EP121.高熱
翌朝…6時にアラームをセットした時計が、寝室の中にけたたましく鳴り響いた。
「うぅ〜む…」
俺こと江波戸蓮は、そう唸りながらすごい音が鳴る時計を叩いた。
あ、別にそんな強くは叩いてないぞ?
重たい瞼をこじ開けながら、上半身に力を入れて体を…ん?
……なんか、かなり体が重いな……
手を支えにしてなんとか起き上がり、目を擦る…かなり体がダルいな……
そんな事を考えながらも、最近日課になりつつある朝シャンのために、俺は重い足取りで浴室に向かった。
「ふう〜…」
今日は白河小夜と一緒に弁当を作る予定があるのを思い出しながら、浴室を出る。
朝シャンを済ましてサッパリはしたんだが、何故かダルさは抜けず…寧ろ、段々と酷くなっている気がする。
「…ふぁっくしょい!」
疑問に思いながらもバスタオルで体を拭き初めて…EP109の時の時みたいにして、ルーティンを終える。
段々と、自分が息が荒くなっているのを、俺は気づくことが出来なかった。
<ピンポーン>
時刻として6時半過ぎ…ジメジメとしながらも、晴れた空の下で俺は洗濯物を干していた時。
開け放っていたガラス製のスライドドアの向こう側から、かなり待ち遠しにしていたインターホンの音が聞こえてきた。
「…ふぁっくしょい!」
最後の一着だったために洗濯バサミを挟んで、カゴを持ちながら室内に戻る。
カゴを置いてから駆け足で向かおうとしたが、体がかなりだるくて走れない……
仕方なく歩いてもだるく、それでも玄関に向かい、ドアを開ける。
すると、予想通り小夜が立っていた。
俺は微笑んで「…はよ」と挨拶を言った。
「………」
しかし、小夜は挨拶も微笑みも返すこともせず…俺の顔を見て、フリーズしていた。
しかし、段々と顔が青くなっていった。
「………小夜…?」
心配と少しの悲しさで小夜を呼びかけると、小夜は唇を引き結んで、俺の肩を掴んだ。
「ちょっ…小夜……!?」
急に触られ、顔を熱くさせて焦る俺を他所に、小夜は俺の体を回転させた。
体がだるいからか呆気なく体を回転させられた俺は、小夜に背を向けることになった。
「小夜……?」
どうしたのだろうかと背後の小夜を再び呼びかけると、小夜は黙って背中を押した。
対抗できなくて、反射的に靴を脱いで上に上がってもなお背中を押された。
ドアが開け放たれていた寝室の中に連れていかれ、そしてようやく止まった。
「すぐにベッドで横になって待ってください…っ!」
しかし、小夜にそう言い放たれ、どういう意味か俺は首を傾げる。
しかし、相当深刻そうに言われたため言う通りにベッドに身を預けた。
すると、結構な開放感が身を包んだ。
直ぐに、小夜は体温計を手に戻ってきた。
その体温計を俺の額に向け、<ピッ>と音をたてて俺の体温を測る。
「38.8…」
俺の体温を見た小夜は、元々青かった顔を更に青くさせてそう呟いた。
されるがままで状況が理解出来ていなかったが、どうやら俺は熱があるらしい。
…昨日雨だったが、そのせいだろうか?
ただ、熱なのにあまり実感はなかった。
体は確かにだるいしクシャミも時々出るが…最低限体は動くからだ。
…まあ、さすがに38.8は高熱だし、まだ上がる可能性もあるから今日は学校休むか…
ぼーっとしながらそう思っていると、小夜はスマホを取り出した。
ぽちぽちとディスプレイをタップし、スマホを耳に当てる。
「もしもし?あ、お父さん。すみませんが、今日、学校を休もうと思うんですが…」
………ん?
「…いや…小夜はさすが───」
「え?あの…蓮さんが、かなりの高熱を出してしまいまして…」
顔を赤くさせて、何故かもじもじと電話の相手…多分正悟さんに話す。
…待って、小夜が休むってどういうことだ…?
「え?詳しく?えーっと…報告を忘れてしまっていましたが…はい…やっとお付き合いをさせて貰えることに…はい…」
…正悟さん、何訊いてるんだ…?
俺を他所に、小夜は顔を真っ赤にさせているんだけど…
あの人、落ち着いた人ではあるけど癖が強いからなあ…
「すみません…え?あ、はい。そういう事になります…ありがとうございます。はい、また夏に」
…夏?夏に正悟さん来るのか…?
やべえ、何考えればいいのかわかんね…だんだん眠くなってきたし…
「…なんで小夜も…?」
「看病します、当たり前でしょう。サボり…になってしまうのは少し気が引けますが、出席日数は足りますし、蓮くんのためならば」
「…すまん……もうすこし…俺が、体調に…気をつけてれば…」
小夜は微笑んで「いいんです」と首を振った。
いや、良くはないと思うんだが…てか、それ正悟さん許可したのかよ…ならもういいか…
「では、凛さんに頼んで蓮くんのご両親に連絡させますので、寝ておいてください」
「……さんきゅ」
それだけ言って、姉貴に連絡する小夜を後目に俺は瞼を下ろす。
両親…まあ、学校関連の処置はちゃんとしてくれてるし、凛が頼めば…いける…か…
そう考えると同時に、俺は意識を手放した。




