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異世界に転生したら戦姫になった件  作者: アルス
エアリアル編
3/16

第1話 フラワープリンセス誕生

「あれ?ここはどこ?」


気付くと私は見慣れない場所にいた。周りを見渡すが、何もない空間に私だけが存在している。

えーっと…確か、歩道橋から落ちそうになっていたおばあちゃんを助けようとして…


「あなたが佐倉唯ですね?」

「え?」


突然聞こえた声に驚き振り返るとそこには、綺麗な女性がいた。


「あなたは?」

「私は花の女神フローラ。佐倉唯、あなたは死んでしまいました」

「え?え?」


頭がついていかなかった。死んだ?私が?そんなことってあるの?


「あの…」

「はい?」

「私、本当に死んじゃったんですか?」

「えぇ。残念ながら。ですが、あなたが助けようとしていたおばあさんは、あなたが下敷きになったおかげで助かりましたよ」

「本当ですか!?よかったぁ!」


私はホッとした。でも、なんでだろう。なんだか悲しい気持ちになる。


「それで…私これからどうなるんでしょうか?」

「あなたには二つの選択肢があります。一つは天国に行くか。もう一つはエレメントプリンセスとして異世界に行くか」

「はい?」


この人何言ってるんだろう…。


「実は、あなたが生きていた世界とは別に、私たち五大元素の女神たちが生み出した世界があるのです。その世界の一つに魔王が現れてしまいましてね…。今、私の妹たちの加護を受けたエレメントプリンセスたちが戦っているのですけど、魔王軍の力が強くて苦戦しているみたいなんですよ」

「ちょっちょっと待ってください!急に言われても理解できないですよ!それに、私、戦いなんてできませんし…」


いきなり異世界を救うだなんて無茶だよ…。私、普通の女の子なのに…!それに、戦いのことだってよくわからないし…。


「大丈夫ですよ。あなたには私がエレメントプリンセスの力を授けます」


そう言うとフローラ様は花の形をしたブローチを私に見せてきた。


「これは『フラワーブローチ』といって、花のエレメントプリンセス、『フラワープリンセス』に変身するためのアイテムです。今はまだ私と契約を交わしていないので変身することができませんが…」

「はあ…」


異世界に行ってみたいという気持ちはある。でもいきなり魔王だのエレメントプリンセスだのって言われてもなんか現実味がないよね…。


「もちろん無理にとは言いません。あなたが天国に行きたいというのであれば私があなたを天国へと導きましょう。ですが…」


フローラ様の顔が少し悲しげになる。


「私はあの世界に住む民を救ってあげたい。ですが私は女神という立場上、直接世界に干渉することはできません。どうか協力して頂けないでしょうか?」


こんな表情する女神さまだもんね。困っている人たちを見過ごせないんだよ。きっと。

だったら答えなんて決まってるじゃん!


「やります!やらせてください!!」

「ありがとうございます。それではこのブローチをあなたにお渡しします。これを持って深く念じて下さい。」

「はい」


私はフローラ様の言う通り、渡されたフラワーブローチを胸に抱きしめ目を閉じて強く念じた。


「我は花の女神フローラ。少女、佐倉唯をフラワープリンセスとして認め、チカラを授けん。プリンセスエンゲージ!」


次の瞬間まばゆい光があたりを包み込む。私は思わず目をつむった。


「これで契約は完了です。そのブローチを天に掲げ、『花の女神のチカラを秘めしブローチよ、契約に従い我にチカラを貸せ。プリンセスエンゲージ』と唱えればいつでもフラワープリンセスに変身できます」

「わ、わかりました!」


私は言われた通りにやってみた。すると再び強い光に包まれる。

そして目を開けるとそこには先ほどまで着ていた制服とは違う服を着ている私がいた。

ピンクを基調としたドレスのような服に身を包んでいる私の姿があったのだ。

頭にはティアラをつけておりまるで絵本に出てくるような妖精のお姫様になったかのような感覚になった。

そしてスカート部分がふんわりとしていて可愛いらしいデザインである。


「どうですか?気に入りましたか?」


フローラ様が優しく微笑みながら問いかけてくる。

私は胸の前で両手を重ね、「はい!すっごくかわいい衣装で嬉しいです!」と笑顔で返した。

正直、自分がこんな姿になるとは思っていなかった。

夢にも見なかった光景を目の当たりにし、心の底から嬉しかった。

これから、私の新しい生活が始まるんだ。そんな期待でいっぱいだった。


「ではこれより、あなたを私の世界へ転移させます」

「はい」


いよいよ異世界に旅立つんだ。わくわくが止まらないよー!!

