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異世界に転生したら戦姫になった件  作者: アルス
エアリアル編
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第4話 フラワープリンセスのチカラ

私が天界から戻ると、集落にはたくさんの負傷者がいた。

長老によると、どうやら魔王軍はすでにアムルの森に侵攻してきており、それを聞いたシルフィは女神の神殿の入口で最後の砦として迎え撃つべく待機しているらしい。

以前シルフィからちょこっと聞いたが、女神の神殿はこの集落にある特別な門からしか行けないらしく、その門の場所は族長とシルフィだけが知っているそうだ

つまり、この集落に入らせなければ女神の神殿の安全も確保できるはずである。

私はフラワーロッドを構え、集落の入口で迎え撃つことにした。

そしてしばらくすると、突如大量の矢が飛んできた。

私は咄嗟にシールドドームを使ったが、数十発の矢が集落の中に飛んできてしまった。

しかし、幸いなことに集落にいる人たちに当たることはなかった。

直後、魔物の軍勢が一気にこちらに押しかけてきた。


「フラワーサークル!」


魔物たちが一気に吹き飛んだ。


「なっ…!このチカラ、エレメントプリンセスか!」


リーダーらしき魔人が言った。


「エレメントプリンセスは全て倒したはず…!なぜだ!」

「はっ…!まさか新しく生まれたエレメントプリンセスか!」

「私はフラワープリンセス。花の女神フローラ様のご加護を受けたエレメントプリンセスよ!」

「やはりフローラの手の者だったか!だがお前一人に何ができると言うのだ!お前ら、やってしまえ!」


敵のリーダーらしき男がそう言うと、他の仲間と共に襲い掛かってきた


「フラワーシャワー!」


私が魔法を唱えると、無数の光の粒が降り注いだ。


「ポワワワワ…」


魔物たちは花に包まれて浄化されていった。


「凄い!」


私はつい自分の魔法の凄さに驚いてしまった。


「くっ…!お前ら、一旦退却だ!」


魔物たちは逃げて行ってしまった。

次の瞬間、エルフのみんなが歓喜の声を上げた。

私は魔王軍が撤退したのを確認し、変身を解いた。


「やったぞー!」

「助かったんだ!」

「これで安心して暮らせるね」


みんな口々に喜んでいた。

私もその光景を見て嬉しかった。

しばらくして、族長が私のところにやってきた。


「唯殿。いや、今はフラワープリンセスと呼ぶべきか。あなたのおかげで我々も、女神の神殿も救われた。本当にありがとう」


族長は深々と頭を下げながらお礼を言ってきた。


「いえいえそんな!私の方こそこれまで何のお役にも立てずにすみませんでした…」


私は恐縮しながら答えた。


「とんでもない。あなたの力がなければ我々は今頃滅ぼされていただろう。感謝してもしきれぬほどじゃよ」


族長が優しく言ってくれた。


「それにしてもあの魔法…シルフィの魔法よりも遥かに強力であったなぁ。あれほどの威力とは恐れ入ったわい。さすがはエレメントプリンセスじゃな」

「そ、それほどでもありませんよぉ~えへへ♪」


褒められてちょっと照れた。

修行を頑張った甲斐があったな。

その時、シルフィが走ってきた。


「魔物たちの気配が消えたので来てみたら、これは一体…」


族長がこれまでのことをシルフィに話すと、シルフィは驚いた表情をした


「まさか唯さんがお一人で退けたなんて…」

「まあワシらも最初は何が起きたのか全く分からなかった。じゃがこうして魔物たちを退けることができたんじゃ。それは紛れもなく、唯殿の功績によるものじゃ。とにかく、今夜は宴じゃ。皆のもの、準備をするがよい」


