってよ……
「……薫ちゃん。蓮くんのこと、見えているのですか……?」
そう……こいつ、俺のことが見えてるのか……?
……大丈夫か?タイトル詐欺にならね?
いきなり侮辱されているのにもかかわらず、そう呑気なことを考える俺だった。




