EP101.帰り道
アフターストーリーを移転しました。いずれアフターストーリーも完結はさせますが暫くは更新しません。
「………」
「………」
……俺だ、江波戸蓮だ。
えっとだな……この度、白河小夜さんとお付き合いさせて頂いているのですが……
いや、結婚の挨拶に来てんじゃねえよ。
……こほん、お付き合いを始めさせていただいたのですけども。
……なんでこんな気まずいの?
とりあえず、今の状況を整理しよう。
俺は小夜にこ、告白した……
今でも信じ難いが、小夜はそれを承諾してくれて、しばらく抱き合っていた。
……ちょっとまて、今気づいたけど抱き合ったの初めてだよな?
え?……うわあぁぁぁ!!?
「………」
「………」
……まあとりあえず、あの後しばらく時間が経ち、後夜祭が幕を閉じた。
そして今現在、俺らは一緒に帰っているところである。
それはいいんだけどな……
顔が熱くなって小夜の顔がまともに見れないし!どっちも喋らないから気まずいし!
……付き合ったことなんてあるわけないけどからわからんのだが、告白後ってこういうもんなの?え?俺らだけ?
……いや、別に嫌という訳では無いんだよ……寧ろ、どっちかと言うと嬉しい。
だってよ、この気まずい状況でも手を繋いでるのた。
幸せの極みとは、この状況のことを言うのだろう。
そんな感じでしばらく歩いていると、マンションが見えてきた。
その瞬間、小夜の歩く速度が著しく遅くなったのに気づき、俺は反射的に小夜を見た。
「………」
小夜はこの暗い空間でも分かるほど顔を真っ赤にしていて……
よく見れば、口角もかなり釣りあがっているのが分かった。
小夜も今の状況に幸せを感じているってことか……?
それなら、俺としてもかなり嬉しいことなのだが……
………。
「……なあ、小夜」
「ひゃ、ひゃい!?」
急に呼ばれたからか、赤い顔のまま小夜が顔をこちらに勢いよく振り向いた。
俺と目が会った瞬間視線を逸らす小夜……やべえ、すげえ可愛い。
こんな小夜を見てると、逆に落ち着いてきた。
「提案があるんだが」
「……はい、なんでしょうか?」
目を逸らしつつも、とりあえずと落ち着いた口調で小夜が促す。
俺は頬を掻きつつ、口を開いた。
「ちょっと、遠回りしないか?」
俺の言葉に、小夜は目を再度俺と合わせる……その目は、かなり見開いていた。
そう思うと今度は細くなり、優しい微笑みを浮かべる……綺麗だ。
「……はい」
嬉しさを噛み締めているような声で、小夜はそう答えた。
遅くなっていた速度を戻し次の別れ道、いつもは真っ直ぐの所を右に曲がった。
お出かけや買い物にも全く使わないため、歩きなれていない道ではあるのだ。
しかし、何となく方向はわかる。
「どこに行くのですか?」
「……決めてねえよ」
マンションに帰ったらすぐ寝るだけだ。
そういうことはわかっているため、それまでの時間を伸ばしたい……
つまりは、一緒にいられる時間を伸ばすため遠回りしてるだけで、決める必要がない!
顔を逸らして拗ねた風にそう言うと、小夜は意図がわかったのか「ふふ」と笑った。
「……好き」
「──ッ!?」
急に何を言い出すんだ!?
俺は今すぐ逃げ出したくなったが、手を繋いでるためできない……!
……え?離せばいいだろって?出来るわけねえだろうが!
……すまん、ちょっとやけくそになってた。
「……ったく」
「ふふ。蓮さんは可愛いですね」
好きな人に可愛いと言われるのは……プライドの関係で素直に喜べない……
中性顔を可愛いと言われたら、さすがにちょっとキレるけどな?
「私は顔で蓮さんを……''好き''になっていませんよ」
だから急に何を言い出すんだよ!?
あと、心の読むタイミングがちょっとばかし悪質すぎないか!?
「先に蓮さんにいっぱい好きって言われたので、その仕返しですよ。
……あと、14回ですかね?」
「よく覚えてんな……」
「忘れませんよ」
………。
「そういう思い出を、隅々まで覚えていてくれるところも好きだ」
「ふぇ!?」
仕返しの仕返しに、と俺は顔を熱くしながらも好意の言葉を口にする。
小夜は目を見開いて叫ぶが、俺は立て続けに口を開く。
「そうやって俺がなにかする度にはにかんだ笑顔になったり、顔を赤くするのも好きだ」
「………」
小夜の顔が、どう表現すればいいか分からないくらい赤く染まった。
……顔が熱くはなるが、好きだということに対する抵抗はもう俺にはない。
小夜が俺と好きの数を競い合いたいなら、俺だっていっぱい言ってやる。
「……ず〜る〜い〜で〜す〜!!!」
「ん?ちょ、どうした!?」
そう叫んで握ってない方の手で俺の肩をポコポコと殴ってくる……
全然痛くないのが、なんとも微笑ましい。
……でも、ずるいって何がだ?
「これが分からないんですか!?
そういえば顔は赤くしてても、なんの躊躇もなく言ってましたよね!
なんですか重度の天然ジゴロですか!?」
「ちょ、心読むなよ……それに落ち着け。
とりあえず、喜んでくれたのはありがたいが……ずるいってどういう事だ?」
「しりません!!」
えぇ……
………あ。
「……でもな、小夜」
「なんですか!」
「……声がでかい」
顔を熱くしながら指摘する。
小夜がハッとなって周りを見渡す。
視界に写ったであろうそれは、窓から俺たちの様子を生暖かい目で見る市民の方々だ。
「うぅ〜……蓮さんのせいです!」
「なんでだよ……」
俺一回しか声でかくしてなかっただろ……
その一回のせいなのか、俺にも視線が集まってる気がしなくもないが。
とりあえず、俺が悪いらしいので市民の方々に頭を下げる。
すると、市民の方々は微笑んで手を合わせた……いや、どういうこと?
「……はあ、帰るか……」
「そうですね……家で今日の蓮さんの想像しながら、寝させてもらいます……」
「いや、ナチュラルに恥ずかしいこと言わないでくれ……可愛いし」
「かわっ……!?」と小夜は叫びかけたが、寸前で止めた。
いや事実だろ、小夜が可愛いのは。
はあ……これ、毎回続くなら幸せすぎて逆に辛くないかねえ……荷が重い。