族長が言うと、エルフたちは一斉に動き出した。

私とシルフィは族長が呼びに来るまで家にいるよう言われてしまい、仕方なく家に帰った。


「それにしても、エレメントプリンセスのチカラがあれほどとは思いませんでした」

「うん、私もびっくりした。族長さんの話だと、シルフィよりも強かったみたいだよ」

「ふふっ。それはぜひとも見てみたかったですね」


その時、突然フローラ様の声が聞こえてきた。


ーー佐倉唯、シルフィ、お話があります。今一度、天界へ戻ってきて下さい


「今のは、フローラ様だよね?」

「ええ…」


私たちは家を出た。

その直後、シルフィは村の奥へと向かった。

シルフィを追って村の奥へ行くと、封印が施された扉があった。


「これは…」

「天界への門です。この前はフローラ様が連れて行って下さいましたけど、本来はこの扉から行くのです」


シルフィは呪文を唱えて扉を開けた。

そして、扉をくぐり抜けると、私とシルフィが泊まった部屋に出た。


「ここに出るんだね」

「ええ」


私たちは部屋を出てフローラ様のもとに向かった。


「先程はよく頑張りましたね。初めての実戦にしては上出来ですよ」


フローラ様は微笑んで言った。


「ありがとうございます!」

「それでフローラ様、私たちを呼び出した理由は何でしょうか」

「…」

「フローラ様?」

「……アースプリンセスが魔王軍に倒されました」

「………!」

「え?残ったエレメントプリンセスは私だけじゃ…」

「どんな手段を使ったのかは分かりませんが、アースプリンセスは一時的にチカラを取り戻し、再び魔王軍に挑んだようです。最初こそは善戦だったようですが、戦況は徐々に悪くなり、最後は四大皇帝の一人、ブラッドに破れ、ブローチを破壊されてしまったそうです」

「ブローチを…」

「エレメントブローチは、エレメントプリンセスの全てのチカラの源。それが破壊されたということは、エレメントプリンセスのチカラを失ったということ。つまり、もうエレメントプリンセスになることはできません」

「そんな……!」

「何とかならないのですか!?」

「アースブローチは女神ガイアのみが生み出すことの出来るもの。他の者が作り出すことは不可能なのです」

「じゃあ…ガイア様が目覚めないと…」

「アースプリンセスは二度と変身できない…?」


私の言葉にフローラ様は頷いた。


「じゃあガイア様を急いで目覚めさせないと…」

「ガイアの眠る大地は魔王の城に最も近い場所にあります。貴女一人のチカラでは、魔王軍に返り討ちにされてしまうでしょう」

「そんな…!」

「ガイアを目覚めさせるためには、4人のエレメントプリンセスのチカラが必要不可欠でしょう。まずはフレイアを目覚めさせることを最優先で考えた方が良いでしょう」

「でもフローラ様、プロミネンス島に行くには…」

「アクアのチカラが必要不可欠です。ですが以前も話した通り、アクアプリンセスはまだいません。しかし、アクアが目覚めてしまえば、アクアプリンセスを誕生させることができます」


確かにそうだ。

アクアプリンセスを生み出すことができるのはアクア様だけ。

仮に候補者がいてもアクア様が眠ったままではアクアプリンセスは生まれない。


「フローラ様、あとどのくらい猶予がありますか?」

「あまり多くはないでしょう。ブローチはエレメントプリンセスに変身するチカラを失っても女神の加護は残ります。その加護がある限りは魔王軍も迂闊に手を出すことはできません。しかし、アースブローチが破壊された今、エアリアルを守る加護のチカラは弱くなっています。もしファイヤーブローチとウィンディブローチを壊されてしまったら、残るは唯の持つフラワーブローチのみ。魔法が安定していない貴女は魔王軍にしてみれば格好の的。もし皇帝でも現れた日には倒され、ブローチも壊されてしまうでしょう」


フローラ様の言葉に、私は言葉を失った。

するとフローラ様は、シルフィの方に向き直った。


「シルフィ、唯と一緒にバブルアイランドへ行きなさい」

「え?でも私が行ったらエアリアルは…」

「私が守り抜きます。本来は女神が手を出すのはご法度ですが、今はそんなことを言っている場合ではありません。一刻も早く女神を目覚めさせなければこの世界に未来はありません」