でもそういえば、これから行く異世界ってどんなところなんだろう…。


「あ、そうだ!フローラ様。お聞きしたいことがあるのですが、いいですか?」

「えぇ、構いませんよ」


よかった。聞いてくれそうな感じで。


「えっとですね…まずは、私に色々と異世界について教えてほしいんですけど…。」


私は申し訳なさそうに言った。


「なるほど。確かにあなたにはまだこれから行く世界のことをお話していませんでしたね」


フローラ様は大きな地図を私の前に広げた。

どうやらこれから私が行く異世界の世界地図みたいだ。


「この世界は、我らが母、女神クラリスの加護を受けた1つの大陸と、それを囲むように我々5柱の女神の加護を受けた5つの大陸が存在します。ですが、すでにそのうちの4つ、アクア、ウィンディ、フレイア、ガイアの加護を受けたそれぞれの大陸は魔王の手に落ちてしまい、彼女たちはそれぞれの地で深い眠りに就いています。今残っているのは私の加護を受けた風の大陸『エアリアル』と、クラリスの加護を受けた光の大陸『シャイニーパレス』だけです。そして、すでにエアリアルにも魔王軍の魔の手が及んでいます。エレメントプリンセスたちが戦ってくれてはいますがいつまでもつか分かりません。もし彼女たちがやられてしまえば、エアリアルが魔王軍に支配されてしまうのも時間の問題でしょう」

「なるほど…」

「魔王を倒すためには、女神全員のチカラが必要となります。そのためにも、4つの大陸を蘇らせなければなりません。今戦っている2人のプリンセスは、加護を与える女神が眠りに就いてしまったため、少しずつ弱ってきてしまっているのです。もしエアリアルが魔王軍の手に落ちれば、私も深い眠りに就かされ、あなたのチカラも弱まってしまうでしょう。そうなる前に、2人と協力してエアリアルを守り、4つの大陸を蘇らせ、女神を目覚めさせて下さい」

「でも、どうやって戦えば…」

「エレメントプリンセスの強さは、加護を与える女神の強さによって変わります。私は5柱の女神たちの中でチカラは一番弱いですが、魔法を得意としています」

「つまり、私も魔法が使えるということですか?」

「えぇ。それも強力な魔法を使うことができます。呪文については、私の眷属であるエルフたちに教わると良いでしょう。それと、こちらもお渡ししておきましょう」


フローラ様は私にお花で作られたブレスレットを渡してきた


「それは『フラワーブレス』といい、闇のチカラからあなたを守る他、私や他のエレメントプリンセスと会話をすることができます。では早速ですが、あなたをこれから私がエアリアルへお送りしましょう」

「はい」


ついに異世界へ行けるのね!ワクワクしてきた!


