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異世界に転生したら戦姫になった件  作者: アルス
エアリアル編
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第6話 アクアプリンセス登場

私たちは今日はカフェにアルバイトに来ている。

今日はお客さんも少ないため、意外とのんびりとお仕事をしている。


「唯ちゃん、シルフィちゃん、そろそろ休憩入っていいよ」

「はーい」


私たちはバックヤードの休憩室に行った。

その直後、マスターがサンドイッチを持って来てくれた。


「はい、これ賄いだから食べてね」

「わあ!ありがとうございます!」


私とシルフィは休憩室で仲良くサンドイッチを食べた。


「美味しい~♡」

「ほんとうですね。凄くおいしいです」


ここのサンドイッチは、このカフェのメニューの中で一番美味しく、このお店の看板メニューになっている。

このサンドイッチはマスターのお手製で、具だけでなくパンも手作りらしく、とてもふっくらしていて柔らかい。


「二人には本当に感謝してるからね。君たちが来なければこのサンドイッチも日の目を見ることは無かったわけだからね」


そう。このサンドイッチ、初めは全く売れていなかった。

その原因はお店の外観と内装にあった。

私たちが来た時は外観も内装もかなりボロボロで、お昼であるにもかかわらずお化けが出るんじゃないかというほど不気味だった。

元々このお店に来たきっかけも、エレメントプリンセスとしてお化け退治を依頼されたためだった。


「あの時シルフィ、凄く怖がってたよね。しかもマスターが現れた瞬間、腰を抜かしてお漏らしまでしたもんね」

「やめてくださいっ!!恥ずかしいじゃないですか!!」


シルフィは顔を真っ赤にして怒った。

私とマスターはその時のことを思い出して笑ってしまった。


「でも唯ちゃんとシルフィちゃんがお店を改修してくれたおかげでまたこうして繁盛したんだから、本当に感謝してもしきれないよ」

「いえいえ、そんなことないですよ。これもマスターのおかげですよ」


その時、お店の方から誰かが入ってきた音がした。


「あの、すみません。アルバイトの募集を見て来たんですけど…」

「はーい」


マスターはお店の方へ行った。

私たちはサンドイッチを食べ終え、お店の方に戻った。

それから4時間後、私たちは再び休憩室に戻ってきた。


「お疲れ様、二人とも」

「お疲れ様です。あれ?その紙は?」

「ああ、面接に来た子のプロフィールペーパーだよ」


プロフィールペーパーは、私が元いた世界でいうところの履歴書みたいなものだ。

私はプロフィールペーパーをちらっと見た。


「あれ?これまさか、のどかちゃん?」

「ん?唯ちゃんの知り合い?」

「はい。水月のどかちゃん、私が元いた世界での親友です」

「ということはもしかして…」


シルフィは何か気付いたのか、何かを考えるような仕草を見せた。


「唯さん、私、これからフローラ様のところへ行ってきます。晩ご飯はお先に召し上がってもらって構いません」

「はあ…」


シルフィは先に行ってしまった。

私は再びプロフィールペーパーを見てみた。

住所を見てみると、私たちが過ごしてるホテルの隣の家に居候させてもらってるらしい。

会いに行きたいけど、居候しているなら突然行ってもその家の方に迷惑がかかってしまう。


「マスター、のどかちゃん、採用するんですか?」

「うーん…採用したいんだけど何をお願いしようか迷っててね…。仕事はあるんだけどあの子もエレメントプリンセスらしいからね…」

「何か問題があるんですか?」

「この国の法律で、エレメントプリンセスにやらせていい仕事が決まってるんだよ。万が一の時に彼女たちが飛び出すことができるようにね」

「なるほど…」


マスターがシルフィにはさせるけど私にはさせてない仕事があった理由がよく分かった。

確かに有事の際に飛び出せないのは問題かもしれない。


「でしたらマスター、私とのどかちゃんでホールに出てシルフィにはバックの仕事をしてもらうのはどうです?」