「………分かりました。必ずや、アクア様を目覚めさせてみせます。唯さん、行きましょう」

「う、うん…」


私は少し困惑しながら天界をあとにした。

そして、家で旅の準備をして集落を出発した。


「バブルアイランドは『エール』という港町の南東に位置しています。エールまではこの近くの『フィオーレ』という町から馬車が出てるのでまずはフィオーレを目指しましょう」

「そうだね」


私はシルフィの案内でフィオーレの町へ向かった。

しばらく歩いていると、シルフィが私に話しかけてきた。


「ところで唯さんは転生する前はどんな職業を経験したのですか?やはり魔法使いか戦士ですか?」

「ううん、普通の女子中学生だったよ。そもそもあっちの世界には魔物いないし…って、シルフィ?」


シルフィは私の話を聞き、少し暗い表情になった?

そして、シルフィが口を開いた。

どうやら本当はこの世界には元々魔物はいなかったらしい。

でも、大魔王ダークが現れて以来各地に魔物が現れ始め、その対抗手段としてクラリス様は、フローラ様をはじめとした5柱の女神様にエレメントプリンセスのチカラを生み出す秘法を伝えたということのようだ。

つまり、フローラ様たちは元々は必要性の無さからエレメントプリンセスを生み出す秘法を知らなかったようだ。

そしてウィンディ様、フレイア様、ガイア様の3柱の女神様たちは、秘法を伝授されてすぐにこの世界から戦いの素質を持った少女たちを選び、エレメントプリンセスのチカラを与えたらしい。


「フローラ様とアクア様はなんでエレメントプリンセスをすぐに誕生させなかったの?」

「フラワープリンセスには可憐さとお淑やかさ、アクアプリンセスには知識と冷静さ、物静かな性格が求められているからです。といってもフローラ様とアクア様の趣味ですけど…」

「な、なるほど…」


私は苦笑いしながら答えた。

だって私、お淑やかさとは無縁なんだもん。

そして、私たちはフィオーレの町にたどり着いた。

町に入ると、私たちは宿を探した。

宿屋はすぐに見つかり、部屋を借りることができた。

私たちは部屋に入り、荷物を置いた。


「ねえシルフィ、これからどうしよう?」


私はベッドの上に寝転びながら、シルフィに質問をした。

シルフィは考え込んだ。


「そうですね……。とりあえず、明日は町で情報収集をしてエールに行く手段を探しましょう」

「分かった」

「おや、あんたたち、エールに行くのかい?」


宿屋の女将さんが私たちに声をかけてきた。


「はい。女将さん、何かご存知なのですか?」

「知ってるも何も、町じゃ今、エールへの定期馬車が運休になっててみんな困ってるからね」

「ええっ!?」


シルフィは凄く驚いていた。

私も驚いてしまったけどなんとか平静を保った。


「でもどうして…」

「なんでもここ最近、エレメントプリンセスがみんなやられちゃって魔物の動きが余計に活発になったらしいんだ。特にこの辺りじゃここ数日の間に何度も襲われてるみたいだよ」

「そうなんですか…」

「この町はエールから毎日物資が送られてきてて、それで生活を成り立たせてるもんだから、定期馬車の運休は町全体としては相当致命的なんだよ。今、町の男共が魔物に立ち向かってはいるけど戦況は最悪だよ」


女将さんはそう言いながらとぼとぼと去ってしまった。


「シルフィ、私…」

「ふふっ。唯さんの言いたいことは分かりますよ。エレメントプリンセスとしてチカラになりたいんですよね?」

「うん」

「私もプリンセスパートナーとして協力しますよ」

「プリンセスパートナー?」

「プリンセスパートナーというのは、女神様からエレメントプリンセスのパートナーとして任命を受けた者のことです。基本的にはその女神様の眷属の中から選ばれるのですけど、そうではない人もいます」