「では、行きますよ」


フローラ様がそう言うと、私たちは一瞬にして森の中にいた。


「ここがエアリアルです」

「うわぁ、きれいなお花がたくさん咲いている…」


森の至る所に見たことのない美しい花々が咲き乱れていた。

なんて神秘的な空間なんだろう。ずっとここにいたいな…


「エルフの集落に着いたら、長老にこの手紙を渡せばチカラを貸していただけるでしょう。それでは唯、この世界のこと、頼みましたよ」


そう言うとフローラ様は天に帰って行ってしまった。私はしばらくその場でぼーっとしていたけど、ハッと我に返った。


「って、そういえば私これからどこで寝泊まりすればいいの!?」


いきなりこんなところで野宿しろって言われても…。

エルフの集落の場所も分からないし、さすがに不安だよ…。

とりあえず私は街を探してみることにした。

フローラ様の話ではここは「エアリアル」という場所らしい。

そして今私がいるところは「アムルの森」という場所のようだ。

うん、覚えやすい名前で助かったよ。

とにかく、今はどこかの村にでも泊めてもらうしかないよね…。


「ねぇ、そこのあなた」

「はい?私ですか?」


私は声をかけられ振り向くとそこには緑色の服に長い髪が特徴的な女性が立っていた。

手にはたくさんのお花が入ったバスケットを持っている。


「あなた、どこの村の方かしら?」

「えっと、実はフローラ様にこの世界を救って欲しいと言われて来たばかりで…」

「ということはもしかしてあなた、フローラ様のご加護を受けたエレメントプリンセスですか?」


女性は驚いた表情をしていた。フローラ様のことを知ってるみたい。


「はい。佐倉唯といいます」

「私はエルフ族のシルフィと申します。よろしくお願いしますね」


そう言って彼女はニコッと笑った。

すごく可愛い…。

私より年上に見えるけどやっぱりまだ子供みたいな笑顔するんだね。


「あ、それで私に何か?」

「あ、ごめんなさいね。この辺りは魔王軍の魔物がたくさんいる他、人間たちからは『迷いの森』なんて言われてるくらいだから、もしかしたらこの森に迷い込んでしまったのかと思いまして…。よろしければ私たちの集落までご案内致しましょうか?」

「いいんですか?じゃあお言葉に甘えて…」


よかったー!これで安心できるね!私はほっとした。でもまだ気になることがあったので質問してみた。


「あの…さっき、フローラ様のことを知っているような口ぶりでしたが、フローラ様と面識があるのですか?」

「私たちエルフはこの世に生を受けた日から眷属としてフローラ様にお仕えして参りました。」


そういえばフローラ様がエルフたちのことを眷属とかなんとか言ってたっけ?よくわからなかったけど。


「フローラ様は、この世界の民をいつも見守って下さっています。フローラ様のおかげで我々は日々を過ごすことができるのです」


その時、遠くの方から爆発音が聞こえてきた。

音のする方を見ると、たくさんの煙が上がっていた。


「あの方角は…!」

「行ってみよう!」


私とシルフィは走り出そうとした瞬間、茂みの中からスライムたちが飛び出してきた。


「くっ…こんな時に…!」


シルフィは杖を構えると、すぐに攻撃態勢に入った。


「マジカルフレイム!」


彼女の持つ杖の先端からは、火の玉が出現し、そのまま放たれると炎の塊がまっすぐ進み、見事命中すると、爆発を起こしスライムたちは消滅した。

すごっ!あっという間に倒してしまった。

強いな。これが魔法のチカラなのか…。


「大丈夫でしたか?怪我はないでしょうか?」

「はい!ありがとうございます!でも私、エレメントプリンセスなのに何もできなかった…」

「フラワープリンセスは魔法使いのエレメントプリンセスです。まだ魔法を知らないあなたが戦えないのも無理はありません。それに、あなたはまだ覚醒していないだけで潜在能力はかなり高いですよ」