「やっぱりそれしか無いか…。まあでも裏方の仕事もかなり大変だからシルフィちゃんがずっとやってくれるのは確かに助かるな」


マスターはのどかちゃんの採用決定の書類を作成して私に渡してきた。


「これを帰りに水月さんに渡してもらってもいいかな?家は君たちが泊まってるの隣の民家だからね」

「分かりました!では失礼します」


私は休憩室を出て、お店を出た。

そしてのどかちゃんが居候させてもらっている家へ向かった。


ピンポーン♪


「はい。どちら様でしょうか?」


インターホン越しに男の人の声が聞こえてきた。

どうやらこの家のご主人のようだ。


「あ、あの、カフェ・フラワーエルフの佐倉唯といいます。水月のどかちゃんいますか?」


カフェ・フラワーエルフというのは、マスターが考えた名前だ。

名前の由来は私とシルフィらしい。


「のどかちゃん?ああ、ちょっと待っててくれ」


それから少しすると、玄関から男性が出てきた。


「悪いな。のどかちゃん、今俺の娘を風呂に入れてくれてて出れねえんだ。だから用件は俺の方から伝えておく」

「ありがとうございます。ではこれを渡しておいて下さい」

「おう、分かった」


男性は私から封筒を受け取ると、家の中へと戻って行った。

私はそのままホテルに戻り、シャワーを浴びた。


「唯さん、今戻りました」


私がお風呂から出てくると、ちょうどシルフィが帰ってきた。


「おかえり。思ったより早かったね。それでフローラ様は何て?」

「思った通りでした。アクア様、のどかさんをエレメントプリンセスに選んだそうです」


え?のどかちゃんがエレメントプリンセス?

そういえばマスターものどかちゃんがエレメントプリンセスだと言ってたけど何かの冗談だと思っていた。

なにせ私の記憶ではのどかちゃんはあまり運動は得意ではないから。


「シルフィ、アクア様の加護を受けたエレメントプリンセスってどんなことができるの?」

「アクア様の加護を受けたエレメントプリンセス、『アクアプリンセス』は水魔法と回復魔法の2つを得意としています。チカラに関してはフラワープリンセスの次に弱いです」

「でも私より強いんだ…」

「エレメントプリンセスの能力は、その人の変身前の能力の影響を受けるので、もし唯さんとのどかさんの能力に大きな差があるのでしたら、もしかしたら唯さんの方が物理攻撃は強いかもしれませんね」

「魔法は?」

「魔法は女神様の魔法の強さに依存します。ただ、呪文詠唱は朗読の得意、不得意は出てしまいますね…」

「なるほど…」


私とのどかちゃんの運動の能力は天と地ほどの差がある。

ただ、国語の音読は大差はない。

だからおそらくエレメントプリンセスとしての能力は私の方が上かもしれない。


「とりあえず私もシャワー浴びてきます。お食事は先に摂って構いませんので」

「あ、うん」


シルフィはお風呂に入って行った。

時計を見ると、ご飯の時間までかなりあった。


「何しよう…」


テレビでも見ようかと思ったけど、この世界にはテレビがない。

スマホはあるけど電波は飛んでいない。

しかも充電もできないので電池はもう切れてしまっていた。


「そうだ!本棚に何かないか探してみよっと!」


私は部屋の本棚を見てみた。

しかし、本棚にあるのはこの街のガイドブックやグルメ雑誌だけだった。


「うーん…何か面白いものがあればいいんだけどなぁ…」


私はベッドに寝転がった。

その時、外から大きな音がした。

窓から外を見てみると、魔物たちが街を襲っていた。

私は急いでフラワープリンセスに変身し、窓から飛び降りた。


「待ちなさい!!」


私の声に反応して、魔物たちは一斉にこちらを見た。


「エレメントプリンセスか。だがお前一人に何ができるって言うんだ」

「だ、誰があなたたちになんか負けるものですか!!」


ただ、あまり自信は無かった。

何せ魔物たちは数え切れないくらいいるのに対して私はたった一人。

正直、かなり絶望的だった。

でも、諦めるわけにはいかない。

だって私はこの世界の平和を守るエレメントプリンセスなんだから!