「そうなの?」

「はい。例えばフレイア様の眷属は火の鳥ですけど、ファイヤープリンセスのパートナーは人間なんですよ」

「なるほど」


その時、外が騒がしくなった。

窓の外を見ると、魔物たちが町へ侵攻してきてるのが見えた。

それを見たシルフィは咄嗟に杖を手にした。


「フラワーショット!」


シルフィの魔法を受けた魔物たちが吹き飛んだ。


「唯さん、早くフラワープリンセスに…!」

「う、うん!花の女神のチカラを秘めしブローチよ、契約に従い我にチカラを貸せ。プリンセスエンゲージ!」


私はフラワープリンセスに変身し、シルフィを抱えて窓から飛び降りた。

すると、町の人々が一気にざわつき出した。


「おい、あれエレメントプリンセスじゃねえか?」

「本当だ…。でもファイヤープリンセスもウィンドプリンセスもアースプリンセスもやられたはず…」

「エルフもいるぞ。ま、まさか…花の女神フローラ様のチカラを持つエレメントプリンセスか!?」


私たちは町の人たちの声を気にせず、魔物たちの方へ駆けていった。

魔物たちは一斉にこちらに向かってきた。


「シルフィ、ここは私が!」

「はい、お願いします!」


私はフラワーロッドを構えて魔物たちを迎撃した。

しかし、数が多すぎる。このままでは押し切られてしまう…。

仕方ない、こうなったら浄化技で一気に浄化するしかない。


「フラワーサークル、展開!」


私はフラワーロッドで地面を突いた。

その瞬間、魔物たちの足元に巨大な魔法陣が現れ、動きを封じ込めた。


「悪しきチカラを持つ者よ、聖なるチカラにて浄滅せよ!フラワージャッジメント!!」


私はフラワーロッドを空に掲げると、魔法陣から強い光が放たれ、魔法陣の中にいた魔物たちは次々と浄化されていった。


「凄い…。これがフラワープリンセスのチカラ…」


シルフィは私の方を見てそう呟いた。

光が消えると、魔物たちの姿は跡形もなく消えていた

しかし、その直後に私は目眩に襲われてそのまま倒れてしまった。


「フラワープリンセス…!」

「シルフィ…ははっ、なんでこんなことに…」

「無茶をし過ぎです!エレメントプリンセスのチカラの源は魔力なんですよ。特にフラワープリンセスは全ての技においてたくさんの魔力を使うんですよ。その中でも浄化技は魔力の消費が非常に大きいんです」


シルフィの話によると、浄化技の魔力消費量は浄化する対象の数に比例して増えていくらしい。

それに魔力は一気に放出すると、放出量に応じてどっと疲れてしまうらしい。

いくらフローラ様の下で修行をしたとはいえ、まだ私にはあれだけの魔物を一気に浄化して持つほど体力は無かったようだ。

私はそのままゆっくりと目を閉じた。


目を覚ますと、そこには見慣れない天井があった。

そして、横を見るとシルフィが私にくっついて眠っていた。

私はシルフィを起こさないように起き上がると鏡で自分の姿を見た。

どうやらあれから変身を解かないまま眠ってしまっていたようだ。

せっかくの衣装がシワだらけになっちゃった。

私は変身を解いて朝の身支度を始めた。

そして、トイレから戻ってくるとシルフィが目を覚ましていた。


「おはよう、シルフィ」

「おはようございます。唯さん、体の方は大丈夫ですか?」

「うん。すっかり元気だよ」

「それなら良かったです。でももうあんな無茶はやめて下さいね。そのためにプリンセスパートナーがいるんですから」

「うん…」

「それと魔物が一掃されたということで、エールまでの定期馬車も今日から再開されるそうです。それでお昼の1便は私たちの都合に合わせてくれるらしいですよ」

「そっか。じゃあご飯食べたら早速エールまで向かおう」

「はい」


私たちは食事を済ませ、お昼前に宿を出てお買い物を済ませ、港町エールに行く馬車に乗った。

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