シルフィさんは優しくフォローしてくれた。

でも…なんか情けないな…。

私にもっと力があれば、みんなを助けられたかもしれない。

そんな風に考えていると、再び茂みからモンスターが現れた。

今度はオークが数体出てきた。

手には大きな棍棒を持っていて、とても怖そうな外見をしている。

私は思わずビクッとして身構えた。

だけどその必要はなかった。

シルフィさんの放った火球が炸裂し、一瞬のうちに燃え上がり、消し炭になってしまったからだ。


「こんな輩にやられるほど私は弱くはありませんよ」

「は、はい」

「先を急ぎましょう」


私たちは先へ進むことにした。早くみんなのところへ行かないと。

しばらく歩くと見晴らしの良い草原に出た。

大きな川が流れており、その先に燃えている集落が見えた。

私たちは集落へと走った。

集落の中にはたくさんの魔物が暴れ回っていた。

辺りを見回すと、エルフの姿は無かった。


「そんな…間に合わなかったの?」

「おそらく、みんな地下のシェルターに避難したのでしょう」

「地下に?」

「先程も言った通り、この森には魔物がたくさんいます。しかし、それとは裏腹に私たちエルフの中で戦えるのはほんの数名。他の者は戦う術を持ち合わせていないのです」

「それならまずはみんなの無事を確認しないと!」

「はい!そうですね!」


私はシルフィと一緒に急いで地下のシェルターに向かった。

シェルターの中にはたくさんのエルフがおり、中には傷を負って倒れている者もいた。


「おお、シルフィ。無事だったか」

「長老様もご無事で何よりです。それよりこれは一体…なぜ集落の中に魔物たちが…。この集落はフローラ様の結界のおかげで魔物が寄って来ないはず…」

「それが…なぜか村の中心にあるフローラ様の像が壊されてしまってのう…。」

「フローラ様の像が!?」


シルフィさんは驚いていた。

どうやらその像のおかげでこの集落には魔物たちが寄り付かなかったようだ。


「ところでシルフィ、さっきからお前の後ろにおる娘は?」

「あ、彼女は佐倉唯といって、フローラ様のご加護を受けたエレメントプリンセスだそうです」

「なんと…!」


エルフたち全員の視線がこちらに向いた。

私は緊張して体が固まってしまった。


「ですがまだエレメントプリンセスになったばかりで魔法を習得していないらしく、まだ戦える状態ではないようです」

「ふむ…」

「は、初めまして!佐倉唯といいます。えっと、実はフローラ様から、長老様にお手紙を預かっていまして…」


私は長老様にお手紙を渡した。


「ふむ。フローラ様の命とあらば、魔法を教えぬわけにはいきますまい。じゃがまずはこの状況を何とかせねば…」

「私に何かできることはありますか?」


私の問いに長老は首を横に振った。


「フローラ様のご加護を受けたエレメントプリンセス、すなわちフラワープリンセスはチカラが弱い。魔法が無くては戦うこともできぬ」

「じゃあ今すぐ魔法を…」

「無理じゃ。魔法は少し教えた程度で使いこなすことができるほど甘いものではない。使い方を誤れば、自らを滅ぼすことだってある」

「そんな…」


せっかく異世界に来たっていうのに、私には何もできないなんて…。

こんなんじゃフローラ様のチカラになるなんて夢のまた夢じゃない…。

私がガッカリしていると、長老は私を慰めてくれた。


「そう落ち込むでない。魔法についてはワシらがしっかりと教えると約束しよう。だが、まずはこの状況を何とかする必要がある。唯殿はしばらくここにいるがよい」

「ありがとうございます」

「シルフィ、戦えそうか?」

「はい、大丈夫です。」

「そうか…では頼むぞ。」

「承知しました」


シルフィは外に飛び出して行った。

私はみんなと一緒にシルフィの無事を祈り続けた。

そして、しばらくするとシルフィが戻ってきた。


「お疲れ様、ケガはない?」


シルフィの顔には大量の汗が流れていて疲労困憊(ひろうこんぱい)の様子だった。

きっと相当激しい戦いを繰り広げたんだろうな…。

しかし、彼女は笑って見せたのだ。私は彼女の笑顔を見て安心することができた。

私たちが外に出ると、魔物たちの気配は無かった。


「さすがはシルフィじゃな」

「え?」

「シルフィはこの集落で一番の魔法の使い手なんじゃ」

「そうだったんですか…」


初めて会った時からすごく強いと思っていたけど、まさかそんなに凄い魔法使いだとは…。


「さて皆の者、やるべきことはたくさんあるが、まずはこの集落を復興させなければならぬ。魔物に気をつけ、協力して復旧作業に励むように!」

『はい!』

「唯殿はシルフィを頼む。先程の戦いでかなり消耗しておるからのう…。」

「わかりました。」


私はシェルターで休んでいるシルフィのもとに行った。

シルフィはシェルターの中で横になっていた。


「大丈夫?」

「えぇ…心配いりません…。しばらく休めば回復すると思います…。」

「そう…。無理しないでね…」


私はシルフィの隣に座った。彼女の様子を見る限り、さっきの戦闘でだいぶ体力を使ってしまったみたい。早く回復してくれるといいんだけど…。

するとシルフィは私に話しかけてきた。


「そういえば唯さん、あなたはどういったきっかけでフローラ様にお会いすることになったのですか?」


そういえば私、シルフィたちにはまだ自分の事について話していなかったっけ?

私はフローラ様との出会いと今まであった出来事を全部シルフィに伝えた。


「そういうことだったのですか…そんなことが…」


シルフィはなんだか悲しそうな顔をしていた。


「でも後悔はしてないよ。だって私、決めたんだもん。これからもみんなと一緒に楽しく過ごすって。」


シルフィはその言葉を聞いて安心したのか優しい笑みを浮かべた。

それから私はしばらくの間シルフィと一緒に過ごした。

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