私は魔物たちに対して魔法を放った。

しかし、魔物たちは倒れても所詮は氷山の一角に過ぎず、次から次へと現れていた。


「きりがない。せめてシルフィがいてくれたら…!」

「ま、待ちなさい!」

「え?」


私は咄嗟に振り返った。

そこにはのどかちゃんが立っていた。

のどかちゃんは手に持っているブローチを天に掲げた。


「水の女神のチカラを秘めしブローチよ、契約に従い我にチカラを貸せ。プリンセスエンゲージ!」


次の瞬間まばゆい光があたりを包み込む。


「うわっ!」

「この光は…」


私が再び目を開くと、そこには変身したのどかちゃんが立っていた。

青と水色を基調としたドレスを身に纏い、手にはアクアマリンの宝石のついた杖を持っていた。


「え、エレメントプリンセス!?ばかな…この街にはなりたての奴が一人いるだけじゃなかったのか!?」


のどかちゃんが手にした杖を振った。

その次の瞬間、どこからともなく津波が起きて私と魔物たちの方に襲いかかってきた。


「ちょっ…!」


私は咄嗟に大ジャンプをして街灯の上に乗った。

下を見ると、魔物たちが一気に流されていた。


「す、凄い…」


そんなことを思っていると、のどかちゃんは私に向けて水の矢を撃ってきた。


「ちょっ…!」


どうやら私を魔物たちの仲間と勘違いしている様子だった。

私はのどかちゃんの撃ってくる矢をかわした。

しかし、かわしてもかわしてものどかちゃんは私に向けて水の矢を撃ち続けていた。

その時、彼女の後ろからシルフィが走ってきた。


「アクアプリンセス、待って下さい!彼女は敵ではありません。あなたと同じ、エレメントプリンセスです」

「え?」


のどかちゃんの手が止まった。

私は最後にのどかちゃんが撃った矢が当たってびしょ濡れになっていた。


「うう…冷たい…」


この街の夜はそこそこ冷える。

そんな中で水を浴びてしまったのでかなり体が冷えてしまった。

私は自分の体をさすりながらため息をついた。


「ごめんなさい…てっきり魔物たちのボスかと…」


のどかちゃんが申し訳なさそうに謝ってきた。

早とちりなところは相変わらずの様子だった。

私とシルフィはのどかちゃんを連れてホテルに行った。

部屋に着くと、シルフィはストーブを点けて私に毛布をくれた。

私は変身を解いて毛布にくるまってストーブの近くに座った。


「まさかエレメントプリンセスがエレメントプリンセスを襲うなんて初めて見ましたよ…」

「ごめんなさい…。私がアクアプリンセスになったのは一昨日でして、まだ他のエレメントプリンセスを見たことが無くて…」

「まあ、この世界には今現在、エレメントプリンセスは実質、あなたと唯さんの2人しか存在していませんからね」

「え?2人しかいないんですか?」

「エレメントプリンセス自体は5人いるのですが、1人はブローチを壊されてしまい、2人はチカラを使い果たしてしまって戦闘不能です」

「そ、そうなんですね…」


のどかちゃんも驚きを隠せない様子だった。

まぁ、いきなり2人だけと言われても驚くよね…。


「でもまさか唯ちゃんがこっちの世界に来てエレメントプリンセスやってたなんて思わなかった…」

「私ものどかちゃんがこっちに来るなんて思いもしなかった。何があったの?」

「実は…」


のどかちゃんは私たちに何があったかを話してくれた。

夏休みに海に行って友達と遊んでいたら小さい子が溺れていたのを見かけてその子を助けようとして溺れて亡くなってしまったらしい。


「不思議ですね…」

「何が?」

「エレメントプリンセスになる少女は、生まれた時からその女神様のご加護を受けているので、その女神様が司るエレメントに関連するものによる災難を受けないものなんですが…。唯さんの場合は例えば毒草ですね」

「そういえば、小学生の時に集団食中毒が起きたんだけど、その日に限って熱出して学校を休んだんだよね…。しかもその原因、確か野菜サラダだった気がする」

「それはおそらくフローラ様のご加護のおかげですね。フローラ様は花だけでなく草や木々をも司る女神様ですから」

「そうだったんだ…」

「のどかさんの場合はアクア様、つまり水の女神様ですので普通は海で溺れて亡くなるということは…」

「それについてはアクア様が教えて下さいました。アクア様のチカラが大幅に弱まってしまって私を守り切ることができなかったと謝罪もされていました」

「やはり女神様が眠りについてしまっている弊害はかなり大きいようですね」

「ところで唯ちゃんと…シルフィさんでしたっけ?二人はどういう関係なの?」

「えっと…何だっけ?」

「エレメントプリンセスとプリンセスパートナーですよ」

「あー、それそれ」

「プリンセスパートナー?」


シルフィはのどかちゃんにプリンセスパートナーについて話してくれた。


「あー、じゃあ私の場合はマリンちゃんですね」

「マリンちゃん?」

「私のプリンセスパートナーのイルカさんの名前です」

「なるほど」

「まあそれはそうと、これでプロミネンス島に行けるね」

「まだ無理です」

「え?」

「プロミネンス島に行くにはバブルアイランドを復活させ、アクア様を完全に目覚めさせなければいけません」

「あ、そっか」


私はすっかり忘れていた。

そもそも私たちはそのためにエールを目指していたのだった。


「とにかく、これからよろしくお願いしますね、のどかさん」

「はい!」


のどかちゃんは笑顔で答えた。

こうして、私はのどかちゃんという新たな仲間を迎えたのであった。

しかし、エールに行くにはまだまだ資金が足りない。

でも3人で頑張ればすぐに何とかなるだろう。

私たちは翌日から3人でカフェ・フラワーエルフで必死に働いた。

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