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EP141.嵐

 ……え?試着だと……?


 俺こと江波戸蓮えばとれんは、若干テンション高めに提案した店員の言葉にぽかんと口を開けた。


 え?ちょっとま、試着!?

 ……なんでそんなに焦ってるのかって?


 そらあ当然、EP63の時のことを思い出すからだよ!

 具体的には表現しなかったが、あの時の白小夜しらかわさよの着替えタイムもあれだった。


 あの時でさえ、衣擦れの音を聞く度に色んな小夜の姿……それも結構際どいものを想像してしまっていた。

 ……ああ、あの時でさえ、だ。

 

 ……もちろん、今では小夜に対する好意があの時から計り知れないほどに膨れている。

 もし、その状態で彼女の試着を傍で聞いていたら……多分、一瞬で理性が吹き飛ぶぞ。


 しかし、そんな俺の重要な悩みには、影も薄さもあって店員は気づく様子もなく。

 小夜と妹の瑠愛るあの背中を支えた。


「ささっ、衣類は基本試着が大事なのですよ。試着室はあちらになります!」


 そう言って、小夜と瑠愛の背中を容赦なく押していく店員……何故か興奮している。

 え?もしかしてだが、水着に対してまで着用の仕方に厳しいタイプか……?


 ……それなら、少し嫌な予感がする。


「え?あ、あの……!?」

「待って、急すぎて対処が……!」


 店員の唐突な行動に、慌てた様子で押される小夜と、対処がむずくとも咄嗟の判断で店員を精一杯睨みつける瑠愛。


 ……いや、瑠愛の睨みは可愛いものだと思ってたんだが……背景が吹雪に見えるな……

 しかし、店員がそれに気づく様子もない。


 ……さすがに強引すぎて、従わざる負えないなあこれは……

 俺は悩みについて頭を抱えながらも仕方なく、店員含めた3人を駆け足で追いかけた。







「こちらになります。それと、しっかりと試せるよう私がお手伝いするサービスがありますが……お客様、如何なさいましょうか?」


 いや、寧ろさせろと言わんばかりのオーラを出しながら店員が二人に詰め寄る。

 なんだその意味わからんサービス、というのは俺もツッコミたいところだ。


 小夜はオロオロしながらも、瑠愛は速攻で首を横に振った。


「試着はするけど、お手伝いはお断り。一人でやるから、どっかいって」


 容赦なく店員を遠ざけようとする瑠愛に、店員が「でも……」と慌て始める。


「本当にいいから」

「……わかりました。では、そちらの金髪の美人さんは如何なされましょう?」


 瑠愛の拒絶に店員が凹むが、すぐに小夜へと手伝いするかどうか聞いてくる。


 その目はキラキラと、餌をねだる子犬の目ように輝いている。


 ……小夜って自分の意思や願望は通すけど、おねだりされるのは弱そうだな。

 こういう場面が小夜の場合で見た事ないから、完全に偏見にはなるんだけどもな。


「はあ……わかりました。お手柔らかにお願い致します」

「!! はい!承りました!」


 予想的中……新しい小夜のことを知れた。


 そういえば、『あの子たち』もこういうおねだりしてくる系なのだろうか?

 あくまで予想しか出来ないが、小夜の言い方的になんとなく合っている気がする。


「小夜さん、本当にいいの?」

「まあ……少しでもよく見えるのなら、蓮くんとしてもいいでしょうし……」


 そう言って、チラリと俺を見てくる小夜。

 ……正直、手伝うほうがマシでも、小夜自信が俺のために準備してくれたら何でもよかったりはするんだがな。


 しかしそれを言う前に、店員が小夜の背中を押してしまった……後で言おう、うん。


 小夜と店員が入って、カーテンがきっちりと閉められたボックス。

 その中から少しすると……<シュル……パサッ>という衣擦れ音がした。


 やっべこれあるの忘れてた!?

 さっき盛大に悩んでいたことなのに、まさかのすぐに忘れてしまうとは……


 じゃねえよヤバいヤバい……!?


 今、俺の脳内には小夜が黒のフィッシュテールスカートをおろし、絶対領域のその上が鮮明?に映し出されている。


 それから、<シュル、プチッ、プチッ……>という音がしだした。

 恐らくリボンブラウスを、リボンから順に外しているところだろう。


 俺の脳内には、ブラウスのボタンを外してその目立つ胸を隠すブラが……

 いや俺は何考えてんだよ!?


 さっきから、なぜだか理性が言うことを聞いてくれなかった。

 <パサッ……プチン……>という音がして、俺の脳内は最早お見せできないほどに……


「お客様、いい形しておりますね〜」

「どこを見て言ってるんですか!?」


 中から突然そんな会話が聞こえ、それにより心臓とともに俺の体が跳ねた。


「ではまずビキニから……」

「ひゃっ!?な、なにをっ──」


 ……すまん、緊急で現在俺の聴覚神経を意識的に遮断している。

 さすがにアウトだと思う……一応、ここって大分と健全なものにしてるし……


 隣にいる瑠愛も、引きつった顔で二人が入っていったボックスを見ている。

 ……いや、そんな顔するなら同性である瑠愛が助けにいってあげろよ……


「ピッタリです!大きさが目立って美しいですよお客様。こんな大胆なの、彼氏さんとかに見せるんですか?」

「ま、まだ見せないですっ!」


 なんで強制的に鼓膜を叩いてくんだよ!

 感想が色々とアウトなんだよもう!


「え?今日は彼氏さんもいらしてらっしゃるんですか?」

「え、ええ……」


 やっぱ気づかれてなかったのね……


「なるほどなるほど……うふふっ、少しだけ上の調整を致しますね」

「え?でもピッタ──きゃあ!?」

「ここをこうして……」

「ひゃっ……!?あ、あの……──」


 はい!強制シャットアウト!!無理!


 猛烈に顔が熱くなるのを感じながら、瑠愛が助けるまで俺は耳を塞いだのだった。


 ちなみに、三つの水着は俺の奢りで全部買うことになった。

 諭吉さん、サラバ……あんたのおかげで、二人の水着姿が楽しみだよ……

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